電線に雀が3羽とまった頃

 小松政夫というと「わりいね、わりいね、ワリーネデートリッヒなんちって」とか、「暗いね、暗いね、アイネクライネナハトムジーク」とか、学が有るのか無いのかわからないだじゃれを言っていたのを覚えている。  

 伊東四朗と組んでの親子のコント(親子の関係はどちらもできるらしい)もあった。落ち込んでは「ぼくなんかアルプスに行ってハイジと踊ればいいんだ」といじけ、「ズンズンズンズンズンズンズンズン小松のおーやぶん」と言われると気持ちが高まったりというのもあった。

 一時期タモリと組んで「製材所のモノマネ」もあった。色々な木材、中に釘が入った木材なんかを電動のこぎりで切っていくのだ。最後には永六輔とか竹村健一とか大橋巨泉とかが切られていく。リアリティと「そんなバカな」が混在したおかしさだった。

 このコンビでは「UFOを目撃した人」のモノマネもやっていた。
 前に聞いたバージョンだとタモリがまず「UFO、未確認飛行物体、そのようなものがこの、科学万能の世の中に存在するのだろうか、しかし我々は世界各地でその目撃者の証言を得る事ができた」とか言う。この間、小松政夫は「ツァラトゥストラはかく語りき」の出だしを口で演奏している。
 そしてタモリはインチキ外国語で何かを話す。少し遅れて小松政夫が通訳を始める。「あれは俺が家に帰ろうとした時だった。急に東の空が明るくなるんだ。夜明けには早いなと思っていると、山の向こうにオレンジ色の物体が見えたんだ。ウソなどついていない」。タモリはナレーション役に変わり「ネバダ州に住むガソリンスタンド店員のジョンさんはこう語る」とか言う。
 そこから始めて「インチキ外国語で話す人」と「少し遅れて始まる通訳」を、2人で入れ替わりながらやっていた。2人ともインチキ外国語がうまかった。
 アメリカのネバダのガソリンスタンド店員が山の向こうに見たオレンジ色の光とか、南米のブラジルの谷に降りてくる銀色の物体とか、韓国の空を覆う巨大な黒い物体とか、本来は6カ国ぐらいやるそうであった。

 このタモリの前口上に、「UFOの必要だった理由」があるような気がしている。
 科学の世界では「有るか無いかわからないものは、『無い』に入れて扱う」「証明は『有る』と考える側がやらなければならない」というお約束がある。「未確認」のうちは「無い」と同じだ。
 しかし、「神」ではなく「宇宙人」を持ち出す辺りは精一杯科学に対して譲歩しているともとれる。

 このコンビは全面的肯定でも、真っ向からの否定でもなく、淡々と「報告のモノマネ」をやっていく所が面白かったな。

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