トカゲの思い出

とかげ


大阪の民族学博物館で、見世物大博覧会という特別展をやっていた。

見世物小屋は、何度かお祭りでみかけたことがありますが、じつはものすごくこわくて、入ったことはありません。

わたしはニュータウンで育ったので、お祭りなんかも特に別に由来やら伝統やらがあるものはなく、近所の大きめの公園で、毎年盆踊り大会があるくらいですが、一度だけ、見世物小屋が出ていたことがあります。

もちろんこわくて入れてないんですが、こういうものはもっと大きなお祭りに出るものかと思ってたなあと、思った記憶があります。高校生くらいのときかな。

 大阪だと、住吉神社の夏祭りなんかだと、ここはもう、すごい規模のお祭りですから、たぶん毎年、見世物小屋、お化け屋敷と、小屋がたっていると思う。数年前、久しぶりに住吉の夏祭りに行って、ケバブサンドを買いに並んでいると、ちょうど正面にあったお化け屋敷の小屋に、家族連れが入ろうとしてるんですが、そこんちの5歳くらいの男の子がこわくて泣き叫びつつ全力で入るのを拒否してる。しかし、家族に「ここに入るのは、うちの掟や!」って、連れていかれていました。トラウマになっただろうな。

そんな話を家に帰ってしてたら、うちの母(昭和7年生まれ)が、小学生のとき、見せ物小屋か芝居巡業の家業の子が1週間とかだけ学校に来てたなあなんて話をしていました。

そしてもう二度と会わない。

今はどういうかんじなのかわたしはよく知りませんが、30年くらい前、住吉の夏祭りの最終日の午後遅めに行った時、すでに小屋の解体を始めていて、そこに子供がいたのを覚えています。

 そんなことを思い出しながら、ぞわぞわした気持ちもありつつ、展示を見ました。1階は見世物小屋の再現であったり、いろんな興行や演芸の資料や映像。2階は、見世物としての「もの」(細工とか、菊人形とかまで)や動物などがテーマになっていて、特に貝細工がすごかった。

昔はもちろん珍しかったであろう動物の剥製も巡業の見世物としてあったという展示のなかに、小さめのワニの剥製がありました。それを見て、とつぜん、むかし叔父が借したお金の代わりだか何かに貰い受けてきたけど置くところがないって、うちに持ってきた、オオトカゲの剥製のことを思い出しました。

叔父があのトカゲの剥製(体長約1m)を持ってきたときの夜のことを覚えてます。

どうする、これ…みたいな、どんよりした雰囲気。

うちにも置くとこないよ、でもまあ、しかたないから、ここなら置けるか、ということになったのが、居間のテレビの上の棚と天井の間の狭い空間。

オオトカゲはずっとそこにいました。年末の大掃除のときだけ降ろされて、母がホコリを拭いていた。

 20年ほどまえに家を改築し、あのオオトカゲは今の家にはいません。

今まで、あれをどうしたのか全く考えたことがなかった。うちの親が前の家を壊す時に捨てたんだと思うけど、引っ越しごみの日に出したとしたら、普通のゴミ収集車じゃなく大物引取のトラックが回収しただろうから、そのままどこかに持って行かれて、収集の人も、たんすとか家具とかを仕分けするんだと思うので、そこで仕分けされて、またどこかに売られていったかもしれないな。

でももしかして家の物置にまだいたらどうしよう。

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