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学習: ドイツ語 #1 | 独検の昏い森 (Teil II. 独検一級 二次試験 2)

初回で強調したのが 『二次試験不合格 = 一次試験からやり直し』 程度だったので 試験対策の情報を探し求めてこの閑古鳥サイトに辿り着いた人は中味の薄さにいささか落胆されたかもしれません(すみませんね。)

ですが 、初回記事のもう一つのポイントは下記でした:

『二次試験の設問例を頼りに合格に備えて何をすべきかを自分でよく考えましょう。』

前回記事から抜粋

(今読み返せば ”考えましょう” などと 何を偉そうな。。。
書きながらつい余計な力が入ってしまったようで 失礼。)

ただ この ”ご自身でまずよく考えること” をされなければ
今回の記事は腹落ちしないだろうなぁ と思います。


試行錯誤し 攻め方が見えてくるまでのドタバタ


二次試験直前の試行錯誤についての記憶は だいぶ薄れてきてますが
試験当日まで ドタバタしている時間が日々を埋めました。



==  取り急ぎ テーマに体当たり  ==

二次試験の過去問題や公式文書をいくら眺めても 合格例のスピーチや具体的な判定基準は記載されていないので 自分なりに出題側の期待値を想定することにしました。
過去問題を5-10年分程度並べ 出題テーマをおおまかに分類・俯瞰し それらのマスデータから何か掴めるはず、
と期待しましたが そんな絵に描いた餅のようには運びません。

外堀から攻めるのは 時間が限られている場合は 困難。。。

だったら、と
「自分の経験的にこれなら話せるかも?」と感じるテーマを選び 
過去問題にある以下の注記に従って そのまま何の準備もなく一人語りをしてみました:

氏名・受験番号の確認のあと、>>Themenliste<< が呈示されます。
その中からテーマを1つ選び、3分間で、選んだテーマについて述べるべきことを考えてください。メモを取ることは認めません。
3分後 >>Themenliste<< は回収されます。

引用: 2020年度「独検」二次試験 ”1級の受験者へ”

6) 一人当たりの試験時間は、最初の3分を含めて約13分です。

引用: 2020年度「独検」二次試験 ”1級の受験者へ”

しかし その帰結は言うまでもなく
「思いつく内容が薄っぺらい」、
「頭に思い浮かぶ言葉をただ継ぐだけ」、
「話にメリもハリもない」、
「ドイツ語の語彙がない」、
となり
喋れない  且つ 時間が大幅に超過 する のが分かるだけ。

また一次試験からやり直し という嫌な予感がひしひしと。。。。。


==  よし、まずは美麗な台本を仕上げよう  ==

はじめに雪玉の核を作らねば、と
相性が良さそうなテーマを一つ二つ選び 語るべきポイントを考えて工夫し 日本語でコツコツ作文。
時間配分を考え 日本語の内容を削ぎ落とし 文法に留意しながらドイツ語に変換する。
この要領で「台本」を ひとつひとつ準備。
一つ終わればまた次の台本作り。
残り期間が僅かな中で これをひたすら続け、「数は質に転化する」、と自己陶酔しながら続けました。

台本を 船に喩えてみれば
あたかもタイプの違う美麗な巨大帆船を せっせと一隻ずつ建造する感じ。試験前までに大艦隊が編成できるようにと祈りながら。。。。

ポルトガル帆船 N.R.P. サグレス

==  数は増えてきたが 複雑 かつ 個性ばらばら  ==

台本は書くだけでは片手落ちであり 暗記して初めて使用に足るものなので
頃合いをみて 用意したものを幾つか読み返してみました。

そこで 結論や論点が台本ごとに てんでバラバラ だと気付かされました。
テーマが多様なので 或る程度は已む無しなのですが。。。。

冒頭/導入部自体がテーマごとに様々であり、話す際にどう展開すればいいか迷い 本筋からはみ出す という弱点すら早々と見えてきました。

テーマの幅広さに比例して台本の振れ幅が増すので それら全てを暗記するのは困難そう。使用されるドイツ語語彙や用法も 同様に広がる一方。。。

文法の正確性がどこまで求められるかのガイドラインがありませんけど
例えば定冠詞の格変化まで正確に記憶するのはかなり無理があるな、と気付きます。
英語と異なるそんな努力の分 ずっしり重荷が増すような感じがして焦ります。

