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素人がゼロから始めた「リノベーション」のお話

最近、家を作り始めました。

正確にはすでに存在している家を基礎以外取り壊して作り変える、いわゆるリノベというやつです。

建築の分野は、仕事でも学生の時もかすったことすらない素人ですが、プロの方々に依頼せず自分たちで作っています。

「家をつくる」という経験のないチャレンジをなぜ始めたのか、そしてやってみて分かった失敗や良いことなどまとめてみました。

前半はリノベを始めるきっかけになったシェアハウスでの暮らしぶりについて、後半はリノベの始めてからのありのままの進捗を綴っています。

リノベやDIYに興味がある方、ものづくりが好きな方に見ていただけたら嬉しいです!
(前半は文章多め。とりあえずリノベ風景が見たい方は隅田川沿いに家、借りるからお読みください)

リノベを始めるまで

リノベを本格的に始めた理由をお話する前に、1年ほど暮らしていた都内のシェアハウスでの生活をご紹介します。

人生で一度は、まったく知らない人たちと一緒にご飯を食べたいという安直な動機から、一人暮らしからシェアハウスに引っ越して生活を始めました。

それまでの一人暮らしから初めて複数での暮らしになるため、ちょっとした不安と期待を抱えながら引っ越したのですが、結果的にここでの暮らしがきっかけで今のリノベ生活が始まります。

理想の暮らしとかけ離れた生活

まずはシェアハウスでの生活スタイルに関して感じたこと。思っていた生活とは大きくずれていました。

私が住んでいたシェアハウスは四方が住宅で囲まれた場所に位置し、必要な家具やスペース、その他生活する上で必要なものもすべて、最小限に抑えられた場所でした。本当にびっくりするほどものが置けないのです。

無駄なものを持たないという意味ではメリットが大きく、強制的に断捨離できるので良い機会だったのですが、生活という点においてはこの最小限の場所は私にとって最善ではありませんでした。

当たり前ですが生活空間が狭いとものを置く場所も減り、好きなものに割り当てられるスペースもなくなります(私の場合は料理道具や調味料などです)。また、このスタンスが各部屋や共同スペースでも同様のため、他の住民と距離感が近すぎてしまうということもありました。私がいた頃は大きなトラブルはありませんでしたが、それでも全員が全員心地よく生活できているとは言えない状況でした。

この辺りを深掘りするとそれだけで1記事書けてしまうので省略しますが、結局のところ、「生活」をきちんとするためにはある程度余白をもった生活空間がないといけなかったのです。

また、個人的に当時ワーカホリックだったこともあり、この窮屈さが裏目に出て健康を害することも多々ありました。メンタルが弱っている時には尚更近い距離感は落ち着かない。建物の立地的に日光がまったく当たらないのも大きな原因だったかもしれません。

私にとっての理想の暮らしは、1日の中で自然を感じながら3度の食事に手間をかけて、ご飯を食べるときは誰かしらと一緒に団欒すること。しかし生活空間と他人との距離感、適度な自然(日光)のなさと自分のライフスタイルが理想とかけ離れていました。

結局、全く知らない人たちとご飯を食べられたのはほんの数回で、10人ほどいたメンバーのごく限られた人とだけでした。

生活よりも売上重視にみえる設計

もうひとつは屋内の設計について。
暮らしている身として純粋に「生活しづらいぞ?」と感じる場面が何度もありました。

間取りや什器的な設計はもちろん、冷蔵庫やキッチンの使い方といったルール的なものなど、明らかに机上の空論感のある感じになっていたのです。ただ管理しやすいという一点から複雑さを取り除いてひとつの場所にぎゅっとまとめた感じ。

きっとこの空間をどう使って生活してほしいのかまで考えて設計していないんだろうなと。数値上はそりゃいけますけど実際に生活するという面では無茶でしょうよ...という疑問が絶えない作りでした。

しかも管理会社に改善提案しても基本的には「〇〇はできません」の一点張りでお役所のような応答。管理側の都合と生活のしやすさには相容れないものがあるのだと実感しました。そして言うだけでは限界があるということも悟りました。

