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カミーノでは、いろいろな人(生)に出会う

カミーノを1人で歩いていると、いろんな人(生)に出会います。道はどこまでも続くし、時間ならたっぷりあるので、互いの人生やそこから生まれた哲学などを大いに語り合うことができます。これがたまらなく面白い。出会って初っ端にそんな話になることもあれば、何度も顔を合わせているけど、5回目ぐらいでようやく“And…what’s your name?”からはじまり、人生の話に至ることもあります。

今回は、最近出会った印象深い方たちを紹介したいと思います。(※記憶ベースなので多少曖昧なところがあるのと、はじめから記事にするつもりでメモとかとって聞いているわけではないため、なんというか読みにくいです…!それでも書き残しておきたい。)

◾️Mr. L(60代) from Holland

・はじめてのカミーノ
・大手ケミカル企業に長年勤め、現在は引退して地域のボランティア活動に精力的に取り組んでいる。
・会社のため家族のために、真面目に精力的に、日々コツコツと働いてきた。
・40歳を超えたあたりから、化学薬品の地球に与える影響について深刻に考え始め、自社やその発展に務める自分自身のあり方に疑問を抱き始める
・そんなとき、ビーガンレストランを立ち上げた社会起業家の女性がテレビで特集されているのをみて、直感的に彼女に会いたいと思う
・奥さんの助けもあって、その方とのアポが実現する
・自身の考えを彼女に話した上で、会社勤めを続けるべきか、辞めて社会起業家になるべきか、相談する(正直、後者の後押しをしてもらいにいったようなもの)。
・すると、彼女の答えに衝撃がはしる。

「これからの時代、大企業にはあなたみたいな人が必ず必要になる。だから、今の会社に残って、そこで、あなただからできることをしなさい。」

・会社に戻った彼は、上(役員)にも下(部下)にも魂から働きかける。

・様々な試行錯誤の結果、自社に対して、10個のプリンシパルを提案する。

1. Do the Right Things
2. Follow the Laws
3. Create the Values

(10個ぜんぶ教えてくれたけど、あと7個忘れちゃった)

・これが全社に浸透し、やがてオランダ全体にも広がっていった(すごい…!)。

・ある日、社長からヨーロッパを旅する気はないかと聞かれ、なんの話かと聞いたところ、ぜひ10個のプリンシパルをヨーロッパ各国とアメリカ各州に講演してまわってほしいとのこと。

・「やります」と即答。

勇気をもって、やってみることが大事だという。それがたとえ等身大の自分では一見できなさそうなことであっても。

・小話で、彼はダッチが第一言語であり、続いて、英語、ドイツ語の3カ国語を話すことができるが、ドイツ語での講演は決して受けなかったという。なぜなら、ドイツ人は文法にうるさく、間違った文法で話される講演を嫌うから、とのこと。一方で、英語ネイティブは、たとえ文法がめちゃくちゃであっても、中身がしっかりあれば講演を聴いてくれる。そんな感覚があったので、慣れない英語での講演も引き受けたという。(日本語でも似たようなことありそうだな〜)
・欧米ツアー後、本も出版したらしい。(タイトル聞いたけど、オランダ語だった…)
・わたしが疲れ切っていると、「Make comfortしてあげよう」と、ビッグハグをくれる、とっても温かでキュートなおじいちゃん。


◾️Ms.A(50代)from Canada

・はじめてのカミーノ
・ハイスクールティーチャーを25年間やってきた。
・カナダは州によって教育システムが異なるそう
・彼女の州では、ハイスクールは22歳まで通えるらしい
・なので、彼女は高校生と大人を対象に教えた、と言ってた
・大人というのは、イラクやシリアからのRefugeeのこと
・彼らは、第一言語すらままならない
これまでほぼ一切の教育を受けてきていない
・カナダでは、難民を受け入れているし(彼女曰く、カナダには土地が余っているから受け入れるのだそう寛大。というか、すごいシンプルな考え方。)、シティズンシップさえあれば、パブリック教育はほぼ無料。
・彼女はそんな大人向けの教育のカリキュラムをつくったとのこと。(政府もだれもそんなの考えてなかったから自分でつくったらしい。たくましい。かっこいい。)
・どうやって彼らとコミュニケーションとったの?という質問への彼女の回答。

You know,目線をあわせて、にっこり笑って、安心させるところからよ彼らはとても怯えているから。少しずつ、ソーシャルスキルを。そして、ゆっくりとアルファベットからはじめるの。」

・モンテッソーリ教育に興味があるという会話からスタートして、アジアと欧米の子供の違い(アジアと欧米の教育システムの違い)から(今回は長くなるから省いたけど、この議論もおもしろかった!)、彼女のGreat Jobの話まで、素晴らしいコーヒーブレイクでした。

あとから思い返すと、彼女とは早朝のアップヒルでも一瞬話していて、「それで、あなたのDream Jobはなに?」ってさらっと聞かれた。それにさらっと答えた自分にもすごいびっくりしたんだけど。その話は別の機会に言語化しよう。


