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平間至写真展「PHOTO♡SONGS」とVivienne Westwoodインタビュー



NO MUSIC, NO LIFE.

渋谷ヒカリエ9階で開催中の、平間至写真展「写真のうた~PHOTO♡SONGS」を拝見した。
正直なところ、平間至さんについては、TOWER RECORDのポスターの写真を撮ったり、ミュージシャンを撮るのが得意な人、という程度の認識で、作品集をじっくり拝見したり、その人物像などに触れる機会が今までなかったのだが、今回じっくり拝見してみて、気付けば今までボクが影響を受けてきた雑誌「Rockin’on Japan」やら「CUT」やらの何気ないミュージシャンの写真、そして、ボクの思春期90年代から今まで、何気なく見てきたCDジャケットの多くを平間至さんが撮っていらっしゃったのだな、と。

平間至さんが携わった雑誌、写真集の数々
平間至さんが携わったCDジャケットの数々

とにかく、音楽が好きな人、写真が好きな人、是非観て欲しい。
ボクの貧困な語彙力で「ステキだった」「かっこよかった」「音楽が聞こえてきそうな写真だった」等々の感想を述べるだけでは全く足りない、そして、今まで何気なく見てきたグラビアや、CDジャケットの写真を「1枚の写真」としてじっくり拝見すると、ポートレート写真を撮っている者として、ブチのめされるくらいの圧倒的パワーを持った写真なのだ。
見る人、写っているミュージシャン、そして撮っている平間至さんのすべてに、「楽しさ」が溢れて、伝わってくる、何度見ても飽きない写真なのである。

もちろん、全てが平間さんの力によるものではなく、写っているアーティストのみなさんのパワーや、先日亡くなった偉大なアートプロデューサー信藤三雄さんとのコラボ作品であったり、雑誌であれば、渋谷陽一さんや山崎洋一郎さんなどの編集者の力も大いにあったのだと思うが、それにしても、90年代の音楽が、CDが輝いていた時代を体感してきたボクとしては、そのパワーを「写真」という形にした平間至さんは、とにかくスゴイ!!

それに、その写真が撮られた時のエピソードや、平間さんのミュージシャンの最高の表情を引き出す演出方法など、写真1枚1枚の種明かし的なエピソードが、また本当に面白い!そのミュージシャンの人柄も何となく知っていると、平間さんが如何に場の空気を瞬間的に捉え、その人に最適な演出をして、最高の瞬間を引き出したのか?
写真の見方として、非常に楽しむことができたし、平間さんは正に天才的だと思った。

写真のパワーを感じる、とにかく楽しい写真展なので、みなさま是非ご覧になっていただきたい!

interview Vivienne Westwood

少し本筋からずれてしまうのだが、平間至さんの写真展を拝見して、驚いたのが、1990年に発行されたフリーペーパー「DICTIONARY」013号に掲載されて、ボクが大いに影響を受けたヴィヴィアン・ウエストウッドのインタビュー記事の写真が、平間至さんが独立した後のほぼ初仕事だったということ。

簡単に説明しておくと、1988年に岡山県出身の音楽プロデューサー桑原茂一さんが創刊した、伝説のフリーペーパー「DICTIONARY」
ボクが最初に手にしたのは、TOWER RECORDだったか、当時、岡山天満屋に新規OPENした、ポール・スミスのブランドショップだっただろうか・・・
親交があったミュージシャンへのインタビューや、あっと驚く、当時新進気鋭のアーティストやグラフィックデザイナーなどによる、斬新なページデザイン、そして何といってもこんなカッコイイ冊子が「無料」!!という驚き!!
多感な思春期を迎えたボクに、ビン!ビン!に影響を与えられたのだった。

ちょうど、時を同じくして、ヴィヴィアンが提唱したパンクファッションが、少し遅れてSEX PISTOLSやTHE CLASHの音楽と共に、ストリートスタイルのファッションとして流行し始めていた。
地方都市岡山としては、非常に早熟だった、友人のヤスくんの影響もあって、中学3年にして初めて「クラブ」に行き、DJ文化に触れた。

DJ文化としては、HIPHOP文化のブルックリンボーイいわゆる「Bボーイ」スタイルが「カッコイイ」とされていたのだが、ボクは、「クラブ」は好きではあるけれども、何となく「Bボーイ」スタイルには違和感を感じていた。

