空飛ぶ円盤・そのイメージの形成

 大航海時代においては『空飛ぶ帆船』の目撃例が、飛行船の開発が始まった頃には『幽霊飛行船』が、1940年代後半にV2号の話が広まると『幽霊ロケット』が、戦後のSFブーム期には『空飛ぶ円盤』が、ベトナム戦争の頃にはカイユースやイロコイスに似た『ブラックヘリコプタ』が、ステルス機が開発されるようになると『トライアングル型UFO』が現れる。
 UFOは非常に流行に敏感な存在なのだ。ついでに

 UFOをめぐる密約だって同じ事、ウォーターゲート事件等でアメリカ人の連邦政府に対する『どうにも信じられん』イメージが強まった頃と陰謀論の広まった時期は結構繋がりがあったりする。

 かの米海軍の試作機『フライング・パンケーキ』は『空飛ぶ円盤』神話の初期に登場しているが、最初に『パンケーキ型の航空機で短距離で離着陸でき、ヘリコプタのような超低速から戦闘機のような高速まで実現可能なものを開発中』という文章なり、話なりを聞いたとき、つまりまだ絵としての情報の無い時、人々の頭の中にはどんな『想像図』が描かれただろう?
 すでに戦後といえばジェット時代、科学雑誌にも新たに登場するジェット機が賑わいを見せていたのであるからレシプロ機を想像しはしないだろう。ましてやSFが一般的にも浸透していたアメリカの事である。
 『フライング・パンケーキ』の『想像図』は入手できなかったが、アブロ・カナダが開発した『アブロ・カー』の『想像図』は洋書に載っていた。まさに『円盤』であり、その試験飛行を軍人が見守っているという図である。結構その手の好きな人には燃える。完成したホバークラフトもどきとは少なくとも全く違うものである。『違う、あんなのアブロカーのはずはない。きっと隠れてホンモノのアブロカーが開発されているに違いない』という神話の生まれた原因はその辺にあるだろう。この時代に今言う『円盤』が出来上がっていったのはないだろうか。

 21世紀のUFOがどのようなカタチになっていくか、実は昨日、某氏より『イラク戦争で米軍がヘリコプタからレーザー兵器を照射、黒焦げの死体を生み出している』という話を聞いた。ここではこれが『真実』であるかは問わない。アメリカ憎しの誰かが織り交ぜたヨタの可能性も十分に考えられる。ヘリコプタに搭載できる規模のレーザー・ビーム兵器が開発されているという『信じられないすごい話、そして一応科学的ではある』というのは実に『Spファイル』的ではあろう。もちろん私は『真実かウソか』でこの問題を扱わないつもりである。あくまでも民俗学的に扱う問題と思われる
 そんなことから一つは『アメリカ製最新兵器としてのUFO』は流布していく可能性があるように思える。ワシントン上空に謎の飛行物体が現れ、『日本軍の襲撃』と思われたこともあったし、1940年代後半には『ナチスの新兵器』、『ソ連の新兵器』などと語られた(賢明なる読者諸君はご存知の通り、『異星人の乗り物説』はその後に流行った話である)事から考えると、『唯一の超大国』となったアメリカ以外には、超兵器の噂の根源となる国はもう存在しなくなってしまったという事が判るだろう。イラクはさておき、北朝鮮にUFO兵器は似合わないのだ(まあキム君が趣味で飛ばしてるってのはアリだが、それやるとしたら『Spファイル』で)。

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