巨人とドラゴン

 志水一夫氏が著書の中で書いている言葉に「巨人とドラゴン」というものがある。日本では「プロ野球」と連想されるけれど、これは超常現象が「聖書的」である事を示す象徴である。というのだ。いわゆる「UMA」の中には「巨人」および「ドラゴン」の属性を帯びているものが多い。イエティやビッグフットは「巨人」だし、ネッシーやシーサーペントは「ドラゴン」である。聖書の中には「ドラゴン退治」だの「巨人伝説」だのの記述がある。クロップサークルのように「しるし」が描かれるのも聖書的である。これを題材にした映画に「サイン」があったがこれはまさに「しるし」の意味である。アメリカのUFO調査機関にも「プロジェクト・サイン」があった。そういえば「MJ-12」なんてもろ聖書的。こりゃキリストの12の弟子のことだろうな。かつて流行した「宇宙考古学」にもそのような側面は見られる。ピラミッドの寸法には聖書的な予言が含まれているとか、「失われた大陸」で白人文明が栄えていたとか、そこには欧米人の「非キリスト教的」なモノへの「適応異常」があるという。

 こういった事が原因で、欧米では科学者が超常現象を扱うことを避けている部分があるのだそうだ。向こうでは科学と宗教の間で対立があり、宗教的な現象が肯定されることで科学が否定されるという思いこみが、科学者の間に有るらしい。

 欧米の超常現象は日本でそのまま、まるでパロディのように(笑)受け入れられたけれど、これには開国してから、また太平洋戦争に敗れてからの拝外志向もあるだろう。けれどそれだけではないと私は思う。日本にも「ヤマタノオロチ」のようなドラゴンや「だいだらぼっち」のような巨人が存在する。神話や昔話の中のものだが、これらが伝えられていた事も下地になったのではないだろうか? またUFOにしても「飛び物」「光り物」の伝承が日本には存在する。これらが無かったらこんなに簡単に考えが受け入れられただろうか? なんだか中世の絵巻物や近世の浮世絵と戦後のアニメやマンガの関係を語る人の真似みたいだが、いや全くその通り、その方法論で日本におけるオカルトが読み解けるのではないかと私は思っているのだ。

 興味深い話がある。太田原治夫氏というUFOやシンクロニシティ(いわゆる偶然の一致)についての研究をされた人がいたが(故人)、「トンデモ創世記」によると、なんと「耳から黒いUFOが出てくるのを目撃された」との事だ。いやはや(笑)、これはもはや「聖書的」ではない。その昔「庚申講」というものが日本にあった。古い道教の思想から来ているらしいのだが、人の体の中に虫がいて、悪いことをすると閻魔大王に知らせに行くという、だからその虫が出て行くとされる日は、見張りの意味で眠らずに村人同士で過ごすというものだ。この「UFO」と「虫」に共通点が見出せないだろうか? 太田原氏は「UFO特異日説」というモノも説いている。ある日に限ってUFOの目撃が増えるというものだ。おそらくその「特異日」とは「庚申」の日であろう・・・?

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