漫画家が第一話を全部ツイートして宣伝したら売上が上がった話

(注意)この記事の最後に自分の作品の宣伝をします。

こんにちは。森です。漫画家・漫画原作者をしてます。

さて、記事タイトルでもパロディしておりますが、最近Twitter上でよく見かける「〇〇が××する話」と内容が分かりやすいタイトルをつけて漫画の第一話を全部載せて、最後に本の宣伝をするツイートについての話です。
最近、この形式でバズっているツイートを見かけた方も多いかと思います。

自分も先月末、発売中の漫画の冒頭部分を連投ツイートし、途中にAmazonのリンクを貼って宣伝しました。

結果、このツイートによって認知してくれる読者の方が増え、売上が上がり、宣伝としてかなり効果的でした。
(ここでいう売上が上がったというのはAmazonのKindleマンガランキングがかなり上位に入ったことを指しています。細かいことは後述。)

ということで、そこらへんのことをnoteに書いておけば多少なりとも誰かしらの何かしらに参考になるかもしれないな〜と思い、書きます。

また、このツイート形式に対しては快く思わない方も少なからずいるようで、その辺りに関しての考えも書いておきます。

あくまで個人的な観測範囲での、推測や想像も多く含まれた一事例として読んでいただければ幸いです。


・ツイートしてどうなったか?

ツイートをしたのは、1月26日の20時過ぎ。
正確には第一話だけでなく第三話まで、最初のツイートにリプライする形でツイートしています。

ツイート前日25日朝の時点のKindleストアのマンガランキングが
第1巻が201位、第2巻が346位、第3巻が390位でしたが、
ツイート後、全3巻ともAMAZONのkindleマンガランキングで徐々に順位を上げていきました。
そして、29日には第1巻、2巻、3巻がそれぞれ2位、3位、4位にランクイン。やったー!(読んでいただいた皆さん本当にありがとうございます。)

ということで、これを当記事タイトルにおける売上が上がったことの根拠としていますが、正直、現時点でどの程度の収入になったのか正確な数字は分かりません。

この漫画はKindle Unlimitedという読み放題サービスの対象となっており、これは読まれたページ数によって配当が決まるので、その売上は把握しきれません。
また、期間限定でPrime readingというものに配信されていて、現在Amazonプライム会員の方なら誰でも無料で読むことができます。
この場合、読まれたページ数にかかわらず作者には最低保証金の配当しかありません。販促の意味合いが強いものになっているようです。

そういった意味で、この漫画はKindleで無料で全巻読めるという選択肢があり、順位が上がりやすい特殊な状況にある作品ではあります。(もちろん通常の電子書籍価格での購入も一定数あるはずですが。)

※本筋から離れてしまいますが、この『さよなら、ハイスクール』という作品は、2016年まで秋田書店の商業WEBサイトで連載し、単行本の第1巻は紙で発売されたのですが、売上が悪く第2巻以降の電子書籍発売が未定となっている状況でした。そこで昨年、秋田書店と交渉し電子書籍の権利を非独占という形に変えてもらい、No.9という配信代行業者を通して改めて電子書籍として発売したという経緯があります。ですから、Unlimitedに入っていたりPrime readingに入っていたりと、一般の商業漫画とは状況が異なります。

しかし、どんな漫画であっても、存在を知ってもらい、興味を持ってもらい、ダウンロードしてもらわなければ意味がないわけで、今回のツイートによって漫画を認知してもらえた、それによって売上が拡大したのは確実でしょう。(ちなみに補足情報としてフォロワーも1500人くらい増えました。)

同様に他の作家さんにおいても、あの形式のツイートでバズったことで作品を認知してもらい、売上に繋がった方も多くいらっしゃるんじゃないでしょうか。

これほど色々な漫画がある中で、さらには色んな娯楽がある中で、自分の描いた漫画を買ってもらうハードルはすごく高いですし、とにかく「発見」してもらわなければなりません。

商業漫画の第一話は、編集者と作家が一番頭を悩ませて一番時間をかけて描いているわけで、それをしっかり読んでもらいたいという気持ちは強いはずですし、それを読んでもらえるチャンスが増えること、そしてそこから売上につながることは本当に素晴らしいことだと思います。

