数年前のこと。
混み合う朝の改札口。乗り換えのために、人の流れに乗って改札に入りました。

カバンのいつもの場所に右手を差し入れて、スッとパスケースを取り出して、やさしく機械にタッチして通過します。それは、いつも同じように、そしていつだって同じでした。

しかし、その日だけは違ったのです。

やさしくタッチしようとした瞬間、頭の上からにゅっと手が伸びてきて、僕のパスケースと相手のカードの２枚が、機械に触ってしまいました。

ピーーー！！

潔く改札は閉まり、雑踏に負けないくらいの音が鳴り出しました。

後ろにいた人たちは（おそらく）一様に顔をしかめ、ほかの改札機へと入っていきました。

上から伸びてきた手は、背の高い、外国の方でした。急いでいたのか、仕組みを知らないのか、たまたま僕と同時にタッチしてしまったらしいのです。

あの時、僕はどんな顔をして彼を見たか覚えていませんが、目が合うと彼は肩をすくめて別の改札機へと向かっていきました。

ごくたまに、こういうハプニングがあって、それを妻に伝えると「いや、そういうのどこかで求めてるんだろうね」と言われました。

大きな事故ではないけれど、なかなか普通は起こらないハプニングに遭いやすいので、そんな時には「発動した」と妻から言われます。

たまたま早く帰れた日、ちゃんとGoogleで調べて、行きたかったカフェに向かったら「今日は撮影のため、臨時休業します」とドアに貼り紙がされていたり。僕は、初めて行く飲食店は、たいてい入れません（開いてないのと空いてないのと）。

ハプニングをおもしろおかしく話している・・わけでもないですが、「発動した」と言えば、イライラも収まっていくのが不思議です。場合によっては、むしろ珍しいことに遭遇できたなぁなんて勝手に有難がったりして。

朝の改札を通るたびに、何か起こるかも知れない・・と少し緊張しながら通勤しています。

#発動 #ハプニング #自動改札