[寄稿] 『教育』2019年1月号|企業社会日本の雇用のゆくえ

『教育』2019年1月号に「企業社会日本の雇用のゆくえ」という論説を寄稿しました。その一部を転載します。

 つまり、日本企業に勤務する多くの労働者は、会社側が労働条件を一方的に変更しても「しかたのないこと」と甘受してきた面があるのです。神戸大学の服部泰宏氏の実証研究によれば、こうした会社側の一方的な変更のショックは労働者側が吸収してきた側面が強い。これは、労働者へのコストのしわ寄せにほかなりません。
 さて、こうした日本型雇用はすでに崩壊しつつあります。理由は、非正規雇用や「非年功型正社員」すなわち形のうえでは正規ではあるが、低処遇で過酷な労働を強いられるカッコつきの「正社員」が激増しているからです(木下武男氏の整理による)。
 実質的に雇用保障のない労働者が増えていることは、まがりなりにも会社側と雇用保障という「心理的契約」を結んでいる正規労働者に対して強いプレッシャーを与えざるをえません。上で「労働者側は常に経営者を『忖度』しなければならない」と書きました。いま、この傾向がいっそう強まっているのです。このことが、過労死・過労自殺を生みだす温床になっているといるわけです。この負のサイクルを止めなければなりません。

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