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⑦桜島を背に 〜モンキー125、熊本への旅路

朝日が雲と霞の彼方から柔らかな光を放ちながら昇ってくる。昨日に続き、今日もまたそこそこの距離を走らねばならない。

ベッドから身を起こし、窓の外をのぞいた。遠くにある桜島の頂付近から、緩やかな煙が立ちのぼっている。活火山ならではの景色だ。まるでそこには時間が凝縮されているかのようだ。

しかし、この桜島の景色を最後に目にするのは名残惜しい。活火山の威厳ある姿をしっかりと心に刻みながら、いよいよ熊本へと向かう旅に出る。

荷物を再度点検し、軽量化を図る。大きくて重たいものはモンキーにとっては負担だろう。だが、仕方がない。この小さなバイクを最大限に活かすしかないのだ。

旅の途中で捨てられる物は捨ててしまいます👍

ホテルを出て、一路桜島へと向かう。島内を一周し、熊本市を目指す予定だ。朝の空気を胸いっぱいに吸い込むと、たまってきた旅の疲れはどこかへ吹き飛んでいった気がした。天候にも恵まれ、目の前には活火山の雄大な姿が広がっている。そんな自然の恵みに触れると、ありがたみを感じずにはいられない。

桜島に向かう前に、ホテルからすぐの場所にある宮迫神社に立ち寄ることにした。垂水市内で古くから信仰を集める由緒ある場所だという。

「鳥居をくぐろう」

心を清らかにし、手を合わせてお参りする。旅の無事を祈りつつ、神聖な場所で心を落ち着かせた。長い年月の間に息づく気高い存在に、畏怖の念が湧いた。

小さいがとても雰囲気のある宮迫神社⛩

神社を後にし、再び桜島の道を走り出した。しばらく進むと、垂水フェリーターミナルが見えてきた。フェリーに乗る予定はないが、何となくそこを写真に収めようと、路肩にバイクを停めた。

「おっと!」

バイクを降りる際に、足が荷台の荷物にぶつかってよろめいてしまった。危ない、危ない、こんなところで愛車を倒したくなかった。少し疲れがこのような形で表れているのかもしれない。

フェリーターミナルを後にしてしばらく走行し、いよいよ桜島が近くなってきた。途中でバイクを停め、スマートフォンのカメラで目の前に広がる桜島の全景を収めた。ズームレンズを使って拡大すると、荒々しい山肌がはっきりと見える。これはまさに、活火山ならではの荒涼とした景色だ。

垂水フェリーターミナル⛴

過去の噴火の記録を振り返れば、この大自然の猛威に見舞われた時、人が住む場所ではなくなることがよくわかる。そんな危険な場所で、人々はどのようにして安らぎを見出すのだろうか。

道路脇に立っていると、立ち上る煙が目に見えるほど近くに迫っていた。その迫力に、一瞬身の危険を感じた。

しかし、その恐れはすぐに大自然への畏敬の念に変わっていく。私たちはただ小さな存在であり、この膨大な自然の前に立っていると、はるかに大きな営みを感じることができる。

そんな思いを心に留めながら、周辺の景勝地を巡った。そして、写真を撮るスポットを探し、バイクから降りて一つの景色を見つめた。

その後、納得がいけば次の場所へと移動した。そのような行程を繰り返しながら、桜島の島内を一周した。

すべての景色を見終える頃には、すっかり時間が経っていた。そろそろ内陸部に移動し、桜島を離れる時が来たのだ。

桜島を後にし、今度は熊本市を目指してバイクを走らせる。一般道をひたすら進むと、次第に郊外の景色が視界に広がり始める。ややもすると、気が緩む自分に気づく。確かに、長距離ツーリングも今日で折り返しを迎えたわけだが、油断は禁物だ。

桜島を後にして、熊本市を目指します🏍

これまでの旅路を振り返れば、いくつもの思わぬハプニングに見舞われてきた。道路状況や天候の変化、そして荷物のトラブルなど、予期せぬ事態に遭遇することも多かった。だからこそ、最後の最後まで注意を怠ってはならない。

この小さなバイクでの長距離走行は、身体に大きな負担をかける。単気筒エンジンの振動が直に伝わり、手や腕に痺れが生じる。また、積載の限界から、荷物を最低限に抑えざるを得ない。快適さなどは望むべくもない。

だが、それでも、この長い旅を乗り越えられたのは、やはり私がモンキー125で成し遂げたいという意志が強かったからだろう。

そろそろバイクの給油が必要になってきた。途中、コンビニの隣にあるガソリンスタンドを見かけたので、立ち寄ることにした。

「すみません、ハイオク満タンでお願いします」

給油所のスタッフに声をかけると、すぐに対応してくれた。モンキー125のフューエルタンクに、ハイオクガソリンが注がれていく。

「モンキーですか?とてもきれいなバイクですね」
「そうなんです。小さめなんですが、こいつで四国・九州一周の旅をしているんです」
「おおー、そうなんですか。それは大変そうですね。でも羨ましいです」

