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マジパン思い出話 エクストラ④~「新メンバー」から「新」がとれるまで~

 ここまで歴史年表的にマジカル・パンチラインの歩みを振り返ってきましたが、最後に各メンバーそれぞれの変化と成長についてまとめてみることにしましょう。
 先日沖口さんは「これまで『新メンバー』と言ってきたけれど、もう『新』は必要ない、それぐらいみんなマジパンに思いを持ってくれている」と語っていました。まずは、2021年に加入したその三人から。


宇佐美空来の三年間

 宇佐美空来さんの第一印象は――とにかくたくさんあります(笑)ウクレレ少女で、卓越した歌唱力を持っていて、エンターテイナーで、元気いっぱいの最年少で、スタイル抜群で。
 とてつもなくすごい子だ、というのはまちがいない。反面(前に書いた通り)「果たしてアイドルなのだろうか」という不安はありました。
 宇佐美さんのこの三年間の変化は、そんな不安を覆し「とてもすごい子」から「とてもすごいアイドル」になったこと、と言えるのではないでしょうか。
 最初の変化は、前髪を作ったことでした。髪質のせいで前髪が作れない、と言っていたのが、いい美容室で前髪を作ることができたときの本人の感動ツイートをよく覚えています。これでぐっと可愛らしくなりました。高めのポニーテールやツインテールなどの髪型も増え、身長も伸びてさらにスタイルはよくなり、メイクやファッションも大いに成長しました。
 しかし、個人的にもっとも成長したと感じているのは、ライブ中の表情です。初期の宇佐美さんは、とにかく歌に必死で、それはそれで可愛らしいのですが、カメコ泣かせでもありました。僕が変わったなと思ったのは、2023年4月からの定期公演ごろです。これまでとちがい「写真に撮られる表情」をきちんと意識しているということが、ファインダー越しにも伝わってきました。

2021.10.30 ハロウィンツアー@渋谷Duo
2023.4.8 定期公演@AKIBAカルチャーズ劇場

 それともう一点、彼女が大きく成長したのが、実は「歌」であると思っています。
 いやいや最初っから上手かったじゃないか、と思われるでしょう。それはその通り。音程がとれていて、声量もある。なによりすごいのは「ピッチがおっそろしく正確であること」でした(これはたぶん、ウクレレをやっていた影響ではないかと思います)。落ちサビや歌い出しなどで、入りがズレることがまずありません。
 すごく、上手い。しかし――あまり比べるものではないと断りつつ――前任の歌姫、小山リーナには及ばない。いったいなにが劣っているのか。
 それは、表現力です。
 「渚のサーフライダー」「ぱーりないと!!」といった明るく楽しい曲は、まったく見劣りしません。しかし「今日がまだ蒼くても」はやはり、なにか足りない。
 素直でまっすぐな歌声は、彼女の大きな魅力です。しかし、どんな曲も素直に、正確にしか歌えない。それが、彼女の(すごく高いレベルを求めたうえでの、と断っておきます)欠点でした。
 ですがそれが最近、大きく変化しているのです。正確過ぎるピッチをあえて崩し、エモーショナルな感情を歌声に乗せるようになりました。はじめにそれに気づいたのは、2023年ハロウィンツアーの大阪公演での「もう一度」でした。
 宇佐美空来は、誰もが認めるグループナンバーワンの歌姫です。普通なら、その座に胡坐をかき、慢心してしまってもおかしくない。しかし彼女は、それをよしとしなかった。ナンバーワンのさらに上を目指して、変化を恐れず、前に進んでいる。これ以上ないぐらい歌が上手い彼女は、これからまだもっと歌が上手くなっていく。いえ「上手い」という表現は適切ではないですね。きっと「すごいシンガー」になっていくでしょう。
 アイドルだから、最年少だから、そういうバイアス抜きに、一人間として、彼女の表現者としてのひたむきな向上心を、心からリスペクトしています。
 ただ、そういう変化や成長がありつつも、「素直で可愛いしょらちゃん」であることは変わりません。変わらない素直さこそ、アイドルとしての彼女の一番の魅力なのかもしれません。

