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316【コロナウイルスには石けんや洗剤はなぜ有効なのか?】

ウィルスに負けないように、手洗いとアルコール消毒が推奨されています。アルコール消毒については、手がカサカサになることもあり、子どもたちも大人も神経質なほどに行います。しかし、手洗い・うがいについては、さっさと済ませてしまっている方が多いようです。実際に、どのような効果があるのかを知ることで、意識も変わってきますし、正しい手洗いを行うことは、感染症の予防にもつながります。

 まず、手洗いについて。洗うことでウィルスが流されているわけではありません。コロナウィルスも、インフルエンザウイルスも、生物ではないので、石鹸や洗剤で洗うことで、不活化されます。ウィルスは石鹸などによって感染力を失い、増殖も不可能になり、急速に分解されてしまいます。洗って流されるというのとはわけが違います。

 一般の生物の場合、DNAが自分を複製するための遺伝情報を持っていますが、ウィルスの場合にはRNAが遺伝情報を持っていて、それによってウィルス自身が複製されます。DNAは強い放射線で破壊されるのに対し、RNAは剥き出しにされると死んでしまいます。ウィルスは、エンベロープというタンパク質がRNAを保護しているのですが、石鹸や洗剤によって膜タンパク質(脂質二重層)が流されてしまうことにより、結果としてRNAが不活化され、死んでしまいます。

 石鹸や洗剤などの界面活性剤は、台所用洗剤、洗濯石鹸、ボディ―ソープ、シャンプー、そして手洗い用石鹸など、身の回りの極めて広い範囲で使われています。これらがコロナウィルスを殺してくれます。ただし、正しい使い方をしなければ、せっかくの薬も効果がありません。簡単な目安としては、泡立てられる濃度なら有効ということです。泡が出来るということは、単分子膜を生成するだけの十分な分子があるということになり、エンベロープを攪乱するのに十分という目安になります。時間は20秒以上、丁寧に泡立ててから、水で流すといいです。すぐに水で流そうとする人がいますが、20秒以上も水に手を浸すのは、思っているより苦行です。しっかりと泡立てて後、水で泡を洗い流しましょう。

 では、アルコール消毒の効果はどの程度でしょうか。実は、アルコールとして用いられているのは、エタノール。消毒用ですと70%程度のもので、コロナウィルスに直接かけると、ウィルスの親水基とエタノールが作用し、不活化させます。70%程度の濃度では、30秒程度で失活するようで、かなり高濃度が必要です。利点は、使用したあと、すぐに蒸発するので、すすぎの必要がないだけで、石鹸より消毒の効果が大きいというものではありません。どちらも、十分な効果を持っています。しかし、アルコール消毒も、ノロウィルスには、効果がありませんので、注意が必要です。

 こうして効果を科学的に考えてみると、成分として界面活性剤が入っているものや、エタノール濃度2~70%程度のものでなければ、十分な対策にはなりません。にもかかわらず、コロナウィルスに便乗し、焼カリや発酵乳酸を成分としたり、単に除菌剤、抗菌剤とした根拠の疑わしい製品が次々と大手企業から販売されています。混乱に乗じたニセものには、十分注意しましょう。そして、手洗いだけではなく、マスクをつける、十分な休息と栄養と適度な運動も、対策として、しっかり取り組みましょう。


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