ロリィタを始めて八ヶ月ほど経った。まだまだ初心者の部類に入るわたしだけど、元々考えるのが好きな性格なのもあって近頃はロリィタファッションのことばかり考えている。

最初はただかわいさに惹かれて着始めたこのお洋服は、いつの間にかわたしの思想を受け止めてくれるものになった。所謂「精神ロリィタ」にわたしはなりつつあるのだと思う。
性的な価値がついて回る女性という殻を脱ぎ捨て、永遠の乙女として歩きたい。性欲なんてなくて鬱にもならない絵本の中のお姫様として生きていたい。わたしの中に潜んでいたそんな願いはロリィタを纏い、ロリィタを知ることでどんどん顕在化していった。たった八ヶ月の間に。

今年はわたしにとって思想面で変化の大きい年だったというのも関係していると思うけど、初心者で、ただのかわいいお洋服としてロリィタに憧れた女の子がここまでロリィタの哲学に染まることはちょっと珍しいことなんじゃないかと思ったので、今日はこんなわたしから見た今のロリィタについて語ってみる。

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ロリィタという世界の箱庭っぽさが好きだ。「ただの服」がここまでカルト的環境を生み出している例って他にあるんだろうか。ロリィタを着ているというだけで生まれる一体感。思想とともにお洋服を纏い、ともすれば本来生活を円滑にするためのものである衣服に行動を縛られる。ロリィタでマクドナルドに行くのは少しの背徳感が生じる。

わたしは最初からロリィタの思想に興味を持っていたわけではなくて、ロリィタを着るようになって、他のロリィタさんと交流したり情報を集めたり……と「内側」で動くようになってからロリィタの箱庭的側面を知った。なのにこんなに浸って、今ではそれありきで着ている節すらあるのだから、ロリィタの持つ異常性というか、閉ざされた部分の引力は凄まじいのだと思う。

だからわたしはもっとこの濃密な面が存在感を増してくれたら色んな乙女がロリィタによる救済を受けられるんじゃないかと、そんなどこ目線なのかも分からないことを考えたりもするんだけど、これって多分昨今の多様性ブームと相性が悪いんだろうな。精神ロリィタは悪いもの、怖いものであるという印象が付き纏っている気がする。というか、わたしがロリィタ始めたての頃にそういうのを怖がっていた。

偏ったスタンスをまるでルールかのように掲げて他人に押し付けるのはもちろん良くないことだ。なにしろ偏ってる訳だし、みんながみんなそれに惹かれるわけじゃない。
でもだからと言って息を潜めてしまうのは違うと思う。勿体ない。その偏りに共鳴する人のところにまで届かなければならないとわたしは思う。

最近は、ロリィタもただのかわいい服であり、自由でいいのだという主張が力を帯びている気がする。YouTubeshortなんかで注目を集めているのは、ロリィタあるあるだったりポップにお洋服を紹介した動画だったりする。ロリィタで大口を開けて笑っていい時代が来ている。

これがわたしにはやや引っかかる。いや、間口が広がることはもちろん良いことだと思う。中華ブランドさんのお洋服にBubblesの厚底を合わせたロリィタコーデでデビューしたって糾弾されないコミュニティの方がいいに決まってる。だけどそっちが主流になってしまったら、ロリィタの良さが半減してしまうような気がするのだ。

思想ごと纏える異常さがロリィタファッションの美しさを引き立てている側面があるんじゃないだろうか。ロリィタが好きですと言うだけで、主食はマカロンなの？と揶揄されるのは一種の勲章なのでは無いだろうか。そもそも、集団の中で目立たないことを重視する日本からロリィタという華やかなストリートファッションが生まれたことはもっと注目されることのような気がするし、日本をルーツにしたロリィタが、着ると西洋貴族のような暮らしをしていると想像されるのってひどく倒錯的で魅力的だと思いませんか？わたしは思う。

ポップなコンテンツが充実し、間口は広がりつつある。わたしもロリィタを始めたと友人に話したら、なかなか踏み込んだ感想をもらえたことがある。そもそも華やかなお洋服はSNSで映えるし、シンプルなお洋服を好む子でも娯楽としてロリィタのコンテンツを見ていることがままある世界になっている。

だからこそ、そこから更に踏み込んだ時にロリィタの閉ざされた美しさに浸れるような、そんな正統派のコンテンツがもっと充実しなければならないんだと思う。少なくともわたしはそういったコンテンツをあまり知らない。嶽本野ばらさんの小説くらいだろうか。もっと増えて欲しいな。あと単純にわたしが見たい。

とは言え、わたしもロリィタを掲げながら何かを発信するとなるとついポップな方向に行ってしまう。10月くらいから暇つぶしも兼ねてロリィタのハッシュタグを付けながらTikTokを投稿しているのだけれど、普通にBABY,THE STARS SHINE BRIGHTのお洋服を纏いながら美少女無罪♡パイレーツを踊ってあっかんべーしたりしてる。ポップな方がバズり易いし、投稿しやすいというのもあるんだろうな。

世界観を作り上げることよりも、とりあえず流行りに乗っておく方がはるかに楽だ。難しい。でもせっかく素敵な箱庭を見つけたのだから、インターネットにアップするものくらいはその世界観で窒息しそうな投稿を作りたいなとも最近は思う。加工とかSNSとか、少しずつだけど慣れてきているから。

わたしは有名なインフルエンサーでもないし、こうやってちまちまと思想を垂れ流すことくらいしかできない。だけど願わくば、この素敵なお洋服に救われる乙女が少しでも増えますように…♡