ということで、私はこの流れ(多くの商業作家があの形式のツイートをして宣伝すること)は歓迎すべきことだと思っています。


・このツイート形式を快く思わない方がいることについて

さて、今週に入ってから、この「〇〇が××する話」と内容が分かりやすいタイトルをつけて漫画の第一話を全部載せて最後に本の宣伝をするツイートについて快く思わない方の意見を目にするようになりました。

これについては以下のようなところ参照してもらえるといいかと思います。

正直、あのツイート形式に対してこういったマイナスな意見が出るとは思いもしていなかったのでかなりびっくりしたのですが、色んな意見を目にするうちに、なんとなく感覚を理解できるようになりました。

快く思わない方の多くは

・アマチュア創作漫画と思って読んでいたら商業漫画だった、ということに裏切られた気持ちになったり、ステマっぽく感じたりする

という理由のようです。

知らなかったのですが、元々ああいう形式のツイートはアマチュア創作漫画から生まれてきたという文脈があるようです。
確かに、今までああいったツイート形式でたくさんのアマチュア漫画を楽しんできた人にとって「えっ!?商業漫画だったコレ?」と困惑することはありうるでしょうし、それによって不快に思うことも理解できます。

忘れがちですが、TLは個々人によって全然違うもので、どんな漫画が流れてきて、それをどのように楽しむかは個人差がかなり大きいものです。
あの形でアマチュア創作漫画を見ることがなかったり、そもそもTwitter上の漫画を見るときに商業・アマチュアと分けて考えない人もいます(自分もそのタイプです)。
漫画家でも、Twitterで漫画を読む人も読まない人もどちらもいます。

私個人があの形式のツイートを初めて観たのは、今年に入って、知り合いの商業漫画家さんが十数ツイートに渡って連投ツイートをし、数万RTされている様子でした。
そのとき感じたのは、宣伝としてどうこうというよりも、

「Twitterに漫画をこんなに分割して載せても読んでもらえるの!?ひとつのツイートにまとめなくても読んでもらえるの!?Twitterって今そんな感じなの!?」

という新鮮な驚きでした。

これは本当に私個人の観測範囲の話なのですが、少し前までTwitterの漫画は短いほうが良いという常識がありました。
だからこそ、みんなTwitterに漫画を載せるときは頑張って1ツイートの上限枚数である四ページにまとめていましたし、
連載中の商業漫画を宣伝したいときは、冒頭四ページか、あるいは分かりやすいページを四枚を選び、本文にURLを貼るという方法を取っていました。今まで何度も「第一話の試し読みはこちら→」とツイートしたことがあります。しかし、そういう形のツイートでは興味を持ってもらい読んでもらうのはなかなか難しいことでした。

それが分割して複数回に分けてツイートしてもちゃんと読んでもらえる、あるいはその方がもっと多くの人に読んでもらえるのなら、これって結構すごいことなわけです。

そう思って、直近にバズった漫画を調べて見てみたんですが、同様に連投ツイートのものばかり。
(アマチュア漫画も商業漫画もあったはずですが、特にそれについては意識しませんでした。)

そこで、

「なるほど!Twitterで漫画を読む文化は発展して、今やもう、みんな長くても漫画を読んでくれるんだ!いくつもに分割してツイートしても読んでくれるんだ!(ただし、どうやらタイトルを「〇〇が××する話」みたいに説明的にする必要があるっぽい)……じゃあ、乗るしかない このビッグウェーブに!」

というような感じでツイートするに至りました。

しかし、そういったアマチュア創作漫画での文脈があるんだということを知ると、申し訳ない気持ちになります。
そもそも、このTwitter上で長い漫画を読んでもらえるようになったということ自体が、もしかしたらTwitter上のアマチュア創作漫画によって発展し、定着した文化であるという側面もあるのかなあ、という気もしていて、そうであるならリスペクトも必要で、自分もツイートするときなにか配慮する余地はあったのかな、と考えたりもします。

その上で、ルールに則った上でTwitterを運用してるのであれば、やっぱり悪いことではないのではないかという思いもあります。
ツイートしてよかったというのは、やはり変わらない思いとしてあります。

