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癸卯葉月 処暑 四国行 夏休み編その8

丗日 午後
大歩危駅を出てしばらくは車窓に渓谷美を楽しむ。
見れば見るほど、よくこんなところに鉄道を引いたなと関心しきりだ。同時に維持もさぞ大変だろうと思う。JR四国は経営の厳しさがニュースにもなっているが、やっぱり頑張ってもらいたい。また乗りに来よう。

今回の最終目的地となる徳島駅には、阿波池田駅で特急に乗り換えるとそのまま一本で行ける。乗る時間もさほど長くない。

平地の吉野川

吉野川の表情も山間とはずいぶん変わる。
もし時間が許せば阿波半田駅に行って偏愛する半田素麺をあれこれ買い込みたかったのだが、普通列車の本数が極めて少なく、飛行機搭乗日の行動としてはリスキーだったので今回は諦めた。また、穴吹駅で下車してうだつの町並みを見に行くプランも考えてはいたのだが、駅から町並みを見る交通手段が徒歩かタクシーしかないため、今回は泣く泣く見送った。
この10年ほどで地方の公共交通事情は坂を転がるように悪化している。旅をすると否応なく21世紀日本の現実を見ることになる。
このまま交通インフラの縮小が続けば、数十年後には、各土地を鉄道でのんびり巡る、なんてことすらできなくなっているのかもしれない。

せめて車窓から記念撮影

山から平地へ、農村から町中へ。
少しずつ景色が移ろい、鉄旅の終着、徳島に入った。
今回、徳島では徳島ラーメンを食べるつもりでいたので、駅に大きな荷物を預け、勇躍徒歩で街に出たわけだが、ここでいきなりのアクシデント。驟雨に見舞われたのだ。ずっと天気がよかった今回の旅、最後の最後にこれである。しかも傘はロッカーに入れてしまっていた。しぶしぶコンビニでビニール傘を買い、しばらくアーケードを歩いていると、なんだか小ぶりになってきたではないか。傘、必要なかった?
少々憮然としたところに、次のアクシデントが。
なんと目的のラーメン屋が臨時休業だったのだ。
この時点でもう意気消沈。空腹と疲れで「食べられれば何でもいい」モードに。ひとまず駅に戻りはじめた。途中、ラーメン屋ぐらいあるだろうと思っていたのだが……時間が中途半端だったこともあり店はすべて撃沈。駅内の飲食店も半数は昼休憩という惨状。
唯一オープンしていた焼肉屋にヤケクソ気分で入った。店には徳島牛やすだちサワーがあったので、これもご当地グルメではある。

希少部位だった気がする

ラーメンはインスタントでも買って帰るとしよう。

食後、空港に行くにはまだ時間があったので、駅から徒歩で行ける徳島城址にある徳島城博物館を見学することにした。
蜂須賀虎徹に記念撮影させるのもよかろう、と思ったのだ。
この時点でまた雨が降り出したので、ビニール傘もまったく無駄というわけではなかった。
なんだか阿波の神様には歓迎されていないような気分にもなりつつ、終わりよければ全て良し。我が本丸の蜂須賀虎徹も故郷に帰れて嬉しかろう。

そんなわけで、最後の最後でいまいち冴えない一日になってしまったのだが、全体を通してみればよい旅となった。
松山での講演がなければ、今回は夏旅はしないつもりだったのに、結局は四国の鉄道を堪能できたし、懐かしい顔にも出会えた。
縁とは奇なるもの。そしてありがたいものである。

そんなわけで、夏休みはこれでおしまい……のはずだが、実は少しだけおまけがある。だが四国の旅はこれにてひとまず完結。

この大きな島にいつかまたやって来られることを祈りつつ、帰途についたのだった。

さよなら、四国

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