◾️Mr.J (50代) from Florida

・3度目のカミーノ
・IBMに長年勤める(ファイナンスに関するテクニカルなことを担当していたそう)
・4年前に早期退職し(させられて)、1度目のカミーノへ。
・帰国すると、奥さんから「あなたがいない間とても楽しかったわ」と言われ離婚することに。
・職もワイフも一度に失い、でも生活はシンプルに。
・なぜならカミーノで、騒がしい思考が静かになる瞬間があり、自分自身にとって何が本当に重要なのかを捉え直せたから。
カミーノ中にバックパック1つが全人生だったわけで、家に帰ってから信じられないぐらいに断捨離してシンプルライフに。
・結果、地域のボランティア活動に精力的に取り組んだり(2022のパラリンピック?がフロリダのディズニーワールド内で開催されるらしく、そのスタッフをやるのだという)、奥さんとも毎日おしゃべりするし、子供達との旅行も一緒にいくし、離婚してからの方が仲良しに。(離婚後、歩いて3分のところに引っ越したとのこと)
・収入なしでも一生暮らせるだけの資金は稼いだとのこと。(さすがIBM…!)
・22歳の娘が上海の大学を卒業し、一緒に日本旅行に行って、いまはPeace Corp?の活動でモロッコに。
・娘は、入国して2時間と経たないうちに、バックパックごと盗まれ一文無しに
・それを聞いた彼は、ブルゴスからクレカとATMのキャッシュカードと手元にあった現金をDHLでモロッコの彼女のもとへ郵送したらしい(ちゃんと届いてますように…!)。
・自分は、別で持ってきていたエクストラカードを使おうとしたら、長年使っていなかったために、ナンバーを忘れて使えず。
・その話をアメリカ出身のカミーノの友人に話すと、その場で400€くれたらしい。(リッチだからくれたんだって…!
・さらに、地元フロリダのリッチな友人に話すと、1000€を郵送してくれたらしい。(そんなことある…?)
・で、キャッシュを手にした瞬間、カードのナンバーを思い出したんだと。
・だから、いまキャッシュリッチなんだと言って、笑いながら私の分のランチ代も払ってくれた。

「お金って、、自分でもってなくてもいいのか…!」ってなんか変な方向で妙に納得してしまった。「私、ちょっとお金足りないんだ」とか言えば、その場で300€ぐらいくれたんじゃないかな。たぶん。


思いがけない4人目の登場

まさにこの記事を書いている最中に、まさかの4人目が現れました。

北西に進みます

アルベルゲの人の少ない静かなリビングで、突如鳴り響いた聞き馴染みのある音声。隣の机でGoogleマップを見ていたおじいちゃんに、思わず「日本人だったんですね」と声をかけてしまったのが、すべての引き金に…


◾️Mr.? (60代後半〜70代後半)From Kyoto

・はじめてのカミーノ
半年前に(!)ワルシャワから(!)巡礼スタート
・ポーランドからスイス、スイスからバレンシア、バレンシアからログローニョに入って、このCamino Fraces(フランス人の道)に入ったとのこと。

今年はね、むちゃくちゃさぶいねん

「うんうん、寒いでs…」

東ヨーロッパね

(あ、スペインの話じゃなかった…)

「ポーランドにもね、カミーノがあんのよ。でもホステルは街だけ。田舎にはホステルどころか、隅っこに小っちゃいキヨスクが一個だけ。冷蔵庫もあるにはあるんやけど、ジュースとかは入ってないねん。冷やしたい人は勝手に入れて冷やしといて、みたいな感じや。 

(な、なるほど。)

ビールだけは入ってるんやけども。ほんで、街のホステルなんか8000、9000円するから、そんなん歩いて移動してんのにあほらしくて払えるわけないやろ。せやから、テント背負って、ここまで…」

やばい、これワルシャワからの半年間の旅路が、今ここですべてお披露目されるのでは、、

この道がメインかもしれんけど、この道にはほんまにがっかりやで。景色も代わり映えないし、人も多すぎやし、トゥーリズムやでほんまに。トゥーリストばっかりや。ごにょごにょ…」

ちょっと嫌になってきちゃったけど、でも待てよ。いまちょうどモモ読んでるし、私も聞き役に徹してみよう。彼の本当の声はなんだろう。

あんた20代やろ

「はi…」

あんたなんかまだ霞にもなってへんような1972年、わしは初めてヨーロッパに来たんや。シベリア鉄道に乗って。で、ドイツで3年働いて、ごにょごにょ…」
だから、サンティアゴに行って終わりではなくて、カナダいくねん。ごにょごにょ…

「だから」はどこから繋がっているんだろう、、

日本とヨーロッパの1番の違いは、自然との共存。こっちでは、鳩も雀も犬もすごい人と距離近いやろ。日本では、人間だけ我が物顔や。虫も鳥も動物もどんどん遠ざけて。都会には人が押し寄せ、田舎には老人ばっかり。そんでもって不幸なことに日本には地震がある。外人はみんな日本すごいって褒めよるけど、50年かそこらで、地震によらず家つぶして産業廃棄物にしよるし、それと比べてこっちの人らは300年とか500年前の家に暮らし続けてる。こっちの普通の人らのがよっぽどすごいわ。…パブでも政治の議論がそこらで…安倍首相がイラン行きよった時は…ごにょごにょ…」
「…かといって、わしが日本に帰ってなにかできることがあるかっていうと、大してないんやけども。一個やろっかなって思ってるんは、お遍路のアップダウンとアルベルゲのリストアップを冊子にまとめて、コピーして、スタート地点に置こうと思うねん。(外国人向けにね。めっちゃいいじゃん!)こっちで歩いてても、みんなお遍路のこと知ってるからな。ちょっとは役に立つんちゃうかな。まあ、結果的に骨折り損かもしらんけど、とにかくつくるん楽しそうやなあと思って。がっはっはー。

ああ、もうそれが一番大事。最高だよ。なんかよくわかんないけど、相槌すら打たせない、このおしゃべりが朝まで続いたらどうしようってちょっと不安だったけど、結果的に、おっちゃんのこと好きになってきたよ。素敵な話をどうもありがとう。


おわりに

その人が何に「時間」をつかってきたのか。その積み重ねがその人の生人生になるんだなあ。

明日もBuen Camino!





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