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『色の歳時記』M.サッチャー鉄の女の涙

添 実のりです。

私がパーソナリティを務める番組『色の歳時記』。
今年は、「色のおはなし」パートを拡大しました。
色の意味をかみ砕くだけでなく、
リスナーの皆さんと一緒にイメージできるものにしたい、ということで、
映画やドラマ、キャラクターなどの場面や衣装の色を題材にしています。
     *     *     *
4月オンエアでは
映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』を取り上げました。

◆マーガレット、政界への一歩
色:食事会に初参加する際の水色のスーツ。
食料雑貨商だったマーガレットの父親は、政治活動にも参加。
そんな背景もあり、マーガレットは政治に興味を持ち、
とある食事会に参加する。

⇒シングルボタンのジャケットにフレアスカート。
水色のスーツで登場したマーガレット。

※水色とは、一般的な青(12色のクレヨンの青)に
光がいっぱい入った色。
青には志という意味もあって、
その青に光が入る⇒青の意味が増長します。
マーガレットが政界に入るきっかけは、女性の立場向上の実現。
「純粋な志」を水色がうまく表現していますね。

また当時の政界は今よりもっと「男の世界」。
男性を象徴する色は青。
(トイレなど男女の分類は赤と青ですよね?)
男性の世界=青の中に入っていくわけなので、
水色だったのではないでしょうか。

◆初出馬で落選、政治家になる決意
マーガレットは初選で落選してしまうが、
党事務局に目をかけられ、選挙に勝つための指導を受ける。

⇒この頃からマーガレットの服は青や紺色へと変わる。

※水色は純粋さとともに若さも感じられます。
水色から青や紺色へと色味が重くなっていく流れには、
政治への本気度や議員としての成長や本気度が感じられますね。


◆初当選~党首へ
その後、マーガレットは教育科学相~保守党党首を経て、
首相へと政治の階段を登り詰めていく。

⇒マーガレットの服は出世に伴い、
どんどん青が濃くなる。
組閣の記念撮影ではロイヤルブルーのドレスをまといます。

※ロイヤルブルーとは名前のとおり、
イギリス王室のオフィシャルカラー。
深く鮮やかな青には権威の意味合いも。

じつは、ロイヤルブルーには一滴の赤が入っています。
(オーラソーマの解釈)
理性的にふるまいつつも、
心の中は(赤の)欲望や野心がみなぎる。
私にはそのように見えました。

◆絶頂から敗北へ
会議出席者全員の前で、
担当大臣に恥をかかせ辞職に追い詰め、
「首相になるのは正義のため」というマーガレットに対し、
「君の野心では?」と厳しい言葉を突きつけられる。
その時期のマーガレットの服装は赤茶色が多い。

首相・保守党党首選で敗れたマーガレット。
黒字に白のパイピングのスーツを着て、
1人、議場にたたずみ、辞任という大きな決断を下す。
首相官邸を去る日、
マーガレットは真っ赤なスーツに身を包んだ。

⇒ロイヤルブルーのなかの一滴の赤が、
どんどん増したのでしょう。
夫の発言にある「野心」も赤のキーワード。
モノトーンの服は、
何の感情も湧かない…声も出ないほどのショックが表されています。

首相官邸を去る際の真っ赤なスーツ。
落胆から気持ちが切り替わって、
赤の熟成や完全燃焼という言葉が浮かんできます。


◆あの世とこの世を行き来する晩年
晩年のシーンでは、夫デニスとのやり取りが
頻繁に登場する。
生前、政治に集中しすぎて家族をないがしろにしてきた後悔が
マーガレットを思い出の中に閉じ込めたかのようだった。
娘はそんな母親を認知症だとマスコミに公表。
1人での外出を禁止され、
パジャマとガウンで一日を過ごすマーガレット。
その色は薄い水色だった。

⇒私が最初にこの映画をDVDで見た時、
パジャマとガウンは薄い藤色に見えました。
この世のなかでいちばんあの世(霊界)に近い色が紫。
認知症のためか、過去のやり直しをしているのか、
亡き夫との会話をするマーガレットは、
あの世とこの世を行き来しているように感じました。

今回、ラジオ番組でお話するにあたり、
Amazon Primeで鑑賞したところ、
パジャマは水色の花柄、ガウンはグレイッシュなブルーでした。
グレイというのもまた、現実から遠のいた印象がありますね。

*    *    *
色を使って心のなかを分析することができる一方、
色に支配されることもあります。
この映画におけるマーガレットは、
自身が青を選んだというより、
政界という男性社会に飛び込み、青という色に支配された。
そんな観方もできるな…と思ったのでした。

よろしければ、第1回目の『ラ・ラ・ランド』も
ぜひご覧くださいませ。
https://note.com/mono_iu_87/n/nbb81eedb4caa