わが家の冷蔵庫にはしょうゆが3本ある
「わたしたち」が住むその家は、
JR中央線のA駅から15分ほど歩いた場所にある。
2022年4月に入居してからというもの、
おどろくほど穏やかな毎日をおくっている。
そんな暮らしぶりとは裏腹に、
周囲の人たちは、ややザワついているらしい。
たとえば会社の同僚や友人に会うと、
「それで、シェアハウスはどう?」と質問ぜめ、
「毎日が修学旅行みたいで、疲れない?」とも言われる。
なるほど。
すっかり「日常」になった暮らしだが、
そんなに面白そうなら、
ほんとのこと、書いちゃってみるか。
なぜわたしたちが女3人で暮らし始めたのか、
どうやって暮らしているのかについて、
少し振り返ってみることにしたい。
***
一緒に住んでいるY子とE子とは、
今から7年前、大学1年生のときに出会った。
波長が合うし、
お互いそれなりに気を遣えて、
ストレスのない友人たちだった。
卒業後も、
年に数回ごはんに行っては、くだらない話をした。
けれどそれ以上でも以下でもなかったし、
まさか一緒に住むなんて、という距離感だった。
コトが動いたのは2022年1月。
当時、わたしが一人暮らししていた家に
Y子とE子が遊びにきてくれたのだ。
今の家がそろそろ契約更新するので、
次の場所を探しているわたしとY子。
そろそろ実家を出たいE子。
それから3人で、
2022年はどんな生活がしたいか話した。
すると、びっくりするほど3人の思いは一致していた。
あれれ。
なんか、いい感じじゃない。
もしかしてわたしたち、一緒に住んでみちゃう?
んなわけ!と笑っていた声は、
じょじょに真顔になった。
誰かといるのに、ちゃんと一人でもある。
それって、どんな暮らしなのだろう?
どうなるかわからないけど、
まあ、やってみるか。
***
「女の子が3人って、朝の洗面台やばそう。」
「ごはんは毎晩一緒でしょ?誰が作ってるの?」
「洗濯は別々なの?」
「一緒に暮らす」の定義は、さまざまだ。
シェアハウスとなれば、
完全に衣食住を共にする人たちもいるだろうが、
わたしたちの家では、基本すべてを各自で行う。
ご飯を作るのも、食べるのも、基本は一人。
調味料もバラバラに買うので、
わが家の冷蔵庫にはしょうゆが3本だ。
毎日、まるで違うものを食って生きてる。
こう話すと、
たいてい「思ったよりドライだね」と言われる。
けれど、わたしはこのスタイルこそ、
わが家の居心地のよさを生み出しているのだな、と思う。
それぞれでご飯を作り、
もし気が回るならゴミを捨て、
お風呂に順番で入り、
リビングで会ったら大笑いして、眠りにつく。
そして、明日の仕事が始まる。
誰かが先にやってくれたことには、
ありがとうを忘れない。
気がつかない配慮には、配慮で返す。
そう、他人と暮らすってまずは
自分がしっかりしてなきゃいけない。
その先に転がるときは支えるし、支えてもらう。
自分がどうしたら喜ぶのかを知っていて、
その先に、他者としあわせになれる。
人間、究極、
最後は一人で立たないといけないわけで。
でも、そこを乗り越えたらけっこう楽しい。
Y子とE子との日々は、
そんなことを感じさせてくれる。
***
JR中央線のA駅から15分。
にぎやかな商店街を通る。その先にある我が家。
2024年4月がわたしたちの解散日だ。
だからこそ、
残りの日々をしっかりと刻もうと思う。
この「家族」と暮らせる、
面白くて、ちょっとした奇跡の毎日を。
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