見出し画像

「マリー・ローランサン ― 時代をうつす眼」のためアーティゾン美術館で過ごす休日

もう2月。年が明けて1ヶ月経ったが、やっと今年最初の展覧会訪問となった。今回は、アーティゾン美術館で昨年12月から開催中のマリー・ローランサン展へ。
いろんな面で超感動した展覧会だった。

全体的な感想

90点くらいの作品数だったのだが、かなり密度のある展示だったのでめいっぱい時間を使った。

肉感がなく、しなやかな女性たち。表情や色の混ざり合い、サーカスや舞台に関連して女優たちを描いたものは仕草にもどこか含みがあって。優雅さやちょっぴりの妖艶さを感じる。

また、物書きとしても活動していた彼女が、文学者たちとの交流を通して独自路線を開拓したという解説はとても納得感があった。

それにしても、ローランサンとフランシス・プーランクも、バレエを通して繋がっていたとは知らなかった。
芸術という大きな枠組みのなかで異なる分野の表現者同士が理解し合い、商業面でもさらに進化するのが興味深い。

心踊る『椿姫』の部屋

第2章のテーマである文学との関連は非常におもしろかったが、なかでも心奪われたのは『椿姫』コーナー。『椿姫』の原作大好きなので、推し同士がコラボしたかのような気分に。

展示室内には独立した小部屋のようなステキ空間がいくつかあったが、そのうちのひとつがぜーーーんぶ『椿姫』の挿絵で埋め尽くされている!

神展示の入口

特に、なんだこの素晴らしい対比は...。

左)椿姫 第7図  右)椿姫 第8図

マルグリットの劇場での姿と、アルマンと共にパリ郊外で暮らしている姿だろうか。豊かな表情がこんなに心に刺さることがあるか???

左(第7図)のマルグリットが持つ花は「白」。一方で右(第8図)では「赤」の花を身につけている。
マルグリットのトレードマークである椿の花束は、色がいわゆる「のれん」的な意味を持つ。彼女がこの場面で赤の花を用いると考えると、もう感動を禁じ得ない(この後の展開を思い起こせば一層込み上げるものがある)。

この小部屋のおかげで私はもうローランサンの虜になってしまって、先の展示に進んでは何回も戻る...。不審者さながらのムーブをかましてしまった。

「最先端の美術館」の熱量

東京へ来て8年も経つのに、実はアーティゾン美術館には初訪問!
全体的に、「石橋財団凄すぎる」という感想をもった。
休日の特別感を保証してくれる感覚がありがたく、この一日でファンになったと言っても過言ではない。

というのも、昨今は話題になる展覧会で治安の悪化を感じることが多かったので、訪問日をかなり選んでいた。公共性の高い美術館や博物館ではある程度は仕方ないと思いつつも、混みすぎて思ったように没入できずに正直がっかりすることも。
コロナ禍で爆誕した「日時指定」という素晴らしいシステムは、いったいどこへ消えてしまったのか...。

アーティゾン美術館はまだ日時指定システムが残っているうえ、建築、設備、ピクトグラム...。「最先端の美術館」を掲げるだけある洗練された施設。そしてなにより、スタッフの方々の接遇が本当に素晴らしい!最初から最後まで気持ちよく滞在できた。

美術館のパンフレットに記載のあるコンセプトからは、並々ならぬ熱量を感じる。関わる人全員がこれに共感しているんだろうなと思えるくらい良い時間だった。

ゆったりとひとりの時間を楽しみたい人には、アーティゾン美術館本当におすすめです。
当分は画集を眺めて余韻を楽しむ予定。

この記事が参加している募集

今週の振り返り

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?