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私設ライブラリ―への道③場所さがし

現在、私設ライブラリ―設立準備の真っ最中である。ライブラリーをはじめようと思ったきっかけから運用開始まで、そのプロセスをここに少しずつ記していこうと思う。大まかには、作ろうと思った意図(コンセプト)、場所について、設営のプロセスなどについてです。同じことをしようと考えている人の参考になれば幸いです。

今回は場所さがしについて。

場所が決まらないと、計画は具体化しない

ライブラリ―をどこでするか、これは大きな問題である。
場所が決まらないと、本をどう置くかも、どんな雰囲気にするかも、どんな人に来てもらうかも、何より運営コストも明確にならない。
いつまで経っても想像しているだけになってしまう。

場所に関する選択肢は3つだ。
自宅でする、場所を借りる、専用の場所を建てる。
自宅でするのが費用的にリスクがいちばん少ない。
しかし、問題がある。
一部とはいえ、プライベートなところを不特定の人たちに公開するのは落ち着かないし、今の時代にはリスクでもある。
また、マンションであれば、不特定多数の人が出入りすることが許されない場合が多い。
実際、私が住んでいるマンションは管理組合の規程でピアノ教室なども原則禁止だ。騒音に神経質な方もいるし。
といって、新たに建てる(購入する)のは費用的に時間的に現実的ではない。
ただ、家を建てなくても自分専用のスペースを確保する方法はある。
ワゴン車だ。はやりのキッチンカーのブック版だ。
ワゴン車を改造してライブラリ―にしたら、話題にもなりそうだ。
シトロエンのバンとかだったら最高だろうな、などと想像を広げたが、そんなアクティブなタイプでもないので、これは想像するだけにした。
結局、借りるという選択になるわけだが、これが簡単ではないのだ。

最初はあまり無理しないように、と思ったが‥

建物や部屋を丸ごと借りるのは費用がかかるので、オフィスの一部とかカフェの一角とか、場所の一部を間借りすることを考えた。
お店に図書スペースをつくる例は最近多い。
仕事でつきあいのある量販店は子ども向けの図書スペースを設置している。運営は地元の有志がしている。
喫茶店やバーに本がたくさん置いてあることも珍しくなくなった。
私は自分が経営している会社ですることを最初に考えた。
オフィスに図書スペースがあるが、あまり活用されていないので、そこの管理をする代わりに、自分のライブラリ―として使わせてもらうことを提案した。企画・制作の会社なので、ライブラリーを充実させることは会社のメリットにもなると考えた。
最初はOKだったが、細かく運営を詰めていくといろいろと課題が出てきた。
社員以外の人も対象にしたかったが、セキュリティの問題がある。
また、ライブラリ―が福利厚生なのか、個人の趣味の延長なのかも線引きが難しく、私としてもあまり自由が利かない感じになったので、結局それはやめにした。

改めて、場所探しをはじめた。
最初は賃料の安いところを探した。しかし、自宅から遠かったり、不便だったり、気分が盛り上がらなかったりで、物件さがしは難航した。
ある日、パートナーのMIHOがネットである物件を見つけた。
それは、R不動産という、個性的な物件を専門にしている不動産会社のサイトだった。

偶然か、天の配剤か、これはビックリの物件が

見ると、建物全体が蔦に覆われた2階建ての家だった。そこの2階を貸すという。自宅からも比較的近いし、最寄り駅から歩いて4分くらいだった。
MIHOによれば、以前にも出ていたがすぐに成約となって一旦消えていたとのこと。それがなぜか再登場となったのだ。
何かわけありか?そう思いながらも連絡をとり、見せてもらうことにした。

建物はコンクリート打ち放しのおしゃれな住宅だった。築16年くらい。
2世帯住宅で、1階にオーナーが住み、2階を貸してくれる。
現物を見てみたら、驚きの連続だった。
蔦に覆いつくされているのもすごいが、玄関のドアが高さ5メートルくらいある。開けるといきなり2階へつづく白い階段があらわれる。
部屋は50㎡ほどの1LDK。住むには少し狭い感じだが、個人のライブラリ―には手ごろな大きさだ。
リビングには真四角の大きなテーブルが据えてあった。
テーブルの片端はキッチン(シンクとコンロ)になっている。
天井が高く、キッチン部分の上に大きなひさしが突き出ていて、その上に巨大なJBLのスピーカーがのっていた。
他にもいろいろと変わったところだらけだが、これはかなりカッコいい。
一気に気分が盛り上がってきた。
聞くと有名建築家による設計だそうで、雑誌の記事を見せてくれた。
しかし、収納が少ないので正直言って、住むにはかなり割り切った暮らし方が必要だと思った。
だが、われわれは住むわけではないので、これは実にピッタリではないか。

異様に背の高い玄関扉

場所は決まった。しかし、苦労のはじまりでもある

家賃は自分たちの想定より高かったが、いろいろと計算して、なんとかなるという結論になった。
因みにこのライブラリ―計画は、終わりを決めてはじめることにしている。
このライブラリ―は収益を目ざしていないので、いつか資金が底をつく可能性が高い。年齢的にも70代後半になるので、体力的に不安だ。
それだけではない。
私は会社経営をしてきて気づいたことがある。
どんな計画も終わりを決めてはじめればうまく行くということを。
終わりがないと、ダラダラになりやすい。
人は、終わりが見えるから今を充実させようとするのだ。

場所は決まった。いよいよ具体的に動き出すぞ。

ところで、成約したはずの物件が短期間で破談となったのはなぜなのか?
気になったので理由を聞いたが、前の契約者の都合だとしか分からなかった。
入居してみて、わかった。
この部屋はカッコいいけど、住むには問題の多いことが。

次回につづく。


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