自分達でならもっと良い暮らしができる

そこで本題に戻るのです。
だったら理想の暮らしを誰にも文句を言わせない状況で実現すれば良いのではないか、と。

幸運にも、似たような疑念と悩みを抱えていた者が同じシェアハウスに2人いました。何度か話し合いを重ねるうちにお互いのやりたいことが重なり、自分たちでシェアハウスを作ろうという話に至ります。

自分たちでつくることが前提だったため、シェアハウスを作るにあたっての目標を物件を探す際に決めていました。

・ほぼ0からリノベできる賃貸
・コストは抑えめ、かけるべき部分は妥協しない
・資格必須の箇所以外は自分たちでつくる

要はなるべくリスクを取らずに最大限自分たちのわがままが通る物件。そんな都合の良い物件がすぐに見つかる訳もなく数ヶ月奔走しますが、最終的に条件に見合った物件が見つかり、2020年5月から住むことになったのです。

隅田川沿いに家、借りる

私たちが借りた家は、浅草と南千住の間、隅田川沿いにある一軒家です。築60年以上の昔良き日本家屋。

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玄関横には大きなヤシの木が…

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1F、2Fともに和室です。遠くからみると状態が良さそうな気もしますが、床が傾いていたり天井に穴が空いて屋根が直接見えていたりと、とてもそのままで暮らせる状態ではありません。

1軒家ですが敷地面積的にはそこまで大きくない、昔ながらのおばあちゃんの家にイメージが近いですね。

一応補足をしておくと今回は購入ではなく賃貸の物件です。かなり古い物件のため安くお借りする代わりにきちんと改修をします、という条件でお借りしました。オーナーさんがDIYにとても理解のある方で工具なども貸していただいたりと本当に恵まれている環境の元改修を続けています。

まずは解体から

大変お待たせしました。5月にリノベを始めてから今までの進捗をお伝えしましょう。

ひとつだけ念頭に置いていただきたいのは、私たち住人はあくまで素人です。つまりここからはハプニングの連続。

最初に計画していた大まかな改修の流れはこんな感じ。

① 建物全体の解体(基礎は除く)
② 2F生活スペース作り
③ 1Fリビング作り
④ 1Fキッチン作り
⑤ 1F小部屋作り
⑥ 玄関・外壁まわり

本当はもう少し細かいのですが大枠はこちらです。実はこの時点ですでに肝心な工程が抜け落ちていたりするのですが、始めた時はもちろん気付きませんでした。

往々にして事はこんなに上手く運びません。

ちなみに契約完了から引っ越しまで2週間ほど余裕があったので、解体だけならその間の休日で終わるんじゃない?という考えを3人とも持っていましたし、何なら詰め込めば年内で大体終わりそうだねという話をしていました。年内...勢いって怖い。

終わらない解体

解体だけならその間の土日で終わるんじゃない?

そうです、まず最初の失敗は解体のスケジュールを誤った事でした。
畳や前住人の荷物はもちろん、壁や仕切り、押入れなども一度全て取り払う必要があります。さらにはここは日本家屋。切り倒す柱の太さが半端じゃない。

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これは2Fの押し入れ類を壊した時

部屋全体に散乱していますが、これでもほんの1部ですからね…

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こちらは1Fの仕切りを壊した時の写真

大きなハンマーやバール、丸のこで必死に壊しますが、思った以上に進まない。地震で壊れないようにしているからすんなりいかないのは当たり前ですよね...最初の1日で全身筋肉痛になり2日目から苦痛の中の解体でした。作業する人間の体力をスケジュールに加味しないと後々大変だとここで痛感します。笑

そしてスケジュールを押した大きな原因が解体で出たゴミです。
通常のゴミとは異なり産業廃棄物扱いとなるため、専用の袋に入れて集積場へ持っていく必要があります。解体よりも木材やガラス、石膏ボードを袋に入れる作業に時間がかかることもありました。袋に入れるためにある程度の大きさにカットしたり、飛び出ている釘は抜いておかないといけないなどルールがあるそうです。
まとめて持っていくために、しばらく1Fの半分がゴミ倉庫になりました。