スタッフの言葉に、なんだか心がほっとした。確かに、中型以上のバイクツーリングとは異なる、原付二種ならではの下道ツーリングを続けてきた。その点で、大変なこともあるが、かえって良い経験ができているのかもしれない。

「今日で折り返しなんですけど、この調子で新門司まで走り切れそうです」
「頑張ってくださいね。あ、となりのコンビニに少し休憩スペースがあるので、お疲れでしたらご利用ください」
「ありがとうございます。そうさせていただきます」

スタッフの方に感謝を述べ、一旦給油所を後にする。隣のコンビニエンスストアに立ち寄り、ちょっとした休憩を取ることにした。

親切なスタッフさんに勧められて、隣のコンビニで休憩中

トイレを済ませ、飲み物を購入する。外のベンチに腰を下ろし、一服する。ふと、チェーンがだいぶ伸びていることに気が付いた。走行中にかすかにだがドライブチェーンがスイングアームに干渉している感じがした。

「帰宅したらまずはチェーンの調節だな」

つぶやきながら、持っていたチェーンルブを少し差しておいた。そして、ブレーキの点検、ミラーの調整などを施す。バイクは私の駆るツールであり、これまでずっと一緒に旅を続けてきた相棒だ。適切なメンテナンスを怠らず、ここまで無事にたどり着けたのだと実感する。

リフレッシュを済ませ、再び給油所のスタッフに挨拶を交わしてから発進する。さあ、熊本まで、今日の行程の半分を過ぎた。気を取り直して、クラッチを握り、シフトアップした。

しばらく走っていると、だんだんと景色が変わり始める。遠くに市街地の景観が見え隠れするようになってきた。目的地に近づいているはずだ。

道路脇の看板を確認しながら進路を進んでいくと、まもなくして熊本市内に入ったことが分かった。一気に街の喧噪が身にのしかかってくる。信号が頻繁に現れ、スムーズに走行できない。バイクが細い路地に入り込むと、ますます交通量が多くなってくる。

そうこうするうちに、相当な時間を無駄にしてしまった。目的地までの残り距離は僅かなはずなのに、なかなか到着できない。こうした市街地走行は、もっともストレスが溜まりやすい。

最後の気力を振り絞って、ようやく目的のホテルに到着した。

「ふう、やっと着いた」

長距離の運転を終えての疲労が、一気に私を覆ってくる。ホテルのフロントで受付を済ませ、ようやく客室で一息つける。

荷ほどきもそこそこに、しばしベッドに寝転がり、ぼんやりとした気分に浸る。窓の外を見ると、夕暮れの空が燃えるように赤く輝いていた。熊本に着いた実感がじわじわと広がってくる。

法華クラブの客室。市街地から近くて便利なホテルです🏨

ホテルには温泉施設が備わっていた。長距離のバイクライディングで蓄積された疲労を癒やすため、さっそく温泉に浸かることにする。

一旦着替えを済ませ、浴場へと向かう。扉を開けると湯けむりが漂い、独特の温泉の香りが鼻をくすぐる。湯船に浸かると、ぽかぽかとした気持ち良さが全身を包み込む。

ゆっくりと体を休め、運転に疲れた頭と身体をリフレッシュすることができた。目を閉じて、首まで湯に浸かってみる。すると長旅で見聞きした風景や出来事が、鮮明に蘇ってくる。

四国から九州へ、そしてこうして長い旅路を無事に走破することができてきた。達成感に満たされるとともに、さびしさのようなものも心の中に去来する。

この旅を経て、私は多くのことを学んだ気がする。人生とは移ろいゆくものであり、過ぎ去った日々に未練を残すだけでは前に進めない。だがその一方で、いつの日か旅立った道々の記憶が、私の足跡を照らしてくれるのだと気づいた。

温泉から上がり、身体の疲れが癒やされたところで、熊本市街を散策してみようと思い、いそいそと着替えを始めた。

温泉に浸かっている間に、コインランドリーで洗濯を済ませた

<筆者 自己紹介>
私は現在40代後半に差し掛かり、子供たちも徐々に自立し、自分の時間を満喫できるようになりました。免許を取得したのは30代後半でしたが、仕事と家庭のバランスで中々バイクに乗る機会がありませんでした。しかし、最近になってようやく自分の時間を楽しむ余裕ができました。大型バイクは維持にお金がかかりますが、手軽に乗れて維持費も抑えられるバイクを模索していました。そこで私が出会ったのがモンキー125です。このブログでは、私のモンキー125にまつわるエピソード、ツーリングの思い出、カスタムの詳細など、私自身が体験したことを共有していきます。
それに加え、私のYouTubeチャンネルでもいくつかの動画を公開していますので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。🏍️✨
モンキー125の走行シーンと独特のサウンド、そしてツーリング体験を、まるで現地にいるかのようにお楽しみいただけます!ぜひご覧ください👇

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