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眠れない夜の処方箋 円やかスプモーニ

「あの…まだ、やってますか?」

「いらっしゃい!

うちは初めて?

朝まで開けてるからゆっくりしていきなよ。メニューはないからさ、適当に飲みたいもんを言ってくれたら出すから」

久しぶりにひとりで外出したのに、行きたい場所も思いつかなくて、さ迷ってた私が辿り着いたのは、朝まで営業しているBARだ。

店主が日替わりでその日によって店の雰囲気やメニューが変わるらしい。

今夜の担当は20代後半位の爽やかな雰囲気の男性だ。

カウンターには、数人の男女が座り顔見知りなのか談笑している。

私はカウンターの隅に腰を下ろし、落ち着く事にした。

何を頼もうか?

店主がシェイカーを振っているのを眺めてスプモーニを注文してみる事にした。

「スプモーニをお願いします!」

「了解!円やかと刺激的なのとどっちが好み?」

「円やかでお願い出来ますか?」

「任せておいてよ!君の好みにピッタリなのをつくるからね!」

さっきまで爽やかな空気を醸し出していた店主が急にチャラけた雰囲気を全開にして、バチッとウインクしてきたので店内は一気に笑いの渦に巻き込まれた。

カウンターの右端に座っている常連らしい女性がマスターは若い女性に優しいからなぁとつぶやくとまた周りが笑いに包まれた。

何だか居心地がいいなぁ…

初めてな気がしない。

そう思いながらスプモーニを作る店主を眺めている。

ここにはまた来てしまいそうだな…

私はさっきまでの淋しいやるせない気持ちがいつの間にか、解れているのを感じていた。

夜は…

まだ始まったばかりだから、今夜はここでゆっくり過ごそう。

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