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トート・タロットの構造

The Structure of Thoth Tarot

マルセイユ版タロット(以下 “TdM” と表記します)やライダー・ウェイト・スミスタロット( こちらも以下 ”RWS”と表記)と同様に、トート・タロットも大アルカナ22枚と小アルカナ56枚の合計78枚で構成されていますが、トート・タロットにおいては【カードの名称の違い】というのが、まずは何よりも大きな特徴かもしれません。

大アルカナは「アテュ」と呼ばれることもありますし、小アルカナを「スモールカード」と呼んだりもします。

また、クロウリーによるコートカードの「改名」は、結果的にそれが従来の名称の「入れ替え」となってしまったためにかなりの混乱を引き起こした、ということもあるでしょう。

各タロットそれぞれのカードや、スート、コートカードの名称を比較した表を作ってみました。もちろん微妙で複雑な違いの全てを網羅することはできませんが、参考にしていただけたらと思います。

タロット・大アルカナの名称比較

トート・タロットの大アルカナにおける I. The Magus(魔導師 | 魔術師) VIII. Adjustment(調整 | 正義) XI. Lust (欲望 | 力) XⅣ. Art (技 | 節制) XX. The Aeon(アイオーン | 審判) XXI. The Universe(宇宙 | 世界)といったカードは、他のカードの中でも特にクロウリーの魔術的な旅を反映していて、それゆえ絵柄も非常に独特なものになっているように感じられます。

小アルカナのスート・コートカード名称比較

先に少し触れたように、トート・タロットのコートカードはその名称に大きな特徴があります。

代表的なTdM や RWS においては、King ∙ Queen ∙ Knight ∙ Page という呼び方に親しみを感じることが多いと思うのですが、トート・タロットでは Knight ∙ Queen ∙ Prince ∙ Princess のように男女比2:2の形に配置し直されました。これはトート・タロットの小アルカナのスートが、世界を構成する4元素 🜂 火 ∙ 🜄 水 ∙ 🜁 風 ∙ 🜃 地 に対応するとともに、この4元素がテトラグラマトン、つまり【神の名を表わす神聖4文字】−【Y】Yod「父」∙【H】He Primal「母」∙【V】Vau「息子」∙【H】He Final「娘」とも対応することから加えられた変更でしょう。

これら YodHeVauHe は、生命の樹の4つのセフィラ 2 Chokma ∙ 3 Binah ∙ 6 Tiphareth ∙ 10 Malkuth と、カバラの世界観である創造の4世界とも対応しており、その構造は体系的で規則正しく整然としていて、とても美しいものに感じられます。

YHVHと生命の樹・セフィラの対応


また、コートカードの「描かれ方」についても少し触れておきたいと思います。

TdM やRWS では KingとQueen は玉座にゆったりと腰を下ろし、Knight は馬に跨って目的地を目指し、そして Page は大地にすっくと立っている、という姿で表現されますが、トート・タロットにおいては、Knight は【Y】Yod「父」であり「始まりの力」であって、その勢いや生命力を示すかのように立派な馬に跨っています。

Queen は【H】He Primal「母」であり、Knight によって解き放たれた「始まりの力」に「形を与える者」として、豊かな土壌を用意します。それはまさに胎内であり、大きな包み込むような愛で種を育て成長させます。

Prince【V】Vau は Knight と Queen の「息子」であり、父と母の相反する力(火と水)を「受け継ぐ者」として、葛藤やプレッシャーと常に戦いながら目的(真の意志)のために戦車を走らせます。

Princess【H】He Final は Knight と Queen の「娘」であり、4番目の聖なる文字として Yod「父」とHe Primal「母」とVau「息子」との再会を望む者、つまり3つの力を「統合する者」です。彼らが再会を果たした時、そこには神聖なる名前 YHVH が現れ、王国は建国されるのです。
彼女の肉体は物質世界を生きる私たちに最も近いと言われています。

こうしてカードの構造を眺めたときに、コートカードというのは Page からKingへと向かう成長・成熟の過程を描いたもの、と捉えることもできますが、カバラの創造の4世界に住む父、母、彼らの愛によって生まれた息子、娘が、最終的にひと所で再会するまで延々と再生される物語、と捉えることによって、私にとっては「腑に落ちた」ということがありました。ひとつの世界から次の世界へと進むサイクルの更新の鍵を握っている者こそ、最後の He である Princess たち、つまり私たち「人間」なのだと思うのです。

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次からは小アルカナのことをもう少し掘り下げて、

*デーカンと小アルカナ
* コートカード

という項目に分けて記録してみたいと思っています。
このように細分化することによって、トート・タロットにおける小アルカナの世界がより鮮やかに見えてくると思うからです。しかしながら、それぞれの要素が複雑に絡み合っているため、もしかしたら内容が行ったり来たりしてしまうかもしれませんが、できる限り整理しながら書いていきたいと思いますので、もしご興味ありましたらどうぞお付き合いください。

この作業を通して、私自身が今まで気が付かなかった、カードの新たな「表情」に出会えることを期待したいと思います。