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なめく路

あわただしく 流れていく日々の中でふと
自分が踏んできた道を振りかえる夜がある

それは白くも黒くもなく 薄く淡く 
ハッキリとした色づきのない半端な灰色をしていて

そこに まるで蛞蝓(ナメクジ)が通った後のようなあとが蛇行して残っている


ヌルヌルとして水気をおびた者が
確かに刻んできた跡(あと)

歩んできた道というよりも
這いずり進んできたような痕(あと)

その 道と呼んでいいのかさえわからない跡は
まさに蛞蝓(ナメクジ)が

己が雫を落とし ぬめりこすり削りながら
紙の上を這いずり進んできたがごとく

通ってきたであろう軌跡だけを
なんとか確認できるくらいの

それはそれは頼りない線で 
もう乾いていてぼこぼこと膨らんでいるんですね

そう 一度濡れた紙が
乾いたあとにぼこぼこになるように






自分が歩いてきた道を悔やむ夜がある
自分で選んできたにも関わらず

過去の分岐点に戻りたいと願う夜がある
どうせまた同じ道しか歩けないだろうに

流された選択で頭を悩ませる夜がある
流される事を選んだのは自分だろうに

楽しかった過去がまるで他人の記憶かのように
かすみにみえる夜がある
まぎれもなくそこにいたはずなのに

すべてを消しさり無になりたい夜がある
無の意味など知りもしないのに


あの人のためだから という
言い訳を用意できる僕は
きっととても小狡い人間なのだろう

僕の中の獣が交わる と書いて
狡いという字は なんてズルいんだろう

魔が差したかのような獣のせいにして 僕は
あやまちをぼかしてやり過ごしてきたんだ

けものへん のつく漢字の感情に
何度 人生を狂わされてきただろう


もう一度だけ
自分が這いずり進んできた跡を
見返してみたら

なんかわからないけれど
あなたが笑ってくれているのが
見えた気がしたよ


ありがとう


今はまだ

2024.03.28     25:30


僕らにはまた朝がくるんだ

それを受け入れた時に初めて

2024.03.29     00:30
に なるんだと思ったら

僕はまだ
這いずれるような気がした




頂戴いたしましたサポートは全額有意義に使用させていただきます。主にカレーパンになるかと思われます。