【戯曲】宇宙ストレッチ ガラパゴス

男が2人、ダラダラしている。

1「あのさー、ガラパゴス諸島に行きたいんだよねー」
2「ん?おお、、、、、、え、なんで?」
1「んー?亀に乗りたい。」
2「え、ガラパゴスって亀に乗れるの?」
1「あ?ガラパゴスつったら亀だろ。つーかあれだ、もうガラパゴスが亀。」
2「ガラパゴスそのものが?」
1「うん、ガラパゴス住民はみんな、あれ、亀の背中で生活してるから。島についたと思ったらもう亀に乗れてんの。」
2「え、なにそれ、マジか、お前、マジか。」
1「ロマンがあるよね。」
2「そんなん、いつ亀が死んで沈むかわからないだろ。怖いよ。ないわ、ロマン」
1「死なねぇだろ、亀だぞ。」2「そうだなー、、、、、、そうかな?」1「亀は万年つーだろが」
2「言うけどさ、、、」
1「昔々浦島は、助けた亀に連れ去られ~♪」
2「それは違うぞ!子供泣くぞ!」
1「え、何が?」
2「連れられて〜♪だから!」
1「…ほぉ〜ん」
2「なんだその態度!いや、さっきのも違うからな!」
1「あ?」
2「ガラパゴスは亀じゃねーよ!」
1「…うん。」
2「え?」
1「え?…いや、例えばの話よ。そうだったらいいのになの話よ。ガラパゴスついたぞーうわー亀だーガラパゴス。で、亀に乗ろうとしたら、もう乗ってるーみたいな。あ、意外と、そんな、ヌルヌルしてないんすね、甲羅、みたいな。例えばね、そうだったら面白いよねというご提案。」
2「疲れてるの?」
1「え、面白くない?」
2「お前の頭がファンタジーすぎて入り込めない」
1「そこは歩み寄る優しさを見せなきゃ」
2「実際は亀じゃないでしょ?」
1「そういうすぐに実際はとか、現実はとかいう人やだぁ」
2「えっいや、それズリぃよぉ」

1「おなかすいた。」
2「、、、、うん、、、、ごはんでも食べに行こうか、、。」
1「…スッポン鍋って食べたことある?」
2「(引き気味)いや、ないけど、、、食べたいの?」
1「こう、酒の話してると、あー、なんだか話ししてたら飲みたくなっちゃいましたねー、どうすか、1杯?ってなるじゃん。」
2「いや、いや笑。将来ガラパゴスになるかも知れないんだぞ!笑。可哀想だろコラ!笑。」
1「いや、それは島用のやつだから。食用とは違うやつ。」
2「え?」
1「いやだから、島用と、食用があるの。」
2「ないよ!どこで判断するするんだよ、そんなかわいそうな!」
1「牛だって乳用と肉用があるじゃん。それぞれの素質に見合ったライフスタイルを提供していくんだよ。」
2「そんな身勝手な話しがまかり通るわけないだろ!素質ないやつは食用だなんて、、、」
1「スッポン食いてぇなー」
2「数分前のお前に合わせてやりたいよ、、、」

1「てかさ、お前何か探してなかった?」
2「え?いや、、、いちにーさんしー(探しものをする、腿あたりでストレッチになる)最近何してもストレッチになるんだよね。」
1「ほぅ~ん」
2「待って、、、ちょっと、キタキタキタ、、、宇宙、うちゅう、うちゅう、うちゅう、、、」
1「…」
2「なんか、スゲー伸びた」
1「…おう。」
2「いまだかつてない伸びだこれ」
1「宇宙ってなに?」
2「え?」
1「いや、今、宇宙つったじゃん」
2「いや、言ってないよ。いつだよ。」
1「なんか、いまだかつてなく伸びてる時」
2「いやいやいやいや、 、、あっ、宇宙ーうちゅうー」
2「言ったな!」
1「言ったよ。」
2「いや、でもこれは致し方ない。だって実際感じたもん。宇宙。」
1「感じたの、宇宙。」
2「いや、こんなとこ、伸ばしたことない、いや、えっ、こんなところ、こんなに伸ばしていいの?おっおっ!まだ伸びる伸びる!!あ、人間の限界が超え、、、宇宙!!!みたいな。」
1「…そうか。」
2「こんな気持ち初めてだ。人として成長して大きくなった気もするけど、ちっぽけな存在だと思い知らされたような。清々しい気持ちだ。ストレッチ、していて良かった。ありがとうストレッチ、ありがとう、宇宙。ありがとう、お前。」
1「…(その場を去ろうとする)」
2「っておーい!(追いかけようとするが、足が伸びてストレッチになる)いち、にー、さん、しー!いや、待ちなさー、(またストレッチ)にー、にー、さん、しー!なぁ!お前にも、この感動を味わって欲しいんだ。」
1「ちょっと落ち着いてごはん食べに行こうぜ。」
2「ちゃんとストレッチしてから行こうぜ。」
1「うん、今度な。」
2「いやいやいやいや!ダメだって!今やらないと!」
1「えー、」
2「ご飯食べて胃が痛い痛い痛いってなるよ!だってストレッチしてないから!」
1「え、ストレッチって胃も伸びるの?」
2「伸びるよ!五臓六腑が伸びるよ!お前、さっきストレッチしてたよな?え、どういう心境でストレッチしてたの?」
1「え、いや、ふつーになんか、流れ?で。」
2「ふつーに?流れで?えっ、ちゃんと入信してやってる?」