・まとめ

正直自分はー漫画家としてあのツイートで自分の作品がより多くの方に届けられたことがすごく嬉しかったですし、売上にもつながりました。一読者としても今回のやり方が流行したことで、今まで知らなかった面白い漫画をいくつも知って読むことができて、それは単純に良かったです。

ただ、今後自分が漫画を宣伝するとしたら、何か別の上手いやり方はないか考えることになるとは思います。その上であのツイート方法を選択するかもしれません。
前にも述べましたが、他の作家さんがやることについても大歓迎で、どんどんツイートして欲しいです。

いい漫画は世の中に本当にたくさんあって、それでも発見されずに消えていくのです。それを消えていく前に見つけてもらう手段があるのなら、どんどん使っていって欲しいと思っています。本当に知られてないだけで、いい漫画はたくさんあるんですよ〜〜!!


……まあ、こうして漫画家がTwitterを使って宣伝しなきゃ頑張らなきゃとしている事自体が、もしかしたら異常なことなんじゃないかと思っている部分もちょっとあって。現状の漫画が売れない世の中で、Twitter上で漫画家がどのように作品をPRするのか、そもそも漫画家がPRしなければならないのか、という問いもあり、これ以上行くと今後の漫画家のあり方や出版社の役割についてというような、ちょっとまた語りにくいところに触れそうなので、やめておきます。

乱暴に言うと、あのツイート形式はそういった混沌とした漫画業界の過渡期の中で生まれた宣伝方法の一つであった、といったところでしょうか。

最近では作者ではなく、編集者が担当作を自分のアカウントでツイートしていたり、雑誌の公式アカウントがツイートしていたりする姿も見かけます。これが一過性の流行として終わるのかもしれませんし、宣伝方法として当たり前になっていくのかもしれません。
それを普遍化と呼ぶのか、あるいは陳腐化と呼ぶのかは分かりませんが、良い漫画が埋もれず読者の元へ届くのであれば、やっぱりそれは歓迎すべきことだと思っています。


・最後に(PR)

私がツイートした漫画のタイトルは
『さよなら、ハイスクール』といいます!Kindle電子書籍で全三巻、絶賛発売中です。
簡単に言うと、スクールカースト最底辺の主人公がカースト最上位の女子と付き合ってクラスをめちゃくちゃにする話です!

ご購入いただけると大変嬉しいんですが、Amazonプライム会員なら全巻無料で読めます。(2月13日現在。一定期間経てば終わるはずです。)
その他、各種電子漫画サイトなどでも配信されています。


また、ヤングマガジンで連載中の『ギャルと恐竜』の原作を担当しております。単行本第一巻が4/5に発売されます。
試し読み第一話はこちら↓

よろしくお願いいたします。

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森もり子

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コメント4件

記事を読んで漫画に興味が出ました☆
自己紹介としても、アリな手法だと思います!(●´ω`●)
私もプロのあの形式の宣伝にモヤッとした一人です。

あの形式やTwitterそのものに限らず、YouTubeなんかもそうですが、そういう誰もが投稿・参加できる媒体は「全く無名の素人が世間にデビューするきっかけの“舞台”」という印象がありました。

初めてプロの連投を見たときはまだ「新しい宣伝方法を思い付いたんだな…!やるじゃん!」くらいの感覚だったのですが、それに便乗するように多くのプロ漫画家たちが1話目を載せるようになり、次第に「いやいやそりゃプロなんだから最低限面白いのは当然で、そんなあんたらが載せまくったらせっかくの素人の舞台なのに、素人が全く目立たなくなるやん!」という、素人さんへの同情が強くなっていきました。

「プロ漫画家も売れるのに必死」「プロだからこそ何しても良い」「素人とか関係なくプロと同じ舞台に立っても戦えよ」「プロに負けないくらい面白いものを描けばいい」という理屈は分かるんですが…。
どうしても、ネットのおかげで広がった「素人のデビューのきっかけ」の一つを、プロが潰してるように見えてなりません。
売れるものを用意する。無料で公開し認知した人が買える様にする。このコンボはやはり重要なのですね。ありがとうございます。参考にさせていただきます。
とても勉強になります!
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