ホドロフスキーとタロット Chapter 5
ホドロフスキーのタロットスクール
◆ 翻訳 私家版 ◆
ホドロフスキー氏のFacebookで公開されたタロットスクール Chapter 5 (2021.05.10) に日本語訳をつけました。オリジナル情報はこちら。
タロットリーディングのための
小アルカナ初歩
Chapter 5
タロットを読み解く学びは、小アルカナにこそある。それには、まず「タロットとは何か」「そのメッセージは何か」を考えてみなくてはならない。「タロットとは、自分がそこに見ているものそのものである」というのが答えになるだろう。わかりやすく例えれば「タロットは弾の入っていない銃のようなもので、役立たせるには自分で弾をこめる必要がある」ということだ。タロットの各カードには既定の教示内容はない。曖昧模糊たる象徴の集合体であり、そこに意味を見出すのは自分なのだ。
タロットとは「自分のタロット」にほかならない。
エースの性質は「一体性」であり、提示はするが動きはない。よって、リーディングでエースが出る場合、質問者が最も悩んでいることや惹かれていることを明示している(解決はしない)。私のとらえ方では、【剣】が出るとき質問者は「知」に関する関心がある、あるいは問題をかかえているということであり、【杯】であれば情緒的な欠落、未解決の家族問題、自分を愛してくれる人に出会いたいと必死なさまなどを表しているのであり、【杖】であれば性的虐待のこじれや、性的不能や不感症として表れる性欲消滅、【玉】であれば強欲さ、貧困への恐怖心、不治の病、飽食、身体美の欠如感、というようになる。もちろんこれは各人とその時に応じたもので、社会についてという場合には答えは違ってくる。たとえば【杖】ならストライキを指すのかもしれないし、【剣】なら革命、等々といった具合だ。
40枚の数札
小アルカナ40枚は、シンボルの多様な解釈を教えてくれる。各組は1から10の数で構成されている。
1
1は、完全な長方形(2つの正方形を合わせたもの)によって示され、凝縮された一体性を表す。これがカードのベースになっている。
上の正方形は天の区画、下の正方形は地の区画、そして真ん中が人間だ。
(この意味は、どう読み解くかで変化する。精神、肉体、魂になることもあれば、父親、母親、子供たち、あるいは男性的なもの、女性的なもの、両性的なものになることもあるなど様々だ)
一体性に内在する多様性
【玉】のエース、【杖】のエース、【杯】のエース、そして【剣】のエース。これら4つの一体性(ユニット)には、2から10までの多様性が内包されている。
この長方形の中には、正方形2つがペアになったものが4段あり、2から9までの数が配置される。
10という数は、ゼロを引き受け自らをこの一体性と同一とみなす(10、100、1000など、ゼロによって1は無限に豊かになる)。もちろん、すべてを含む長方形である「1」は、静寂、闇、平和、虚、神などともできる。
その「2」という数(1+1であり、累積を本質とする2つの単位)には、基本ペアとして、白黒、善悪、真偽などがある。この分離は、相反するものでもあり、また補い合うものでもある。
数のペア
10の数には、偶数と奇数からなる4つの基本ペア、2-3、4-5、6-7、8-9がある。
【剣】では、2-3は1つの円を描き、4-5は2つの円を描いている。
次いで、6-7で3重の円になり、8-9で4重の円になったところに10が加わりペアからトリオになる。つまり、10は9に統合されている。9は、3、5、7と同様に奇数(割り切れない数)でありながら、3で割り切れる。
【杖】も同様だが、こちらは外側から内側に向かう円ではなく、内側から外側に向かってX(交差)を描く。
このように、10の数が互いにどう関係しているかが、タロットの基本になっていることを認識しておかねばならない。
4つのエース
一体性が4つのエースに分かれるのはなぜか? 答えとしては、基本となる数が1、2、3、4であること、そこに10個の数、つまり無限の数が含まれているから、ということかもしれない。(1+2+3+4=10)
前章では、4枚のエースを説明して文字としてはカードのどこにも書かれていない意味を示した。
まず、能動性のカード【剣】と【杖】(まわりにスパークがあり、手で捌かれる)、受容性のカード【杯】と【玉】(動きがない)の違いを明らかにしておく必要がある。
【杖】のエースは完全な能動性を表すいっぽう、【剣】のエースは王冠の中に納められていることから全面的に能動ではない。 また、【杯】のエースは完全な受動性を表すのに対し、【玉】は小さくまとまり貨幣として使用されるようになっているものの、緑色で始まる芽吹きがあり能動性がある(【杖】に変容する可能性をもつ)。
一見、生物的なものは【杖】のエースだけのように見える。
しかし【剣】のエースには、剣を持つ手のほかに2本の枝を生やした王冠が示されている。1本の枝は滑らかな葉で(空間だろうか?)、もう1本の枝には9個の緑色の実が生っている(緑は生命または時間の象徴だろうか?)。
また【杯】のエースでは、柱の下から植物のように見える空色のものが3つ伸びている(突起の数は4、7、5)ほか、持ち手のところに黄色い葉(葉先の数は5)が描かれている。
赤色で塗られた半円は、聖杯の血だろうか。6本の柱の間にはひときわ高い7本目の柱があり、そこには9つの点が描かれている、これは聖なるエニアグラムだろうか。これに限らず他の多くのことについて、自分の親しんでいる文化に照らして、あるいは無意識が告げる方法によって、自分で説明してみる必要がある。それは血か、ワインなのか、ため込んだ怒りか、愛に満ちた状態か。自分で意味づけしてみることだ。
エースの意味
エースは何を意味するのか?
自己愛(ナルシシズム)に気をつけよ。自我(エゴ)に打ち克て。
各組の意味
「思考するあたま」、「情動のこころ」、「欲望する性」、「生存欲求のからだ」をメタファーとして考えたうえで、わたしは次のように定義づけた。
【剣】は知のエネルギー
【杯】は情動のエネルギー
【杖】は性のエネルギー
【玉】は身体的な力
最終的に、人間は「ことば」「感情」「欲望」「生存欲求」からできているという考えに至った。これはわたしの考えで、タロットが言っていることではない。数多くの手がかりから得た結論だが、ほかにもさまざまな言い方ができる。
たとえば、【剣】は風、【杯】は水、【杖】は火、【玉】は地。
あるいは、【剣】は北、【杖】は南、【杯】は東、【玉】は西。
【杖】は男性性、【杯】は女性性、【剣】は同性愛(男)、【玉】は同性愛(女)。
【剣】はエルフ、【杯】は妖精、【杖】はサラマンダー、【玉】はノーム、等々。
そこは自分で意味づけしていかねばならない。タロットからは、決して客観的意味は得られない。どのように読み解いても、必ず自分の主観が表れてくる。
各カードに自分なりの主観的価値解釈を置いてみると、それらの図像を自らの根幹(スピリット)の一部として取り入れていくうちに、同胞に対する理解が深まっていく。自分の批判的態度が、徐々に良心を種まくような言動に変化していくだろう。
次のように、真摯な言葉で肯定的な態度をとるのがよい。
「わたしの知っていることから言えばこうですが、間違っているかもしれません」
「わたしが知っているのはごく一部で、ものごとの意味を完全に知っているわけではありません」
「アドバイスはしません。いくつか可能性を示すなかから、あなた自身よいと思うものを選んでください」
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