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#007 社交ダンスで覚えた「縁は異なもの(What A Difference A Day Made)」

結婚する前に、社交ダンスをかじってたことがある。その時のダンス講師が今の妻であると言えばドラマチックだけれど、そうならないところが僕の人生のつまらないところである。

2019年(令和元年)の11月30日に閉館した、東宝ダンスホールでレッスンを付けてもらっていた。僕が通っていたのは、2018年頃だから、ある程度このホールの最後の方を知っていることとなる。

きらびやかなシャンデリア、リッチな装飾を施された店内、広いダンスフロアと飲食スペース、きらびやかなドレスに身を包んだ踊り子(通称があった気がするが忘れた)、そして生演奏のバンドが付くという、まるで高度経済成長真っ只中で時間が止まってしまったかのような雰囲気だった。

ただ、経営状態はまったくよくないように見えた。客の入りも夜はひどく、踊っている一組のカップルに対し、大勢のオーケストラが演奏している、という状態もよくあった(それはそれで贅沢だったんだけれど)。これで、採算合うのかなぁ、何とかすれば何とかなりそうなんだけどなぁと思ったり。

スタッフも利用者も、ただただ直線的に(精神的にも)老いて行っているようだった。問題点は「そういうもの」「なんとかなるさ」と振り返られることなく、さらに時流から離れてゆき、そして閉店の結末を迎えた。ある意味、コロナウィルスの大流行前だったので「惜しまれつつ」といったムードをを残せたことはよかったのかもしれない。

話を戻そう。夕方から夜にかけて流れる音楽は、生演奏だった。必ず二組いて、1つはブラスを主体としたオーケストラ、もう1つは4~5人程度のバンド編成、その二組が、30分程度の持ち時間制で、交互に演奏をしていた。

その時は知らなかったが、オーケストラは、日本のラテンバンドとして名高い有馬徹とノーチェ・クバーナも出演していた(こういう時は週末で、客入りも盛況で、ダンスをやめて音楽を聴いている人も多かった)。

あと、なぜか、おぼんこぼんのこぼん師匠が指揮するバンドが出ていた。こぼん師匠がこんな活動をしているなんて全く知らず(知らないですよねぇ)、単なる余技かと思ったのだけれど、演奏中にパーカッション(新人なのかな)に的確な指示を与え、その直後、ちゃんとノリを「ラテン」に変えていた。なかなかのものだと思った。

そこで演奏される数々のラテンの曲に、だんだんと興味を惹かれるようになってきた。

その中で、とりわけ自分の興味を引いたのが「縁は異なもの(What A Difference A Day Made)」という曲だった。というのも、この曲、平松愛理の「戻れない道」という曲のAメロにそっくりなのだ。最初は本当にこの曲だと思った。

「戻れない道」という曲は、「昔の恋に後ろ髪をひかれつつ、でも今の方が幸せである」といった内容の曲。一方「縁は異なもの(What A Difference A Day Made)」は、「恋したたった1日だけで、こんなに景色が変わってしまうものなの?」と言った内容。類似性は・・・ほんのりあるような(笑)。まぁ、偶然でしょうけど。

「平松愛理」がダンスホールで流れるわけないじゃん、と思われるかもしれないが、それが「歌謡アレンジ・ラテン」って恐ろしいものがあるんですよ。

特に最大の嫌悪感を感じたのが「たそがれの銀座」のチャチャチャアレンジ(しかも歌付き)。この「銀座銀座銀座~」というところで、くるくる回ったりすると、つくづく「俺はこんなところで何をやってるんだろう」とつくづくわびしくなった。いつまでもぬぐえない寝汗のような思い出である。

もちろん、彼ら演奏者側も必死に「アップデート」しようとしているのだが、その最大努力がマイ・リトル・ラバーの「Hello Again」だった。このラテンっぽくない転調も含んだ曲をルンバ・アレンジでやるんだから、たまったものじゃない。ほかに簡単で成果が上がる曲があるだろうに。

いろいろ話がそれましたが、結構、今でも、ラテンの定番曲(特にオーケストラ編成)を聴くと、心躍り、胸が熱くなってきます。ジャズやクラシックのような繰り返しの鑑賞に堪えうるようなものではないかもしれないけれど、楽しいリズムに身をゆだねて、体を揺らすだけで、気分がよくなりますよ。ジャズ・スタンダードとして演奏される曲も、ラテンにはたくさんありますのでね。

エドムンド・ロスは、ザヴィア・クガート、ペレス・プラードなんかに比べると、だいぶ忘れさられているけれど、大ぶろしきを広げすぎない感じで、私は好きですね。ポップ曲を取り入れたりも精力的で「ライト・マイ・ファイア」とかもやってますよ。『Ros in Japan』では「こんにちは赤ちゃん」をなんてやってます。


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