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ドーナツの穴に、動物が挟まっていた。

お土産でもらって一番嬉しいものは、ずっと気になっていたけれど自分では買うまではいかないものだったりする。

たまに見かける動物挟まりドーナツは、まさにそれだった。東京旅行に行った際に、東京在住の友人が手土産として持たせてくれたもので、幼い頃にサンリオの『にゃんにゃんにゃんこ』にハマった人間からすると、夢にまでみたキャラクターの実体化に喜びが隠しきれない。

見た目の愛くるしさを堪能し、次に食べる工程に進むわけだが、まず穴のなかにいる動物を助け出して先に食べるのか、それとも最後に食べるのかの選択がある。三つ目の選択として、なにも気にせずそのままかぶりつく選択もあるが、遊び心がないような気がするので却下した。

選択肢をくれる食べ物は、どうしてこうも心をときめかせてくれるのか。私の努力次第で、おいしい食べ物をさらにおいしくできる可能性を秘めていると思うと、俄然やる気がでる。

いろいろと手を尽くしたい気持ちはあるが、お腹はへるので3分以内に考えたい。コーヒーにしようか、紅茶にしようかという飲み物問題もあるし。食に対するこだわりが強すぎる自分にうんざりしてしまう。

空腹に耐え切れずに味見としてガブリと一口食べると、さっぱりした優しい甘みにしっとりした食感の生地と甘いチョコレートがマッチして、想像以上においしくて感動した。

だめだ、欲望のエンジンがかかってしまう。本能をむき出しにして、一口また一口。手が口にドーナツを運ぶ機械のように往復を繰り返す。

ハッ...。理性を取り戻すころには、手元に半分以上食べたドーナツが残っているだけだった。動物はとっくに穴から解放されて、かろうじて穴の上に乗っている状態。
食へのこだわりは、空腹の前に屈服したのだ。

いったん動物を取り出して手近な場所に置く。ぐあっと大きく口を開いて残りのドーナツをがぶがぶと食べると、最後に残った動物をじっと観察して、ポイっと口に入れた。目を閉じて味を堪能してから、コーヒーを飲む。じわじわと心身ともに満たされていく。

どんなに手を尽くそうと胃に収まればすべて一緒なのだけど、ああだこうだと言いながらおいしい食べ物を嗜む時間に、私は生きている喜びを強く噛みしめるのだ。