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土匪・匪賊

 掠奪・暴行・放火・誘拐などの不法行為を行う反社会的集団の総称。しかし武力行使に長けているため、戦時には兵として勧誘され、また自発的な軍事行動をとる者も多く、その動向はしばしば社会情勢を左右した。満洲国崩壊後から1945年11月末にかけて、中国共産党(中共)は将兵と幹部計13万人を遼東半島南部・東部に送り込み、匪賊経験者が多い東北抗日聯軍を勧誘し始めた。一方、国民政府は10月から東北接収に取り組んだが、ソ連との交渉不調のため11月には表向き断念した。しかし、裏面では中共との決戦のため、匪賊出身で聯軍指導者でもあった謝文東らを兵力に加えた。
 中共は内戦を戦うかたわら、東北のあらたな解放区でも土地改革を推進したが、これに反発する地主が匪賊を雇って自衛団を組織した。このように、三者が匪賊を兵力として利用したため、国共両党の勢力が及びにくかった現黒龍江省、とくに謝文東の本拠地であった合江地方における匪賊の跋扈は激しかった。中共は内戦や土地改革と併行して徹底的な匪賊掃討戦を行い、国民党や地主への兵力供給源を根絶した。国民党軍に編入された匪賊を除いても、東北全域で8万人近い匪賊が掃討されたといわれる。

[参考文献]
陳埼「東北土匪的剰滅」(蔡少卿主編『民国時期的土匪』所収、中国人民出版社、1993年)
劉信君「抗戦勝利後的形成与国共両党対東北的争奪」「中共創建鞏固的東北根拠地」(劉信君・奮療原主編『中国東北史』六所収、吉林文史出版社、1998年)

—— 二〇世紀満洲歴史事典(澁谷由里)

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