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コーヒーとジャズと多様性とまちあるき │ 国立本店


昼過ぎ。国立駅周辺をぶらぶら散歩して、気になったお店にふらっと立ち寄るゆるゆるまち歩き中に目に入った、「国立本店」。

外から見て一目でわかる、「まちにひらいた場所」。ドアは常に開いているし、店先は全面ガラス張りになってる。まちと店に境目がない。

本棚に並んだたくさんの絵本と、その反側の壁に大きなまち歩きマップのようなものが見えたので、わくわくしながら迷わず中へ。

  • 本棚

入ってすぐ、本棚にディスプレイしてあるたくさんの絵本の話で盛り上がった。14ひきのねずみ。うっかりさんのカレーライス。ぐりとぐら。

聞くと、テーマごとにスタッフの方たちが本を厳選しているのだそう。私たちが見たコーナーは「懐かしの絵本」だった(確か)。

その右を見てみると、ビールの本の特集、左側には都市のデザイン関連の本の特集が。立川エリアを良デザインで紹介していた「日常を旅する」を手に取って、席に着く。

  • 国立マップ

「あなたの”国立の好きな場所”教えてください!」と書かれたボードの隣に、好きな場所とその理由が書き込める紙、それを投函する小さなポスト。全部が可愛い。

すっかりファンになってしまったこの場所と、ここに来る前に立ち寄ったフジカワエハガキを書き込んで、投函。

そこで、まさかの自分の大学の、さらに学部の教授にお会いした。国立本店が本拠地で、兼任講師らしい。(知らなかった)深煎りのイルガチャフェをふるまってくれた。ストレートを一口、衝撃の味。最近浅煎りのコーヒーしか飲んでいなかったけど、超深煎りってこんなに苦くて濃いのか…と思っていたら、これはミルクで割っても味わいが深くなるような煎り方なのだそう。いきなりミルクで割るのはコーヒーの流儀(?)的に失礼に当たるのかと思い込んでたから、それを言われて安心してミルクを注ぐ。コーヒーの話からいろいろ飛躍して、先生がとてもいい話をしてくださった。

  • 多様性を目的にする・個性をもとめるあまりの均質化

「最近のコーヒーは浅煎りが多い。深煎りは味をごまかしやすいからだ。」最近見た「A Film about coffee」で確かそんな話があった

香りを楽しんだりする目的に加え、新しさ、奇抜さを追い求めた結果、現在は浅煎りが流行中なのだそう。現在とは違うもの、他人とは違うものを追い求めた結果皆同じところに行きついてしまう。他人と被りたくないひねくれものの集合体。(竹下通り現象って言うらしい)

これは、私が最近意識するようにしてる「目的」と「手段」の話なのかなと思った。

「目的」が「人と違うことをしたい」なら、結局そこに重点を置きすぎて一番避けたい均質化が起こる。でも、自分の成し遂げたい「目的」がはっきり定まっていて、その「手段」が人と異なることで自然と個性が生まれてくるんじゃないかな~と。これが先生の言っていた多様性の本質だと思う。自分の中でストンと落ちた。コーヒーの話で多様性について考える日が来るとは。


  • どちらがいいを強制しない

先生が話していたコーヒーの話では、しっかり深煎りする古典派と、ジュースみたいにすっきり飲める浅煎りを求める新時代派がいて

一緒に行ったジャズ好きの彼曰くクラシックを重んじる古典派と、昔の物とはリズムとか演奏の仕方が全く異なる、むしろリズムなんてない即興の物を楽しむ新時代派のモダンジャスがあるそう


コーヒーとジャズはどちらに関しても知識はほぼゼロだけど、どんなジャンルにしろ古典派と新時代派には熱烈なファンがいるのは容易に予想がつく。古典派においては、熱烈ファンがいるからこそ文化が継承されて現存しているのであって。

問題は、これらのファンの一部(いや大半?)が「自分たちが絶対」と思っているところにある。自分も知らず知らずのうちにやっている気がする。古参のヲタクが新参を「界隈のルールを分かっていない」と排除してしまうのと同じ。界隈の秩序を守るために生まれたルールもあるけど、古株も所詮、自分ルールで生きている。

だから、コーヒーの流儀に反しているのだと思っていきなりミルクを注ぐ行為だって、なんら問題はなかった。コーヒーの味をゆっくり味わいたい人はストレートで、ミルクで割りたい人はそれで。たぶんどっちにもよさはあるし、自分の好みは断然ミルクで割る方だった。ストレートめちゃめちゃ苦かったし多分最後まではのめない。でも、自分の好きはあっても、どっちがいいとか、強制はしちゃいけない。多様性って、こういうことなんじゃないかな、となんとなく思う。


なんだかんだ一時間近く居座ってお店を出る。豊かな時間だった。後半は、一緒に行った彼と先生がジャズの話をずっとしてたから、その話を横で聞きながら手に取っていたまちづくりの本をパラパラめくっていた。

帰り道、「今日の感想を上手く言葉にできたらいいのにね」とずっと二人ともうんうん唸っていた。こういう時に10代で本を読む時間が圧倒的に短かったことを悔やむ。豊かな言葉で、素敵に、的確に、今日の話を綴れたらいいのに。


午後。

引き続きまちを散策。へなちょこな建築の知識しかもってない私だけど、なんとなく歩いていた道にあった建物の雰囲気に惹かれた。好きな理由も含めて、なんとなくそれを口に出す。

すると、いきなり「ちょっと待ってて」と言い、彼が考え始めた。「俺はこう思う」と、私の「好き」に対して自分の考えと、その理由を言ってくれた。ただ同意するでも、否定するでもなく、自分の考えと、その理由も言ってくれた。

ようやく、今日の午前中の豊かな時間が体現できた気がする。多様性ってこういうことなんだと思う。考えが少し確信に変わった。


国立本店、今日みたいな充実したお話がたくさんできるのかな。静かな時には、ゆっくりあの大きい本だなにある本に没頭することもできるのかな。国立本店、すごく素敵な場所だった。

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