リノベをするときはゴミを捨てに行くタイミングと保管しておく場所を予め確保しておくことが重要、という教訓を得ました。

そして終わらない床作り

早く生活空間を確保せねばということで、解体を途中で切り上げ着手したのが床です。

とりあえず2Fを何もない状態にして、生活するための床を作り始めます。この床作りで相当苦労することになるのですが、ここでも1記事書けるほどのハプニングが起きたのでさらっと流します。

ハイライトを一言でまとめると、傾いた床を水平にするのに苦戦し何度もやり直して何とか引っ越しまでに仮の床を置けました、という感じ。

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BEFORE

畳を退けただけの状態。所々に穴が空いていて1Fが見えていました。

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AFTER

フローリングにはほど遠いですが、ひとまず平らな床ができました。

結局引っ越しの日までに終わったのは想定していた半分の解体と、最低限生活するためのこの床くらいでした。何なら1Fは産業廃棄物の倉庫になったため下駄箱(仮)が2Fにできる始末。どうぶつの森の最初の家より生活感がなかった気がします。ここから3ヶ月くらいは本当に家の中でキャンプをしているようなサバイバル感がありました。

ちなみに2020年8月までに完了したこと一覧がこちら。

1,2F 床、壁、天井、押入れの解体
2F 床下地(フローリング以外まで)
2F 天井下地
2F 壁下地
1F 床下地
1F エアコン設置
1F 窓の張り替え
水道ガス電気を通す
電気配線の変更(1部)
家の前のヤシの木伐採

2Fが下地で終わっているのは、配線箇所を旧式から一新するため、その工事が終わってから壁を埋めるためです。本来2Fが生活スペースなのですが、しばらくは骨組み丸見えの状態で暮らします。

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家の前の木もオーナーに切ってもらいました。途端に2Fが明るくなりました。笑

やってみてわかったこと

実際にリノベをしてみて得た収穫はたくさんありますが、その中でも予め考えておくべきだった課題を紹介します。

- 解体だけでめちゃくちゃ時間かかる
- 出るゴミの量が半端ない、置く場所ない
- 基本的に週末だけの作業、全員仕事しながらだから進まない
- 生活しながらだといちいち物を動かすのが大変
- 素人だから1日やった作業が無駄になることも多々ある

どれも当たり前のように見えますが、やはり初めてだと想定していたスケールと実物がずれていることとかがあるのです。解体時間とゴミの量は特に。

3、4つ目に関しては生活しながらリノベする場合に考慮すべきことですね。予め日にちを決めていても他の予定が入ったりするし、2Fなら2F、キッチンならキッチンとその日にまとめて作業しないと家具や生活用品を毎回移動しなければならず無駄な労力を生みます。洗濯機を連日動かさないといけない時は本当に大変でした。

最後のひとつもかなりの頻度で起こり得ます。測る数値が違っていたりそもそも測り始めがずれていたり、など最後まで進めた後に間違いが発覚してやり直すという経験を何度もしました。もちろん慣れの問題もありますが、できるなら1度で終えたい。とにかく少し進んだら確認を挟むことが大事です。

とはいえリノベは楽しい

課題山積みなリノベですが、もちろん楽しいなと感じることもたくさんあります。こちらもいくつかまとめてみました。

- わからないことだらけで楽しい
- 家という大きいものがどうやって作られているか肌で感じられる
- 良い暮らしのために正解を模索する時間が素直に楽しい
- 工具を難なく扱えるようになる

わからないことだらけで楽しい
基本は本当にわからないことだらけです。初めはとりあえず試してみて失敗するというサイクルが常ですが、やり続けていくうちに思考と勘が研ぎ澄まされていくような感覚ができてきました。

力仕事で体力を使うのはもちろんですが、それよりも頭を使うことの方が多いかもしれません。これはいけるんじゃないかと思いついては試してみて、思った通りにはまった時はとても楽しいです。

家という大きいものがどうやって作られているか肌で感じられる
一度完成している家を解体するだけでとても勉強になります。日本の大工さん達がいかに偉大で尊敬できる職人なのか…普段暮らしている私たちの目には見えない部分で匠の技が冴え渡っているのです。