そんな時に、友人の家でフリーペーパー「DICTIONARY」のバックナンバーを漁っているときにであったのが、この、Vivienne Westwoodへのインタビュー記事であった。

パンク・ロックっていうのは、ロックンロールがこれまでやってきた他のどんなことよりも大変重要な意味があるんです、実験としてはね。

パンク・ロックは、ロックンロールという器を使って、一体どんなことが出来るかを試すことができました。

DICTIONARY interview Vivienne Westwood

制度をひっくり返すことのできる唯一のものは知性だけっていうことなの。今は、“絶えざる消去と、五分ごとの快楽”の時代。それゆえ、若いコたちには何の知性も教養もありません。
(中略)
古代ギリシアは、アナーキー状態と暴君政治の間を、揺れ動いたけれども、そこにはきっと何かきらめくものがあったはず。現代社会は安定を手に入れました。だけど、そのかわり、本当の知性っていうものは全く失われてしまったと思う。

DICTIONARY interview Vivienne Westwood

とりあえず、若いコたちは手始めとして、雑誌を読まないこと、テレビを見ないこと、ここから始めて欲しい。読んでよかったって思える本に出会えるのは本当に幸運なことなんだから。いいアドバイスができなくて悪いけど。今世紀もあと少しだけど、私たちは、目の前にあるものを信じることをやめて、過去に目を向けなければならない。知性の源は、そこにしかないんだから。先ず、アート・ギャラリーに行って、本をたくさん読んで、自分たちがどれだけ、今のメディアに悪影響を及ぼされているかっていうことを知ること。楽しいからって自分たちがどれほど考えることをサボってたか知ること。私だって、そうだった。でも、少なくとも私は、最近、そのことに気が付いた。それともう一つ。アメリカ文化が諸悪の根源だっていうこと。

DICTIONARY interview Vivienne Westwood

ヴィヴィアン・ウエストウッドは、さらにBボーイについて、バッサリ切り捨てた言い方をしている。

しかし、誤解しないでほしいが、ボクとしては、そこまで言い切るほどアメリカ文化は嫌いではないし、現代の文化芸術を語る時、アメリカ文化を抜きにしては語ることはできないし、アメリカ文化の多様性は、十把一絡げにして、一言で語れるようなものではないことは理解している。
しかし、ボクにとって、当時「おしゃれ」「かっこいい」とされた、「アメカジ」や「Bボーイ」のアメリカンスタイルが、どうも好みではなかったのだ。・・・その根底を探ると、また長くなるので今回は語らないが。
そんなボクにとって、このヴィヴィアン・ウエストウッドの言葉は、「おしゃれ」「カッコイイ」の価値観に決定的な一撃を与えてくれた!!

いや、違うな。恐らく元々、ボクの幼少時から培われてきた素地となる考え方をこのヴィヴィアン・ウエストウッドの言葉が言語化してくれたと言った方がいいかもしれない。

もちろん、ボクの回転が非常に悪く、容量の少ない脳みそでは、扱える「知性」なんて、ヴィヴィアンのモノに比べれば、ホントちっぽけなものなんだけれども、迷ったときに、古典に立ち返ったり、アメリカ的なものじゃない何かを追い求めたり、そのことは、この後のボクの生き方、考え方に大いに影響を与えられたと言える。

そういえば、大学に入ってすぐ、ボクはこのヴィヴィアン・ウエストウッドの言葉をモチーフとして、情報の氾濫に溺れていく現代人をテーマとして、廃棄されたテレビを並べて、そこに流れ込む人間を象ったインスタレーションを制作したのだが、残念ながら、写真が残っていない。

今回、平間至さんの展示を拝見して、この年齢になって再び「DICTIONARY」のVivienne Westwoodインタビューを読むことになったのは、非常に大きな、何かの縁を感じる。

今こそ迷いなく、Vivienne Westwoodの言葉をもう一度かみしめて、改めて今後の生き方と今後の作品を考えていきたいと思う。


ムーニーカネトシは、写真を撮っています!
日々考えたことを元にして、「ムーニー劇場」という作品を制作しておりますので、ご興味ございましたらこちらをご覧ください!

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