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戦いの歴史

わけのわからん橋の下で目が覚めた。体がバキバキだ。腸がはみ出しているし、脳内はリバーブがかかっている。ああ最悪だ、イヤホンをどこかに落としてしまったようだ。スマホを取り出し、位置情報を確認する。消火器で通りがかったおっさんを殴り倒して手頃な公園に向かって歩き出した。


空き缶を詰めた袋をガシャガシャ言わせて自転車を駆るジジイが肩に担いだラジカセから流すダンスロボットダンスを俺は身体中の穴という穴から受け入れた。なんて気持ちのいい朝なんだろう。
ぐわんぐわんする頭をもたげてゾンビのように街を行く。すれ違った女子高生が「きもい」、「くさい」、「ごめんね、もう夢の中には戻れない」、「小林稔侍の頭皮からしか採取できない鉱物があるらしい」、「地獄のファズ、アタイに聞かせておくれよ」、「仏(ブツ)でしか救えない魂(タマ)がある」などと激励の言葉をかけてくれた。なんとも優しい街である。


90分ほど歩いただろうか。やっと手頃な公園に行き着いた。
加藤茶みたいな顔のババアが猫に餌をやっていたので、一喝すると、ババアは真っ白な鳥になって飛んで行った。翼ひとつひとつが白米のように真っ白な、それはそれは美しい真っ白な鳥だった。真っ白な、鳥、だったのだ!


手頃な公園でブランコをこいだ。一通りこぎおわったので、ポケットの中に入ってあったTRFのCDをフリスビーにして、通りがかったおっさんめがけて投擲した。
TRFのCDが額に突き刺さったおっさんは、やがてTRFのCDを読み込み始め、再生し始めた。俺は河内音頭を踊り出す。
1時間後、おっさんの周りに小室の亡霊が漂い初め、俺の周りに河内音頭を踊る踊り子が踊り始めた。おっさんはやがてDJ KOOになり、俺はやがて櫓になった。DJ KOOになったおっさんが「血が出てる!」と叫んでいる。見ると、額からなんかうっすい緑がかった水が垂れていた。これでよかった、これでよかったんだ、、、


〜〜〜〜〜〜〜200年後〜〜〜〜〜〜〜


DJ KOOは目まぐるしい成長を遂げ、右半身がメカになった。あと改造手術の副作用で左手の汗の分泌量が増えた。この事についてDJ KOOは「よう潤むね」と呟いた。
俺は櫓として生きるのも飽きたので、櫓を世襲制にした。2台目、もとい2代目は元木大介である。元木大介が2代目に立候補した時、小室の亡霊は成仏した。元木は不服そうな顔で戦闘用のかったいヘッドギアをつけたり外したりしていた。

役目から解放された俺は、約束の木の下で割腹自殺をした。夕陽が綺麗だった。街がオレンジに染められてゆく。俺の好きだったこの街が。あの子が住んでいたこの街が。仲良しグループで駄菓子屋のババアを撲殺して神社の裏に埋めたこの街が。生き返ったババアに半殺しにされて仲良しグループが壊滅したこの街が。早朝に決まって「もってけ!セーラーふく」を熱唱するキモオタがいたこの街が。眠りを忘れたこの街が。ひどく冷たいこの街が。ひどく冷たいこの俺が。

オレンジに、沈んだ。





笑っている。





戸田恵梨香が笑っている。





歯茎をむき出しにして。










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