そして自分たちの手で作ることで改めてその素晴らしさを実感します。個人的には、全て数字ベースで緻密に設計していると思っていた家作りが、現場では程良いところで手を抜いていると知れたことは大きな収穫でした。

手を抜くというと語弊がありますが、どうしても数値上の設計と現場では少なからず差異が出ます。それをいかにして違和感なく、暮らしに影響なく見せるか。その差異を埋めるために知恵を絞り工夫を凝らす、そのプロが大工職人なのだと肌で実感できたというところでしょうか。言葉にするのは難しいですが、作業中に彼らの知恵と工夫に気付けて感動する時もあります。

良い暮らしのために正解を模索する時間が素直に楽しい
これは一人暮らしではなく複数人で一緒に暮らしリノベをしているからこその楽しみかもしれません。お互いが思い描く「理想の暮らし」がそれぞれあるので、その思考を集約して何が1番ベストなのかを考え議論する時間が度々あります。

例を挙げると、ドアの種類(外開きか引き戸か)やキッチンの作り、共同リビングの空間の使い方など。プロの方に頼む場合は初めに決まっている部分ですが、自分たちで作るからこそ柔軟に対応させることができます。いざ作ってみると思ったよりここが狭い、ここが足りないといった現実が出てくるので、その度に会議を開いて解決策を模索します。

理想の暮らしには価値観の違いが出ます。自分の理想を通すだけでは簡単に解決できないことがしばしばありますが、迷った時は自分以外の誰かもここで生活するとしたら不自由がないかという視点でも考えて、お互いの理想と現実の使いやすさを照らし合わせるようにしています。

工具を難なく扱えるようになる
リノベを始める前までは工具の扱いにはほとんど慣れていませんでしたが、数ヶ月使い続けていると自然と技術が身についてきました。

電動ドリルに丸ノコ、グラインダーやチェーンソーなども一連の工具は網羅しました。この辺りのお話については、「リノベで役に立った工具編」のような記事を別に書いて紹介できればと思います。

これから先使える知識かどうかは怪しいですが、どこかで役に立つと思っています…

家としてのゴール

最後に家が完成した後のお話をちょこっと。

シェアハウスにしたいという話は先述しましたが、その他にやりたいなと思っていることがあります。

まず共同リビングを整えたら小さなホームパーティーを定期的に開く予定です。私が考える理想の暮らしには大切な友人たちの笑い声が必須要素でして(笑)、その和気藹々な空気を作り出すのはやはり食卓だと今までの経験から実感しています。美味しいご飯を食べてもらえるように絶賛キッチンを制作中です。気軽に遊びに行けない世の中ですが、状況を見ながらまたお知らせします。

もうひとつは、リビング部分を作業場所としても活用させたい、というもの。浅草・南千住界隈にはコワーキングスペースが少なく、Wi-Fiのあるカフェに寄ってちょっと作業を…といった便利さに少し欠けています。正式にコワーキングスペースにするには申請やら許可やらが必要なのでどのように着地するかは未定ですが、環境が整えば友人限定で少しずつ試してもらおうかと思っています。こちらも長い目で見守っていただけるとありがたいです。

おわりに(ちょっと宣伝)

ここまで長文をお読みいただきありがとうございました(つらつらと書いていたら長くなってしまいました)。

家を借りている期間中に全部作り終わるだろうか、と自分たちですら疑っていますがこれからも進展があればnoteを更新していく予定です。

私たちのチャレンジについて知りたいことや質問があれば気軽にコメントください。ありのままをお伝えします。ちなみに、リノベで役立っている工具や改修するのにかかった資材・費用のまとめ記事もさらに進捗が進んでから書きたいなと思っています。

また、一緒にリノベしてみたい方・シェアハウス生活に興味がある方も募集しています。色々と進捗が変わるので、まずはお声がけくださいね。

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さいごに。スペーサーと呼ばれる調整材を永遠に生み出している時の写真を添えて。これをやりすぎて5mm間隔を目分量でかなり正確にカットできる特技を身につけました…

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