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マルペンサ国際空港

2018年8月某日、私はイタリア・ミラノにいた。カナダから帰国時にヨーロッパに立寄ったのである。逆回りにはなるが日本からヨーロッパに行くよりカナダから行く方がよっぽど便利だった。あと、世界一周したって言いたかった。

約20日間の一人旅。ロンドン→パリ→ローマ→フィレンツェ→ミラノ の順で回った。この旅は思い出深く、テムズ川のほとりでビールを飲みながら号泣(カナダ人彼氏とここから遠距離スタートしたため)、ムーランルージュに行ったものの高過ぎてチケット買えず、声をかけられたすぐ横の安っぽいストリップバーで別に上手くもないストリップを2時間ほど鑑賞(レズのダンサーにステージ上げられめっちゃキスされた)、そのストリップバーでポン引きしているセルジオというおじいさんと仲良くなりワインを一緒に飲んだり(写真はセルジオとこの日宿で出会った友達)

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バチカンでツアー料金ボラれた後、世界最小の国(=バチカン)で迷子になりツアーグループ見失う、ウフィツィ美術館では目当ての絵を見そこね逆走していると警備員に捕まった。正直、最後の方は1人で旅することに疲れ、適当ハッピー野郎なイタリア人にイライラし、すぐにでも帰国したかった。

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適当すぎるで思いだした。ローマパスとかいう、市内をお得に観光できて公共交通機関も使えるパスを駅構内の観光案内に買いに行った。窓口はザ・イタリアンな中年男性。一人旅中の私はとても気が強い。パスの説明で不明瞭な部分を突っ込みまくるし、質問もたくさんする。するとイタリアンが私の質問を遮り言う、「ちょっと待って、今から全部説明するから僕の話を聞いて」なんでやねん、お前が私の質問を聞けよまず。ちょっと我慢して聞いたが、やはり私の聞きたい答えは返ってこない。私のターンにすかさず質問をぶつける。イタリアンのターンでまた答えをかわされる!「こ、こいつ、、、話が通じない」結局、「困ったことがあったらいつでも電話してこい」って電話番号を渡された。今困っとんねん。結局最期まで私の話は聞いてくれなかった。ちなみに、イタリア滞在中にそこかしこのイタリアーノからめっちゃ電話番号渡された。さすがイタリア人。

フィレンツェからミラノには鉄道で移動したのだが、向かい合わせの席に座ったハイカラなお婆さんが私と彼女の間にある机をバシバシ叩くのでそちらを見ると、こちらを見ながらドヤ顔で窓の外を指差していた。どうやら “強めの雨が降っているぞ” のジェスチャーのようだった。ありがたいが私も雨が振っていることはわかっている。イタリア語は全く分からないので、“YEEES!”と大きめのリアクションをとり、読みかけの本に目を落とした。すると5分くらい後にまたおばさんが強めの雨が振っていることを教えてくれた。ちなみに雨が止むまで定期的に教えてくれた。

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ミラノではAIRBNBの宿を予約していた。ミラノ市内のマンションの一部屋だった。ピンポンしたらおすぎとピーコにそっくりなおじいさんが出てきた。出会った瞬間に激烈なハグとキスで迎えられた。家の中はまあそれは豪邸。でっかい絵画にソファー、私の部屋は小さいもののバスルーム付き、飲み物も自由に飲んでねとコーラを渡される。この人の名前もセルジオ。いろんな国でAIRBNB利用してきたが、ここの家がダントツに良かった。値段もお手頃、奥さんと娘が2人いるのだが全員めちゃくちゃ親切だった。セルジオ宅には三日間滞在、超親切で地図を拡げてミラノのおすすめを教えてくれた。二日目には家族のディナーに混ぜてもらった。彼は以前工業用ゴムの会社を営んでいたらしい、他にもカーレースで優勝したこともあり彼が載っている本を見せられた。あと、おじいさんとムッソリーニが知り合いで、、、等々なんだか浮世離れしたおじいさんだった。最終日、セルジオは不在だったもののハートがいっぱいの置手紙が残されていた。あと夏の時期の空港は混むから、早めに空港に行きなさいと何度も念を押された。

