92「詩」遠い記憶
セピア色にほのかに明るんだ丸い空間の中にある
遠い記憶に
蒼くのびたツタの先端が届くと
するすると遠い記憶はツタを伝って滑り落ちてくる
そうだったのだ
騙されていたのだ
利用されていたのだ
悪意をこめられていたのだ
今
遠い記憶の裏に気づく
気づいたところで何の怒りもない
そのまま地面に滑り落ちていく
忘れていた記憶が地面いっぱいに溜まって
地面に深く食い込んだツタの根っこを潤していく
葉脈を伝って
心の深いところにある優しいものに届くまで
高く高く昇っていく
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