最近、彼女が夢の中に出てくる。 その夢では、私と彼女が勿忘草のような花が咲き乱れていた。 内容は忘れたが、何か約束を交わしているようだった。 私の顔はどうか分からないが、夢の中の彼女はどの勿忘草よりも綺麗で、どれよりも暖かいお日様のような声で私を呼んでくれた。 それだけは夢から覚めても、覚えていた。 絶対に忘れたくなかった。 人というのは亡くなった人を声から忘れていくらしい。 そんなことを誰かから聞いた。 最初聞いたときは、 「そんな馬鹿な。彼女の声なんて覚えていられ
私の好きな人には、好きな人がいた。 彼の周りを明るくさせるような陽気さが好きだった。 彼は面白いことが好きで、何回も笑わされた。 彼と話していると、毎日が楽しかった。 いつの間にか彼を好きになってた。 でも、彼にとって私はただの友達でしかないんだと思う。 彼には好きな人がいるから。 LINEで話しているとき、彼から "好きな人がいるんだ" って来てしまった。 返信しようとした手が止まった。 頭の中は混乱してうまく動いてくれなかった。 やっと、彼に"相手は誰なの?"
私は小さい頃からピンクが好きだった。 きっかけは思い出せないけど、物心ついた頃から私の身の回りはピンクで囲まれていた。 "女の子の色"の象徴であるかのようなピンク。 服やバッグ、ベッドの色でさえ揃えると自分も女の子の端くれなんかではなく、生粋の女の子になれている気がした。 お母さんだってピンクが好きだし、ピンクをまとっているといつも、 「可愛いね。」 って褒めてくれる。 褒めてくれると、ピンクで揃えるっての甲斐があったと思う。 だから、私はピンクが好きなんだと思う。
僕は、小学四年生の時に病気にかかって以来、ずっと病院から出られたことがなかった。 ぼくは、おかあさんに 「これからでかけようか。」 って言われたから、ついていったらそこは病院だった。 あれよあれよというまにぼくとおかあさんは先生と向かい合っていた。 ぼくの病気はお医者さんいわく、 "治すのが難しい"らしい。 そんなことを丸くてくるくるまわるいす で遊びながらぼんやりと聞いてた。 名前は分からなかった。 だけど、分からなくて顔がくしゃくしゃになってたぼくのために、先
僕はこれからの人生、好きになるのも女の子なんだと思ってた。 だけど、実際に僕の好きな人は男の子だった。 同性に恋をするとこんなにも苦しい。 そんなこと、彼と出会うまで微塵も分からなかった。 でも彼がいなかったら、好きな人への焦がれた気持ちは、一生分からなかったと思う。 初めて会ったのは、高校の入学式だった。 彼は僕の最初のとなりの席の人だった。 顔を見た時の印象は、 "綺麗な人だなぁ"だった。 彼は彫刻の世界から出てきたような人で、本当はこの世界の人間じゃないのかと
「空を飛んでみたい。」 って親に言ったら、 「なに馬鹿げたこと言ってんの。」 呆れられた。こっちは本気なのに。 親は諦めて先生に言ってみたら、 「そんな空想より現実的な進路にしなさい。」 何か違う。聞きたいのは説教なんかじゃない。 私は上空から街を、もしくは星をこの目で鳥みたいな翼を得て、見てみたいのだ。 「それなら宇宙飛行士を目指すのはどうだ。」 先生の中で一番仲の良い校長先生の言葉だった。 「宇宙飛行士であれば人工的な翼だけど、街も見れるし、地球の全体も分かる
彼に想いを伝えるにはどうしたら良いんだろう。 誰もいない教室で、私は頭を悩ませていた。 これは、私の片想いである。 私と彼は最初、インスタで出会い、同じ高校にいることを知った。 そこから、何回も話すようになって、結構仲良くなれたと思う。 同じクラスにもなり、今まで以上に話すようになった。 その間に、私は彼のことが好きになっていた。 それからの毎日、私は授業中彼の席の方を見ることが多くなった。 何回も彼とのインスタでの会話を見返すようになった。 恋をすると女の子はさら
「はぁ…。まだ連絡来ないのかなぁ。」 これでため息は何回目かなぁ。 好きな人からの連絡ってなんでこんなにドキドキするんだろう。 誰かこのテーマで論文だしてないかなぁ。 そう思うほどの難儀なことだと思う。 これはあくまでも私の片想いであって、両想いなんかじゃない。 相手の気持ちが透けて見えてたら楽なのに…。 そう何度思ったことか! でも、現実はそんな都合良くない。 分かってるんだけど、たらればは仕方ない…よ、ね…スヤァ。 「おはよー…?」 何この頭の上にある文字。彼は見
俺は、今トラックに跳ねられ中に浮いている最中だ。転生系の漫画によくあるパターンだ。 そういう漫画の主人公は何かを買った帰りが定番だろう。俺もそうだ。 そして、その漫画の世界に行けるのも転生系の醍醐味とも言える。 死んでしまうのは名残惜しいが、来世はこの漫画の世界に行けると思うと少し楽しみだ。 そう考えるうちに、俺の体は地面に打ち付けられ、瞼も重くなっていった。 瞼を開けると、そこはどこか暗い場所だった。 なるほど。この漫画の始まりは生まれるところというのか……素晴らし
本当はやりたいことがあった。 友達と放課後遊んでみたかった。 カラオケとか、お洒落なカフェとかで雑談したりしてみたかった。 でも、私の親はさせてくれなかった。 習い事も週のほとんど入れられたから、誘ってもらったとしても断るしかなかった。 苦痛だった。