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どうしても「過去」が輝かしく見えてしまう。それでも私たちは。_映画「クレヨンしんちゃん モーレツ!オトナ帝国の逆襲」を観て

映画 クレヨンしんちゃん モーレツ! オトナ帝国の逆襲を見た。

オトナたちが口を揃えて言う。オトナ帝国は名作だと。
しかし私にとってこの作品は、幼少期に一度見た微かな記憶だけがある。ただそれだけだった。

今、この作品を見て、その理由がわかった気がする。
オトナたちが、これを名作だという理由が。

人は誰しも過去を懐かしみ、思い出に浸りたくなる。
先の見えない不確定な未来より、暖かくて、輝かしくて、眩しい過去を尊く思えてしまう。新しいことに怯え、過去に縋り、今までのものが自分にとって最高だ、これ以上のものはないと蓋をして、殻の中に閉じこもってしまう。

大人になった今だからわかる、あの世界の尊さ、依存性。

「あの頃はよかった。」

齢19の若造でも、そんな言葉をすぐ口に出してしまう。
私にとってのあの頃とは、妖怪ウォッチが流行り、みんなで恋ダンスを踊り、3DSを片手に公園で集まって、本当の友達だとか、村にいるどうぶつのお友達だとかと、たわいもない会話をして。とある日にはゲームが一番多くある友達の家に集まって、マリオパーティーだ、Wiiパーティーだと、みんなで横一列に並んでテレビの中のすごろくに必死になって。そんなこんなで、遊び尽くして、1日が終わる。そんな頃の話。

もっともっと大人の人々からしたら、そんなのまだまあ最近の話じゃんなんて思うかもしれないけれど、私はこの、「あの頃」がモーレツに恋しくなるのだ。

今、平成博なんてものをされたら私はヒロシやみさえのように、取り憑かれtれしまうのだろうか。

毎日、嵐が活動していた頃はだとか、Aぇ! groupが六人のままだったらとか、あの頃はよかった、だけど今は、と過去に縋っている私は、彼らと同じなのだろうか。

この映画を見て、自分が懐かしい匂いを探して、現代を彷徨っていることを痛感させられる。人は誰しも「あの頃」を思い出して、戻りたくなる、でもしんのすけは違う。しんのすけたちは違うのだ。

あの子たちにとって、「あの頃」はない。
「これから」しかない。

後ろなんて振り向かず、ただ前だけを見て、これからの未来に胸を膨らませ毎日を謳歌している、私たちが羨望の目を向ける「あの頃」に彼らは立っている。

つまりは、私自身も先を行く人々にとっての「あの頃」に立っているのだ。

未来を見ろ、将来のことを考えろ、これから先のことを と口酸っぱく言われることが多い世の中で私たちが見るべきは、「今」なのではないだろうか。

過去がどれだけ愛おしくても、未来がどれだけ不安でも、私たちが生きられるのは今この時だけなのだから。

今この時を、大切に、大事に生きて、それが過去となり暖かくて優しいものになるのだから。私たちがやるべきことは、今をしっかりと見つめ、生きることなのではないだろうか。

「あの頃」が愛おしく思える日のために、今を、そしてこれから訪れる今を、一生懸命生きようと思わせてくれる作品だった。


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