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ディスクレビューしてみた⑤ King Gnu「THE GREATEST UNKNOWN」

はぁ〜いこんにちは!
もんちーのディスクレビューしてみた5枚目は、2023年のベストアルバムの呼び声も高いKing Gnu4年ぶりの新作「THE GREATEST UNKNOWN」を自分なりに紹介していきたい。
ドラマやアニメ映画主題歌、CMソングなどタイアップ曲が多数あるが、それらがアルバムの中の1曲としてどう溶け込んでいるかが1つポイントになってくる。
4人の天才が創り出す世界観には毎度驚かされるが、とにかく1番言いたいのは誰がなんと言おうと2023年のアルバム大賞は個人的にこの作品以外考えられないほど。感じ方はそれぞれだろうが、アルバムを最後まで聴いたとき、きっと深いため息を吐くだろう。ぜひ参考にして耳で脳で全身で感じてほしい。

1.MIRROR
静かなスタート。ここからアルバムラストまでの1時間僕達をどこに連れていってくれるのか、なにが見えるのか、まるでSF映画のオープニングのような何とも言えない期待感が湧いてくる。

2.CHAMELEON
シングル版では「カメレオン」だったタイトルが英語表記となっているが特にアレンジは変わっていない。ボーカル井口の透き通るようなハイトーンヴォイスが空間を優しく切り裂くように曲が始まる。この時点ですでに前回の「CEREMONY」とは全く異なるコンセプトで作られていると感じることができると思う。曲は終わり側の「僕の知らない君は誰?」という歌詞からそのまま「DARE??」へ。

3.DARE??
「CHAMELEON」から4曲目へと繋がるインタールード。「君は誰?」と繰り返すフレーズが頭に残る。これこそが次曲「SPECIALZ」のシングルVer.では味わえない特別感が得られるアレンジとなっている。

4.SPECIALZ
TVアニメ「呪術廻戦」オープニングテーマ。「君は誰?」の問いに対し「U R MY SPECIAL」(You're My SPECIAL)という繋ぎ方で鳥肌が立ち、完全に掴まれた。絶対にシングルVer.では感じることのできない特別感と同時に初めて聴いたような新鮮味もあった。作詞をする常田の遊び心満載の言葉選びもおもしろい。ここまでノンストップで進んできた完璧なアルバム序盤。

5.一途 (アルバムVer.)
劇場版「呪術廻戦 0」主題歌。ザクザクと鳴るギターとベースがかっこいいイントロ。シングルよりもギターの音が大きい?ように聞こえるのもよりロックなアレンジを加えているように感じる。最後の「全部 全部〜」の箇所はシングルではなかった部分。これはライブバージョンのアレンジを追加し、より荒く生々しいそのライブ感が楽しめる。

6. δ
激しくロックな流れから一転。「逆夢」への繋ぎを意識したインタールード。もはやこの部分も逆夢のイントロとして加えたらいいのにとも思ってしまう。

7.逆夢
劇場版「呪術廻戦 0」エンディングテーマ。こういったバラード曲、シリアスな雰囲気の曲にはやはり井口のヴォーカルが活きる。イントロから流れるストリングスも美しく全体の空気感を作り出している。歌詞を見ると「一途」と同じ主人公で物語の続きのような話の展開になっているようだ。曲全体の雰囲気としてこよ色っぽさというのは井口の声、歌い方によってもたらされるもの。

8.IKAROS
冬の寒い朝に暖かく包み込んでくれる毛布のような優しさと、時間がゆっくりに進んでいると錯覚してしまうほどのスローテンポが印象的な楽曲。後半の常田の低音ボイスもセクシーで絶妙。

9.W●RKAHOLIC
「):阿修羅:(」へ続くインタールード。夢心地でいたいのに鐘の音で起こされた感覚に陥る 笑 さぁアルバム後半戦へといってみよう。

10. ):阿修羅:(
PlayStation × King Gnu|Play Has No Limits “限界突破”CM曲。シングルカットはされていないが、このアルバムのリードトラックと言ってもいいと思う。特徴にあげられるのはJ-POPによく見られるサビを中心とした楽曲構成ではなく、どちらかというと洋楽のような要素が強い。しかし各ブロックごとに転調があり、ここ最近の日本のヒットソングに多く見られる情報量の多さと1曲の満足感もあり、どこを切り取っても美味しく贅沢に味わうことができる。ここも彼らのすごいところだ。

11. 千両役者(ALBUM ver.)
NTTドコモ 5G「希望を加速しよう2nd篇」CMソング。まず驚いたのはシングル版との劇的な変貌ぶり。シングルVer.ではギター、ベース、ドラムが荒々しく生バンド感があったが、アルバムVer.はシンセが目立っていたり、打ち込みのようなエレクトロポップに変身。思い切ったアレンジで既出曲でありながら新鮮味を感じられる。これもアルバムの流れや空気感を重視した変更なのだろう。

12. 硝子窓
映画『ミステリと言う勿れ』主題歌。
MVは「カメレオン」の続編となっており登場するキャラクターのその後のストーリーが展開されている。切なさと希望が交錯し、悲しみ、強さ、喜びが描かれている美しい楽曲。恋愛模様や複雑な人間関係が歌詞で表現されており聴く人の心に響く1曲となることでしょう。