山本花奈の三年間

 山本花奈の魅力ってなんだろうな、ということをたまに考えます。
 笑顔がとても愛らしくて、ときどき(しょっちゅう?)挙動不審で、ライブではいつも全力で、黙っていればとても美人で。
 でも、そういう言葉ではとらえきれていないような気がします。なんとなく。
 先日の18歳のときに宇佐美さんと歌った「ハルイロ」は、本当にいいパフォーマンスでした。以前から「ハルイロ」は音域があっていることもあって山本さんの歌声が生きると思っていましたが、あのアコースティックヴァージョンの「ハルイロ」は、宇佐美さんを向こうに回してまったく見劣りしませんでした。
 歌が上手くなった。それはそう。でも、印象に残っているのは「まったく緊張しなかった」という益田さんとは対照的に「すごく緊張した」と口にする姿でした。
 元気で明るい陽性の人ですが、実はそれとは反対に、ネガティブで心配性、気に病みがちなところもあるんだろうな、と思います。泣いたり笑ったり素直な宇佐美さん、鉄の女・益田さんとの大きなちがいでしょう。
 たぶん、一人で練習しているとき、とてもネガティブな気持ちになったのだろうと想像します。自分はダメだとか、本番で失敗するかもとか、そういうことをきっと考えたのでしょう。
 しかし、強い気持ちでそういう自分を乗り越え、ステージに立つ。それこそ、彼女の魅力なのではないでしょうか。まさに、根性少女、というキャッチフレーズそのままの。真摯でひたむきな、頑張り屋です。
 ものすごく個人的な話で恐縮ですが、性格的に「めんどくさい子」を推しがちです。明るいだけではない、キャラが立っているだけでもない。迷って、悩んで、落ち込んで、それでも健気に頑張る子。時にはいじけることもあって、一筋縄ではいかない子。果たして褒めているのかと言われそうですが(汗)山本花奈を推すことになったのは、今から思えば必然だったのでしょう。
 しかし、そんな彼女の魅力が最初から出ていたかといえば、そうではありませんでした。元ハコイリムスメ、という看板は、アドバンテージである反面、マイナスに働いたところもあったように思います。
 正直、ハコイリムスメ時代の彼女を見たことがないのでなんとも言えませんが、少なくともマジパン加入初期はその呪縛にとらわれていた気がします。本人だけでなく、ファン側も。ハコイリムスメらしい、大人しくて真面目な子なのかな、と思っていたのは僕だけではないでしょう。
 しかし彼女は、あっという間にその魅力を発散させていきました。なにも取り繕わなくていい、その人そのままの魅力を発揮させてあげる。それが、マジパンのよさですから(後述しますが、益田さんもまさにそのケースでしょう)。
 ステージ上での動きは誰よりも大きく、表情も誰よりも豊かです。それこそ、マジパン内どころかアイドル界ナンバーワンと言いたくなるほど。別のファンの方がツイートしていた言葉でとても印象に残っているのが「顔で踊っている」というワード。まさに、その通り。
 でも、個人的に彼女の美点でもっとも素敵だなと感じているのは、とことん「人が好き」なところです。彼女は、メンバーも、スタッフも、ファンも、家族も、ショッピングモールのイベントで通りかかった家族連れも、みんな大好き。溢れんばかりのたくさんの愛を持っている人。それが、山本花奈ではないでしょうか。
 愛が大きすぎて、思わず心から溢れ出してしまったような無垢な笑顔。きっとこれからもその「表情筋」で、たくさんの人々を魅了してくれるにちがいありません。

益田珠希の三年間

 益田珠希さんが、ことビジュアルにおいては広いアイドル界でも屈指の逸材であることには誰も異論はないでしょう。それはオーディション時から際立っていました。「すごい子が来たぞ」とみんな言っていたものです。
 整った顔立ちと小顔、抜群のスタイル。まるでお人形のようでした。しかし「お人形」でしかなかった、とも言えます。もちろん、彼女は感情のないお人形ではありません。しかし、それがうまく表に出ていたとは言えません。
 彼女の三年間での変化と成長は「お人形」から、お人形のようなビジュアルはそのままに「人間」へと変わっていったこと、ではないでしょうか。
 初期の彼女は「クール」とよく言われていました。笑顔が少なく、表情の変化に乏しく、MCでも常に受け身で前に出ることはありません。そう評されるのも仕方がないでしょう。
 しかし――先日の生誕祭で彼女自身が口にしたように――マジカル・パンチラインという「居場所」で彼女は、ゆっくりとその性格を表に現わしていくようになります。
 時折見せるへの字目で「あれ、こんなキュートな表情をする子なんだ」と気づかされます。ぽろっと吐く毒舌で「あ、意外とこんなこと言う子なんだ」と知ります。バスケ部育ちの体育会系で、実はとても負けず嫌いであることも分かっていきます。ワンマンライブでのピアノ演奏で、沖口さんの口から「珍しく珠希が『悔しい』という感情を露わにした」と明かされます。

 この投稿が、とても印象に残っています。たぶん彼女は、不器用なんだと思います。自分を表に出すのが苦手――少なくとも過去形で――だった、のでしょう。
 山本花奈のように一瞬で弾けたわけではありません。しかし、少しずつほどけていくとともに、少しずつ彼女へと恋に落ちる人、好感を抱く人が増えていきました。
 また、彼女がとても成長した点として、歌を挙げないわけにはいきません。ファーストライブのとき、もっとも歌に不安を感じたのは彼女でした。か細く頼りなく、この先大丈夫なんだろうかと不安に思いました。
 しかし今では、誰も彼女の歌を「頼りない」なんて思いません。19歳の生誕イベントのソロで披露した「カブトムシ」の歌声のなんと力強かったことか。その特徴的な声質は、特に「渚のサーフライダー」や「くっりっすっまっす」等でのセリフパートにおいて、マジパンの大きな武器になっています。負けず嫌いの彼女ですから、表に出すことはありませんが、きっと裏では大変な努力があったでしょう。努力している姿すら見せたがらない負けず嫌い、ですから。
 そしてもうひとつ、はじめっから卓抜したビジュアルを持っていた益田さんが、三年間で特に成長したのもやはり、ビジュアルなのです。
 正直に言うと、マジパン加入時、とびきりの美人ではあるがメイクが少々大人っぽすぎてアイドルらしくないな、と思っていました。しかしそこから彼女は、どんどん可愛らしさを身につけていきました。ライブ中の表情も、どんどんよくなっていきました。
 その決定打は、2023年2月のライブで披露された「ボブ珠希」でしょう。いやあ、あの衝撃はヤバかった。益田推しではないのに、カメラが勝手に益田さんばかり追いかけるのです。今ではすっかり、ボブキャラが定着しました。
 初期はあんなに硬かった彼女が、今では居心地よさそうにへらへらと笑ってくれること。ファンとしてそれが、一番の喜びです。


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