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MGMがアマゾンに買収されて気づいた自分の中のご都合主義について

入院中の楽しみはネット配信で映画やドラマを見ることだ
映画に限っても新作から古典までかなりたくさんあって選び放題。到底見ることは無理と思っていた1950年代の邦画(名作ではなく日常的に封切られていた普通の作品)なども探すと出てくるから驚いてしまう。
また、映画並みに費用と手間をかけて制作されたオリジナルドラマも面白いものが多い。いい時代だな、と思いながらも映画・ドラマのインフレ状態に戸惑っているところもある。贅沢な話だ。

そんな中、アマゾンがMGMを買ったというニュースが流れた。
今の時代状況を考えれば特に驚くほどのことでもないのだが、何か来るものが来たなという感慨に襲われた。

私のイメージではMGMとパラマウントがハリウッドの2大映画会社であり、上品なイメージのパラマウントに対して、MGMは分かりやすい豪華さや大作感が魅力だった。
「2001年宇宙の旅」の上映開始前に、序曲が流れてライオンのロゴが映し出された時の、あの何か世紀の名作が始まるぞというワクワク感は忘れられるものではない。

しかし、もうずいぶん前から映画は映画館で観るものではなく、巨大化する映像マーケットの一部として、通勤の途中とかに気軽にチェックするものに変質していた。そして、今また新たに膨大な映画遺産が売りに出されたというわけだ。
私の世代では映画は劇場公開を前提とする特別の存在だったが、今後その区別はどんどん曖昧になり、映画とオリジナルドラマを分ける意味もなくなるだろう。見る側からすれば、どのようにしてつくられたかよりも中身の面白さだけが判断基準になるのだから。

若い時に慣れ親しんだ仕組と習慣が(映画は映画館で観るみたいな)そのまま続けばいいなと思うが、それはやっぱりノスタルジーに過ぎない。

私の家にはかなり大量の映画のDVDがある。昔、観た映画を片っ端から買い集めたものだ。劇場でしか観られなかった世代にとって、いつでも好きな時に観られることの価値は大きい。

その大半はアマゾンで購入した。
私は昔ながらの環境維持を望みながら、他方でアマゾンのMGM買収に加担していたというわけだ。
時代や市場が変化する以前に、自分自身が先に退廃化していたことに気づいたこと。これが来るものが来たなという感慨の正体らしい。


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