それら課題への対応として 台本のばらつき幅をなんとか減らし
記憶を助けやすく 論点を把握しやすくすべく 個々の台本の特徴を際立たせる具体的なエピソードや事例を 更に台本に織り込もうと試みます。

しかし逆に 凝った話をしようとすれば ドイツ語の微妙な表現が必要になってしまい いうなればエントロピーが増加、台本はますます美麗になりバリエーションが増える悪循環に。。。。

そして 忘れてはならないのが 上掲の 時間制限。
重厚で複雑な問わず語りを滔々と続ければ きっと話は途中で打ち切られてしまうでしょう。
*それが採点にどう影響するかはどこにも書かれていませんが。。。

かくして 大帆船群の建造は難航します。。。。

てんでバラバラ

==  ふと 導きの星に気付く  ==

台本作りと平行し かつて昏い森を越えて行かれた先達の皆さんの体験記をネット記事を中心にあれこれ探しました。
その当時(書かれた時期はまちまちでしたが)確か四名くらいの方が それぞれの二次試験体験記を公開されていました(=無料のサイトです。)

そこで 引っ掛かったある指摘が 先の台本作りに一石を投じました:

”この二次試験では 'Stellungnahme' を求められている”

先人のWebsiteから要約引用

> 二次試験の過去問題や公式文書をいくら眺めても

自分で初めにこう書いた癖に 肝心なヒントを見逃していたかもしれません。なぜなら設問(Themenliste)の冒頭にこうあるんですから:

Nehmen Sie Stellung zu einem der folgenden Themen und begruenden Sie Ihre Meinung:

引用: 2020年度「独検」二次試験 Themenliste

とはいえ
自分のStellungを淡々と述べるだけで終了していいのか?
でも 自説と対極のStellungを入れたら 口頭試問時間内に収まるのか?
このあたりの判断がつかず悩ましい。。。。

それに加えて
その場で見せられたテーマ群から「いける」と感じたもの一つに絞り、短時間で自説と対極の説の両方の要点を 即 抽出するのには 相応の訓練が必要。
更に 自分のStellungのみで押し通さなければ 時間的に中途半端で終わってしまいそう、という懸念は拭えず。。。。

悩めども 無常かな 時間は待ってくれません。

なんとなくひらめいたかも

== 複雑かつ巨大な帆船群を 捨てる ==

上述した様々な逡巡を経て 発想を転換しました :

「小回りが効かない優美な巨大帆船の一群ではなく
モーターボートのような小型船舶、即ち 小ぶりで手間のかからない『汎用的台本』を 必要最小数 用意するのが現実的だ。」 

そこに求められるのは

どういうテーマでも同じ語り口にできる定型的なひな形 :

   /起承転結のような定型的な道筋がある
   /振れ幅が少ないドイツ語と文法で作られている
   /テーマごとに 一部を変更することで 自由度を高くできる
   /簡潔かつ小さく コントロールが楽になる

これら新たな視点から あるべき台本の姿を帆船から転換させたイメージ、それは、、、、、、:


ちいさなお弁当たち :)


== 造船業からお弁当屋さんへ :D ==

(以下 抽象的な記述で恐縮なのですが 二次試験を受験される方なら
暗喩から多くを汲み取っていただけると想像します。)

この二次試験は ”料理コンテスト” のような建付けだと仮定し
自分が語るスピーチの全体を『お弁当』に見立ててみることにしましょう。

試験会場に持ち込んで 同席する試験官お二人に食べていただき
 "これは美味そうだ" と感じさせられるお弁当を どう用意するか?

当然ながら 幅広く豊富な素材に溢れ 色合い良く 手の込んだ細工に富み 量的にも食べ応えのある料理が詰まっていれば 美味しそうに感じられることでしょう。

色々な具材が盛り沢山

ですが
色鮮やかな具材の調達や 具材への技巧の盛り込みは 時間制限がある場合 余程の手練れでないと困難でしょう。
それだけでなく 文法的に正確な文章を意識する必要もありますし。
しかも 量が多すぎると 試験官のお腹を苦しくさせるかもしれません。

…..意見を長々と述べる必要はありません。
要点を押さえて自分の考えを明確に述べ、質問に的確に答えるよう心がけましょう。

引用: 2020年度「独検」二次試験 【二次口述試験】解説

最終的に 自分が用意したお弁当は 以下のようになっていました:

起承転結を いつも同じ形の 一種類の弁当箱のなかに収め
起/導入は 常に出来栄え一定の 定型的な お米やおにぎりで凌ぎ(=重要)
承で 選んだテーマに沿った 甘目と辛目の対極的具材一組を登場させ
転で 夫々の特徴を紹介し
結は 自分が支持する方の具材に 軽く 戻る。

このお弁当くらいに質素な造りで十分

テーマを選んだ後は、説明文の内容に即してポイントを決め、自分の考えをまとめておきましょう。なお、メモをとることができないため、頭の中で論点を整理して覚えておく必要があります。

引用: 2020年度「独検」二次試験 【二次口述試験】解説

と ありますが、、、
実際には 頭に浮かぶあれこれをお弁当の形にまとめるのは困難と感じます。

しかし 白米パートの作り込みを いつもほぼ同じにしておけば 少なくとも序盤に道を見失うことがなくなります。
ここが最大の重要事項だと思います。

そうすれば その場でアドリブ/インスピレーションを働かす必要があるのは テーマに紐づく変動要因/具材に限定されます。

この手法なら  緊張を強いられる面接の大海原で遭難することはないでしょう。毎回毎回 基本は同じ型を辿るだけになるので。
*勿論 テーマの選択次第では インスピレーションが働かないこともあるでしょうけど そこは練習で乗り越えるしかない かな。。。

手法が決まったあとは 過去問の様々なテーマに取り組むのみです。
試験当日に その場で 全く新しい具材を開発するのはとてもハードルが高いので 事前に沢山のテーマに当たり それらテーマに沿った具材を調達する練習をお薦めします。
その練習で蓄積された 色々なお弁当作りの経験が 試験日までに財産となるでしょう。


なお ご存知のように 過去問題集の解説に以下が記載されています。
これらの評価基準を意識しつつ ご自身で納得の行くお弁当を準備されると良さそうですね:

1級口述試験における評価基準は、
 1.発音の正確さ、イントネーションの適切さ
 2.適切な語彙と文法の知識
 3.テーマに即した意見を述べる能力
 4.一般的なコミュニケーション能力
の4項目です。

引用: 2020年度「独検」二次試験 【二次口述試験】解説

スピーチ後の質疑応答が 特に 4 を量るものになるでしょう。

それについてはまた回を改めたいと思いますが 私の場合 質疑は案外打ち解けた感じで進行しました。

普段からドイツ語を話す環境にはないし(=私は週一程度です) 
ドイツ語圏への在留経験がないので流暢な会話なんてできないかも(=私は暫くドイツに居ましたが 仕事仲間のドイツ人は哀れなカタコト日本人に英語で話します)、と気がかりな方は多いでしょうけど 大丈夫。
お弁当の準備自体が役に立つと感じます。
まずは 「お弁当をきちんと食べてもらうこと」 を目指すべきと考えます。


以上 もっと具体的な説明が欲しいとか 不明点や疑問をお持ちの方は
ご連絡頂ければ 私見をお伝えします。
*但し 問い合わせされるのは "中の人" 以外でお願いします。。。

外来語は美しくないけど いざって時に頼りになるんで、私は排除できず。。。

< 余談 >
独検二次試験の初回記事からおよそ一年ほど経ち 続きをいつか書かねばなぁ でも書かなくてもいいかもな と躊躇していました。
Noteのドイツ語関連記事を見回すだけでも 在独在日の数多の超上級者がいらっしゃいますので。
*未だ正体が見えないドイツ語と腐れ縁を継続している私のような手合が 何をか言わんや です(=一級に合格した、程度の力量しかなく 依然 遥かな登り坂を歩いてますんで。。。)

ただ 同好の士として 情報に乏しい試験にまつわる事実を収集する意義や、記憶が薄れ過ぎないうちに自らの経験を必要とされる方に共有する意義は、当人の言語習熟レベルとは別に存在するだろう と考えるようにしました。

出し惜しみするつもりはないですが こういう試験ネタをあまり詳細に書くと 主催団体からクレームが来たりしないかは やや気になりはします
(来ないか。。)

前回記事から抜粋

主催団体さん側としては 二次試験で実力を発揮できずに肩を落とし ドイツ語を嫌いになる受験生をあまり見たくないかもしれません。
ドイツ語文芸の振興のための試験ですもんね。

なので 受験生が口コミのノウハウに基づいて勉強/練習した結果 口頭試問で萎縮せずスムースな応答ができ 夫々の実力を発揮できるのであれば
三方一文得かもしれません、よね? :}




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