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眠れない夜の処方箋 深夜のカフェにて

今晩は!

いらっしゃいませ

はじめましてかな?

あっ…

今日はね。

残念ながらイケメンのマスターじゃないのよ!

ごめんね。

まぁ、そこに座って何か飲んでいってね。

明日ならイケメンのマスター来る予定になってるからね。

ごめんね。

もしかして、お腹空いてる?

何か作ろうか?

えっ?

ダイエットしてるの?

駄目よ!

あなた痩せてるからね。

食べないと駄目だからね。

おにぎり作るから、食べていきなさいよ。

大丈夫よ?

小さいヤツにするから…

お腹が空いてると眠れないのよ?

味噌汁も一緒にね。

温かい物をお腹に入れるとね。

気持ちも落ち着いて眠たくなるのよ?

残してもいいから、食べられるだけ食べてね。

ゆっくり食べればいいからね?

◇◇◇◇◇◇

最近、不眠症を克服したと言っていた友人が通っているカフェに来て見たのだけれど…

イケメンのマスターではなく、優しい雰囲気の女性が迎えてくれた。

私の顔を見て何故か、お腹が空いていると思ったらしく

小さなおにぎりを2つと温かい味噌汁を作ってくれたのだ。

久しぶりに固形物を体内に入れるのが恐くて少しずつおにぎりを食べ始める。

女性店主は、そんな私の心をほぐすように面白おかしく、自分の家族の話をしてくれた。

彼女の話を聞きながら、ゆっくりと噛みしめていたおにぎりは味噌汁と共にいつの間にか、お腹の中に姿を消していた。

残さずに食べる事が出来た。

良かった…

そう思った次の瞬間に…

私の目から大量の涙が溢れ出した。

どうにも止める事が出来なくて思いきり泣いてしまった。

初めて来た店で泣いてしまうなんて…

そんな事を考えていると、また涙が出てきた。

私って…

本当どうしようもない…

うつむいたまま荷物をまとめ会計をし、出て行こうとしたら女性店主が声をかけてきた。

「そんな顔で帰せないわ。

もう一回座らない?

温かいお茶を入れるからね?」

私はその言葉に救われたように、もう一度カウンターのスツールに腰を下ろした。

「お湯が沸くまで、冷たいおしぼりで目元を冷やしたらいいわよ。

そのままだと、目が腫れて大変よ?」

彼女の言葉に慌ててバッグの中から手鏡を出して自分の顔を確認してみると…

瞼が腫れてきているのが分かった。

慌てておしぼりで目元を冷やしていると、店主が良い香りのする焙じ茶を出してくれた。

丁度良い温かさのお茶をゆっくりと飲んでいると、色んな事が頭に浮かんで消えた。

お茶を飲み終わる頃には頭の中がスッキリしたように感じられた。

さぁ、もう帰らないと…

慌てて席を立つ私に店主が言った言葉は私の心に優しく染み込んでいった。

店主が私に告げた言葉とは…

涙を流す事に罪悪感を覚えなくていいのよ?

勝手に出たんだから出したいだけ出せばいいの?

途中で止めなくていいの。

泣くのもストレス解消なんだからね。

という言葉でした。

これまで辛い時でも、涙を見せないようにしてきた自分の涙腺を崩壊させるには十分な言葉でした。

辛い時はまたこの店に泣きに来ようと思い、今度こそ本当に店から出る事にしました。

思いっきり泣いたせいか、心の中は快晴になったようです。

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