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占ってもらうこと

「占いなんて非科学的だし、バーナム効果とかコールドリーディングとかでもっともらしく見せてるだけでしょ再現性ないし」と思っているそこのあなた、

死ぬわよ。





人はみな。

いや、かくいう私も星占いの類には一切興味がないし、生年月日を入れたら自動的に今年の運勢が出てくるなんてやつも、友達にやらされたことこそあれ、普通に嫌いです。「今日のラッキーカラーは黄色」「5月に運命の出会いがあるかも」? 知るかバーカ。

この不快感はなんなのでしょう。非科学的だから? でも非科学的だからといって、楽しかったり重要だったりすることはありますよね。たとえば自分が現地で応援した日は阪神が勝つと信じることには何の根拠もない、と多かれ少なかれ自覚しながらも主張することには、信じることとは別の、そのように主張すること固有の意味があります。これをうまく言うことは難しいですが、単純なレベルでは自分の応援する気持ちの強さをアピールするための行為かもしれないし、野球チームの応援を通したコミュニティへの帰属意識を強め、その中でのポジションを固めることができるかもしれません。何かを言うことは、事実や真実の表明にとどまらない効果を持つわけですね。だから、こういう面倒くさい主張には、「はいはい」とは思うけど「知るかバーカ」とか「非科学的だ👿」とか(私は)怒らない。

じゃあなんでネットやテレビの占いに「知るかバーカ」と幾分(ほんの少しかもしれないけど)不快な気持ちになるかっていうと、「お前におれの何が分かるわけ?」ってのが真っ先に来るからだと思います。知らん占い師が未来のことから人格のことから、まあまあ誰にでも当てはまりそうなことをしたり顔で決めつけてくるわけですから、コミュニケーションが一方的すぎてムカつくに決まっています。そんなわけで占いなるものと縁遠い生活を送ってきたわたくしですが、ひょんなことからタロットで占ってもらうことに。というのは、タロットをやっている人を見て、こいつはそーいうの(↑)とはだいぶ質が違うわ、と理解したからです。

タロット占い、縦長のカードをぐるぐる混ぜて並べてめくったら過去と未来が分かっちゃう……(わけがあるかよ)みたいなイメージだったわけですが、違いました。別の言い方をすれば、タロット・リーディング。カードを使った「読み」の技法なんですね。出たカードだけを読むのではなく、依頼者の語りや問いがその解釈のベースになります。占いはカウンセリングだ、という言い方がありますが、それはきっとこのような性質を持っているからでしょう。だから当然、カウンセリングと同様、占いの効果は占う人との相性や関係性に大きく依存するし、その関係性自体の理解やコントロールが占い≒カウンセリングという行為には含まれるはずです。

でもタロットの(そしておそらく手相とかそういうのも)面白いところは、カードの出方が、解釈の対象というよりもその媒体になっているということです。前の段落とほとんど正反対のこと(カードを読むためのベースが語り→語りを読む媒体がカード)を言っているわけですが、たぶんタロットは、相手の話についての解釈を述べることが、カードを読むという表向きの行為に託されているのだと思います。それによって、知識や専門性を持った人に一方的に決めつけられたり、直接「そんな男やめときなさいよ」と言われたりするよりもずっと受け入れやすくなるし、占う側にとっても、偶然の配置を介することで依頼者のお悩みに自分が答えるということから少し距離を置き身を守ることができるのだと思うんですね。だから確かにコールドリーディングとかなんかそういうやつ、と言ってしまえばそれまでかもしれないんだけど、いにしえの(?)すぐれたコミュニケーション技法なんだと思うゆえんです。

まあそういうわけで、私はこれまで2回占ってもらいました。1度目は、仕事でめんどくさい作業があって、どうせ終わる時期は同じなんだけど、早めに始めておいた方がいいか、後回しにしてまとめてやった方がいいか、という相談をしました。こういうときは2択のスプレッドってのがあるみたいで、このときに、占いたい内容によってカードの並べ方が何種類もあることを知りました。結果、後回しがおすすめということで、せやな~と思って後回しにし、つつがなく済みました。2回目はもうちょっと深刻な、春からの生活についてです。引っ越すべきか、引っ越すなら場所はどこか、二拠点生活はできるのか、人と一緒に暮らすのはどうか、車で通勤するなら免許が要るが、などなど絶賛お悩み中です。このときは、まずは引っ越すかどうかの二択、そのあとケルト十字スプレッドというかっちょいいやつで引っ越すとしたらどうすればいいかを見てもらい、さらに、免許取ったらどうかも、原因・結果・アドバイスが出る並べ方で占ってもらいました。リーディング結果はかなり面白かったのですが、内緒です。春からどうなるかもまだ分かりません。

さて、リーディングの結果が伝えられ、占う人と占われる人のやりとりはいったんおしまいです。占いもこれで終わったのでしょうか? いや、たぶんまだ終わりではないのだと思います。占ってもらったら、伝えられた結果を改めて噛み砕かなければいけません。ほんとにそうかなぁ、あたしもしかして本当はそう思ってたのかな、考えたことなかったけどやってみようかな、こっちがいいって言われたけどやっぱヤだ!とか。結果起こることや、自分が下す決断は、占ってもらわなかったとしたときと変化したのか、いい方に転んだのかどうか、それは原理的に誰にも分かりません。阪神がどうこう、の話に戻りますが、カードの解釈であれ、チームの勝敗と自分の応援の関連付けであれ、それが言われたということから始まる、その人だけ、そのときだけの役に立ち方があるのです。いずれにしても確実なのは、ちゃんと受け止める準備さえしていれば、自分一人で考えているよりも前に進めるということかな。

リーディングをしてくれた藤井佯さんのアカウントはこちら→@hitohitsuji


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