1「入信?」
2「入信しないと危ないだろ。」
1「さっきからお前のストレッチには予期せぬ単語が出てくるな。」
2「ストレッチの力をちゃんと信じてあげて、崇めながらやらないと、過信でやると怪我するぞ、最悪死に至る。」
1「まじかよ、」
2「でもな、ちゃんと入信すれば、豊かな人生が待ってるから。」
1「それ、なんかあの、大丈夫なやつ?」
2「まーまーまーまー、お前の気持ちもわかるよ。とりあえず入信しよ、そこからどう自分で折り合いをつけるか、だから。」
1「はぁ、はい。」
2「それからストレッチの旅が始まるから、一歩一歩進んでいこう。安心しろよ。俺らがついてるから。」
1「じゃあ、あの、とりあえず、入信するんで、昼食べに行っていいすか。」
2「だめだよ!お前何にも分かってない!え、お前健康に興味ないの?」
1「え、いや人並みにはありますけれども。」
2「私達に求められているのは健康的な美よ!」
1「……スッポンってコラーゲン抱負らしいよ。」
2「ビタミン、ミネラル、鉄分、カルシウム、コエンザイム、コラーゲン!これ全部ストレッチの仲間!」
1「わお」
2「ビリーズブートキャンプ!ライザップ!タニタ食堂!ワンダコア~♪これも全部ストレッチの仲間!」
1「oh…」
2「あらゆる健康的要素が詰まった、それがストレッチ!(ストレッチになる)いち、にー、、、ストレッチするまで飯なんか食わせないからな!」
1「新しい形の虐待だよね。」
2「これは友としてだな、心を鬼にしてるんだよ。」
1「じゃああの、なんか、こんな感じでいいすか(適当にストレッチ)」
2「おい!とりあえず本置けよ!」
1「あ、はい、すません。」
2「ハイハイハイハイ!」
1「はぃ(適当にストレッチ)」
2「なんだその適当なストレッチは!そんなんじゃ、宇宙、いけないよ!」
1「はぁ。」
2「たっちゃん、私を宇宙に連れてって。」
1「難易度上がったなぁ。」
2「お前やっぱりまだ半信半疑なんだろ。みてろ。俺今から、こっち(右手)だけ、伸ばすからな。」
1「え、きもちわるい。」
2「宇宙!!!ほら、ストレッチしたほうとしてないほうで腕の長さが全然違う!」
1「…わー、すげー、じゃ」
2「おいおいおいおい!!!行くな!!伸ばせよ。いちにー、、、(追いかけるがストレッチになる。足を叩いてストレットをリセットしながら追いかける。行こうとしてる腕を掴む)ほら、これもストレッチだ。なぁ?気持ちいいだろ?最高だろ?感じるだろ?エネルギーを。」
1「今のお前は、第三者の目に晒されているという感覚を持った方がいいよ。」
2「ヘイ、ヘイ、ヘーイ、!やりますよ!」1「えー、じゃあ、はい、あの、どんな感じで?」
2「お前さっきストレッチしてただろ、あれでいいんだよ。何でもいいんだよ。人の数だけストレッチはあるんだよ。ただね、そのストレッチを信じてやればね、それでいいんだよ。」
1「はぁ、じゃあ、まぁ、こんな感じで。(だらだらストレッチをはじめる)…うわー、なんか、超信じてるわー、ストレッチ、超信じてるー、めっちゃ、すげぇ伸びるわー」
2「いいじゃねぇかよ。いいストレッチ持ってんじゃねぇかよ。」
1「わー、伸びたわー、右足だけ伸びたわー(立ち上がって見せる)」
2「えっ、おっ、えっ、浮いてるじゃねぇかよ。おいおいおい、お前、やっぱり只者じゃねぇな。あっ、そのストレッチと、俺の宇宙腕ストレッチとを合わせると、もう、超、伸びるじゃん!本当に宇宙行っちゃうよ!おいおいおいおい、テンション上がってきたよ、おい!なぁ、くれよ、その、ストレッチ。俺に。」
1「え、どうぞ。」

2「(見よう見まねでやる)あれ、伸びないよ。足、伸びないよ!あれ?」
1「信じる力が足りないんじゃねぇの?」
2「こ、このやろう、、、いや、これ以上は無理だって、、、」
1「いや、宇宙を信じろよ、ここをもっとこうやって、」
2「えっえっ、あっ、だめだって、あーーーあいや!」
1「あ、中華たべたい」

暗転
おしまい

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