13. 泡(ALBUM ver.)
映画「太陽は動かない」主題歌。King Gnuの前身バンドSrv.Vinc時代に作られた「ABUKU」のリメイク版となっている。命の儚さと生きていることの価値を伝える歌詞が泣ける。ミニマルなサウンドやボーカルの声を変えたりすることでこの曲からバンド感は限りなく薄まっている。「パチンと弾けて 泡のように消えた 呆気のない運命が 心をえぐった 確かに感じた 仄かに歯がゆい 過ぎ去った運命に 囚われたままで」命は一瞬にして消えてしまうもの。限りある命だからこそ価値があるというメッセージを大切にしたい。

14. 2 Μ Ο Я Ο
この曲でメンバーそれぞれの音楽ルーツ、主にブラックミュージックからの影響が全面に出ていると感じた。サックスやコーラス、ジャジーなベースが絶妙な味付けになっている。歌詞では「全部いやになっちゃったら 全部放り出しちゃいなよ フカフカのベッドにdive」「特別な事は 何一ついらないよ See ya TOMORROW」気分が乗らないなら今日はもういいから、アツアツの湯船に浸かって、フカフカのベッドで眠りにつく、きっと明日は違う景色に出会える。と、これはきっと彼らなりの僕達への応援歌でもあると思った。

15. STARDOM(ALBUM ver.)
2022 FIFA W杯 NHKテーマソング。
サッカー好きならW杯カタール大会を思い出すだろう。スタジアムの歓声のようなものが聞こえてくるこのイントロからモチベーションが高まっていく。これからの戦いへ選手たちがピッチへと向かっていく背中が見える。これまでの努力の過程と何度も味わった屈辱、信じ続けた未来へと、ここからあと一歩、最後の笛が吹かれるまで人生を賭けて手を伸ばし続ける。夢にまで見たSTARDOMへ。

16.SUNNY SIDE UP
次曲「雨燦々」へしっかり助走のつけ、より壮大な演出がさせているところがこのアルバム全体のコンセプチュアルな部分を感じることができる。この曲があるとないとで印象は全く違うものになるだろう。アルバムを通して聴いた時にしかわからないこの曲の重要性を伝えたい。

17.雨燦々
TBS系日曜劇場「オールドルーキー」主題歌。アルバム後半1番の聴きどころと言ってもいいほど聴き手のテンションを最高潮までぶち上げてくれる楽曲。メロディーの美しさ、壮大さ、それぞれの楽器の音色にいつもより低めのキーで歌う包み込むような井口のボーカル、さらに女性のコーラスも乗っかり、感動的でドラマティックなアレンジも素晴らしい。雨というのはネガティブな印象を受ける場合が多いが、燦々と降り注ぐのは明るく希望に満ちた雨。止まない雨などないのだから。

18.BOY
TVアニメ「王様ランキング」オープニングテーマ。井口のボーカルとバイオリンの旋律が軽快で、前作「CEREMONY」に入っててもおかしくないほどこれぞKing Gnuなポップでキャッチーなシングル配信曲。常田がKing Gnuに未だかつてないほどに優しく愛らしい素敵な楽曲に仕上がっているとコメントした通り、「愛らしい」という言葉がぴったりで、アルバム終盤で少し肩の力を抜いて楽しむことができる。

19. 仝
アルバムラストソング「三文小説」のイントロとなる。これもシングルver.では味わえない特別感が嬉しい。

20. 三文小説(ALBUM ver.)
日本テレビ系 土曜ドラマ「35歳の少女」主題歌。三文小説とは、三文の価値もない低俗で安価な小説と軽蔑して表すときの言葉。「この世界の誰もが君を忘れ去っても 随分老けたねって今日も隣で笑うから」たとえ自分達の人生が三文小説だとしても、主人公の隣にいる"僕"は「そのままの君で良いんだよ」「君の不器用な表情や言葉一つで救われる僕がいるから」とずっとそばにいる。King Gnuの名前を世に広めたきっかけとなった「白日」と並ぶほどの壮大なバラード。この曲もシングルVer.とはガラッと雰囲気が変わっていて、やはりバンドサウンドはやや控えめな音作りになっている。きっとこのラストナンバーまであっという間の1時間だったことだろう。

21. ЯOЯЯIM
前曲からシームレスに流れるようになっていて、これがいわゆるアルバムのアウトロになるような曲だ。1曲目の「MIRROR」を鏡に映したようにひっくり返したタイトルになっている。「MIRROR」は「CHAMELEON」に繋がり、「ЯOЯЯIM」は「三文小説」からの繋がり、そして「ЯOЯЯIM」はまた1曲目の「MIRROR」へとまた繰り返し繋がっているようだと気付いた時、鳥肌が止まらなかった。


【まとめ】
ここまでこのアルバムを個人的に高評価するのは、タイアップや既出曲が多くある中、シングルはシングルバージョンの良さがあり、アルバムバージョンは通して聴く時にそのアレンジが効いてくる。21曲もの大作をまるで1つのストーリーとして仕上げているような、これはKing Gnuが作り出す20年代のロックオペラだ。
既出曲をアルバムにどう活かすかはアーティスト次第ではあるが、Vaundyのようにシングル曲をまとめてベスト盤のようにして発表するパターンと今回の作品のように曲にアレンジが加えられ、新鮮味と一体感を大事にして作っていくKing Gnuのパターンと、もちろんどちらも良いが個人的には後者の作り方の方が昔から好みであるため、さらに邦楽でここまで作り込まれたアルバムは滅多に聴けないということもポイントで、彼らと同じ時代で出会えた事は奇跡であり今後10年は巡り会えないとも思ってしまう。
ぜひともアルバム1周でいい、全力でオススメしたい。

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