セルジオの忠告通りマルペンサ空港には2時間前に到着した。荷物を預け、チェックインも済ませ、お土産用にパルミジャーノレッジャーノを買い、優雅に昼食のパスタを頂いていた。なんだ余裕じゃない、と思いながら出国審査に向かう。目を疑った。そこにはUSJジュラシックパーク並の長蛇の列。。。飛行機が発つまで約1時間、やばい。とりあえず列に並ぶ。人々のイライラがこちらまで伝わってくる。15分経っても1ターン目クリアならず。この計算だと確実に間に合わない。しかし飛行機の時間が迫っているのは皆同じ。そこらかしこから ”あと10分で搭乗ゲートが閉まるんだ!!!” 等々怒号が聞こえる。すると後ろから数名の若い男女が列を擦り抜けて走ってくる。”ごめん、ごめん、時間がないんだ!” 手にはアメリカのパスポート。すると私より前に並んでいたインド人家族がブチギレる ”ここにいる全員時間が無いが皆並んで待っているんだ!!!!!抜かすな!!!!” アメリカ人が言い返す ”本当に時間が無いんだ!飛行機に乗り遅れたらお前のせいだからな!!” 一触即発の雰囲気。前に並んでいるウクライナ人が声を荒げる ”セキュリティ!!!!!” イタリア人のセキュリティは ”僕らに出来ることは何もないよ” の一点張り。セキュリティの意味。そこで後ろに並んでいる日本人に声を掛けられる。”あの、同じ飛行機ですよね?乗れなかったら次の飛行機抑えないとダメですね~” ああ、冷静に話しが出来て次の解決策まで考えている。。。日本人すばらしい。やっとの思いであと少しのところまできたが、ここですでに搭乗時間はかなり過ぎており出発時間まであと15分となっていた。セキュリティに話をする”あの、あと15分で出発でかなりやばいんですけど、どうにかなりませんか?” セキュリティが言う。”あなたから彼らに頼むしかないわ” いや、それお前の仕事やん。半ばあきらめムードで出国ゲートに呼ばれる。なんと、出国審査官は審査官同士で談笑しながら、こっちのことも大して見ず、ゆーっくりとハンコを押す。いや、この列見えてますか?めちゃめちゃ揉めてますやん。急げよ。ハンコを貰って急いでゲートに向かう。ギリギリ間に合った、というか何なら同じ飛行機でまだ並んでる人もかなりいたようで出発自体が遅れていたのだった。

ただ、海外で”日本は素晴らしい国だ、みんな礼儀正しいし全て時間通り!” と言われたときに、ふと疑問を感じることがある。なんだか日本人を、まったく違う生き物として見られている気分になるのだ。もちろん日本人だってそれを誇りに思っているし、それが出来ない外国人を白い目で見たりする。幼いころから皆で一緒に、規律を守り、清く正しく美しく。でも、私達だってイタリア人と同じ人間だ。たまには彼らみたいにゆるーく働いて、昼からワインのみながら、適当に生きたくもなる。多少の遅延なんてどうでもいいし、たまには声を荒げて自己主張して、仕事なんてほっぽって鼻くそほじりながらぜーんぶやめたくなることだってあるんだ。だけど社会がそうはさせない。だから声に出さないだけで色んなことを我慢しながら生きてるんだ。この旅でイタリア人にはものすごくイライラしたけど、結局そのくらい適当で自由に生きた方が人生楽なのかな、と思う。

マルペンサ空港を無事出発し、その後関西国際空港に到着した私は、にこやかで腰が低く、私の質問に対してものすごく丁寧に返してくれる日本人に本当に本当に度肝を抜かれた。そして結局思ったのだった。

”日本人めっちゃ丁寧!やさしい!日本サイコー!!!!”

外国人の気持ちを心から理解できた瞬間だった。



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