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ペスカーラ事件

 UFOがらみの話ってのは都市伝説の一種、近代の妖怪みたいなのもあるんだけど、一時は『乗り物に分類されるだろう』と思われていた。飛ぶ乗り物であれば飛行機、ってことで航空機について語る立場の人が空飛ぶ円盤を語る時期もあったものだ。それも肯定的に。

 で、アメリカはホワイトサンズでロケット技師やっていて、円盤搭乗体験しちゃったダニエル・フライなんかもその一人。日本にも航空雑誌やっていてそっち系に行っちゃった松村さんという人がいる。


 今回お話するブルーノ・ギバウディもそんな一人。


 ギバウディはイタリアの科学ジャーナリストで、この当時は航空機や宇宙飛行関連の記者として知られていた。で、上司からこんな風に言われる。


『空飛ぶ円盤の番組を作るので、目撃者をレポートしてくれ』


 と。円盤には関心を持っていなかったギバウディ、それでもイタリア中を回って目撃者達に会う。写真を撮ったり、かけらを拾ったり、中には乗ったなんていう人もいたり…しかしその人達は笑い者になったり職を失ったり、はたまた当局から厳しく尋問されたり。

 興味を持ってまた取材しようとするギバウディ、しかし上司からこんな風に言われる。


『あの話だが企画が没になったんだ』


 しかしギバウディ、もうのめりこんでしまっているので引っ込みがつかない。独自に調査する過程で1961年4月27日のお昼頃、愛車のフィアットのタイヤのパンクの修理中、モンテシルバーノ(ぺスカーラ)の海岸で見ちゃうんだ。アヤシイ飛行物体を。低空で飛んできて頭上を通過、北に向かって急カーブしたんだって。で、それだけじゃない。撮っちゃう。いや、正確には撮ったと主張しちゃう。実は複数枚あったらしい。うち1枚は作っちゃったにしてはあまりにオリジナリティ溢れる奇妙な代物。

 胴体は後ろに向かって平べったくなるが、まああるかなと思うのに対し、バンザイするように上向きに突き出た主翼がある。尾翼はそれに迫る大きさの三角形でV字を描くように取り付けられている。

 インチキだとしてもおかしい。ギバウディは飛行機に詳しいはずだから、いくらでも「リアル」にはできたと思うんだが。

 1年後の1962年4月15日、 La Domenica del Corriere紙にカラーのイラストが載ったらしい。この新聞はこういうぶったまげた記事を良く載せている。『おばさんが二人組みのヘルメットつけた中国人風宇宙人(背中合わせの子供用椅子があるだけの紡錘形円盤に乗っていた)にカーネーションとストッキングの片方を引っ手繰られた』とかね。


 それだけで終わらない。なんとギバウディはこの年の夏、スペース・ピープル、すなわち宇宙人に会っちゃうのだ。いや、『スペース・ピープル』なんて言ってる段階で怪しさ爆発なんだけど、これが地球人に良く似た外見の人もいたらしい。話している内容は彼らは数千年進んでいるだの、核兵器の危険性だの…つまりぶっちゃけて言っちゃうとコンタクティ、(宗教系の)異星人との会見者そのものだったのだ。その世界の人なら知ってるジョージ・アダムスキー以降の典型例。


 結局ギバウディもあっちの世界に行っちゃったのかなとも思うんだけど、この異形の乗り物のビジュアルがいいんだよな。まだ空飛ぶ円盤がどんなカタチをとろうか悩んでいる。そんな側面が垣間見れると思うんだ。


参考資料:エイリアン・ベース(ティモシー・グッド)人類文化社・桜桃書房

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