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319【暦を楽しむ】

2024年3月20日は春分の日。日本人は、二十四節気として、立春から大寒まで、季節を感じ、和歌を詠んできました。この風習を風化させてはもったいない。二十四節気とともに、それに関連した私の好きな和歌を紹介します。

立春(2/4頃)「袖ひぢてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ」紀貫之
雨水(2/19頃)「今行きて聞くものにもが明日香川春雨降りてたぎつ瀬の音を」作者未詳
啓蟄(3/6頃)「我が畳三重の河原の礒の裏にかくしもがもと鳴くかはづかも」伊保麻呂
春分(3/21頃)「呉竹にねぐらあらそふ村雀それのみ友と聞くぞさびしき」二条院讃岐
清明(4/5頃)「燕来る時になりぬと雁がねは国偲びつつ雲隠り鳴く」大伴家持
穀雨(4/20頃)「水を多み高田に種蒔き稗を多み選らえし業ぞ我がひとり寝る」作者未詳
立夏(5/6頃)「春過ぎて夏来るらし白栲の衣干したり天の香具山」持統天皇
小満(5/21頃)「たらちねの母が養ふ蚕の繭隠りいぶせくもあるか妹に逢はずして」未詳
芒種(6/6頃)「高円の野辺の容花面影に見えつつ妹は忘れかねつも」大伴家持
夏至(6/21頃)「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ」清原深養父
小暑(7/7頃)「かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更けにける」大伴家持
大暑(7/23頃)「大滝を過ぎて夏身に近くして清き川瀬を見るがさやけさ」兵部川原
立秋(8/8頃)「秋風の吹きにし日よりいつしかと我が待ち恋ひし君ぞ来ませる」山上憶良
処暑(8/23頃)「月見れば千々にものこそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど」大江千里
白露(9/8頃)「白露に風の吹きしく秋の野はつらぬき留めぬ玉ぞ散りける」文屋朝康
秋分(9/23頃)「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ」文屋康秀
寒露(10/8頃)「水のおもに照る月なみをかぞふれば今宵ぞ秋の最中なりける」源順
霜降(10/23頃)「葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕へは大和し思ほゆ」志貴皇子
立冬(11/7頃)「木の葉散 秋も暮れにし片岡のさびしき森に冬は来にけり」源実朝
小雪(11/22頃)「田子の浦ゆうち出でて見れば真白にそ富士の高嶺に雪は降りける」山部赤人
大雪(12/7頃)「わが里に大雪降れり大原の古りにし里に降らまくは後」天武天皇
冬至(12/22頃)「朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里にふれる白雪」坂上是則
小寒(1/5頃)「宇治間山朝風寒し旅にして衣貸すべき妹もあらなくに」長屋王
大寒(1/20頃)「夜を寒み朝戸を開き出で見れば庭もはだらにみ雪降りたり」作者未詳

情景を詠んだものだったり、情景と恋を関連付けたものだったり、季節と気持ちの移り変わりを詠んでいたり。三十一文字の中に、無限の想像力を感じます。暦を楽しむ習慣を続けたいです。そして、子どもたちに伝えたい。すぐれた文学作品、古典に親しむことは、あなたの言葉をより美しくします。


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