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南方仁がいた時代の教祖中山みき

はじめに

 年末からネットのGyaoで無料配信されていた江戸時代に医者がタイムスリップするドラマ『仁―Jin』を見ていた。このドラマは本当に面白くて、何度も見た。ファンも多いことと思う。泣かせるシーンも多く、歳を取れば取るほど、感じることも多く、自然と涙がこぼれてしまうシーンも多いように思う。いい歳したオジサンが画面を見ながら涙している姿など、見せたくもなければ、見たくもないであろうが、感動的な場面が多い。
 一つ一つ感動場面を挙げて語り始めたらキリがないが、それはさておき、このドラマの時代背景は「文久」の頃に設定されている。文久元年(1861年)と言えば天理教教祖中山みきが64歳の頃である。天保9年(1838年)に神懸ってから、23年後のことであり、信者がポツポツとできはじめた頃のことだと言える。そんな頃に主人公の脳外科医「南方仁」はタイムスリップしたことになる。そう思うと、このドラマも更に面白く見られるような気もするが、教祖中山みきがご存命だった頃の姿を偲ぶのにいいドラマなのかもしれない。

ペニシリンが人を救う

 作者の村上もとかはインタビューで、苅谷春郎の著書『江戸の性病〜梅毒流行事情』を読み、日本人の平均寿命が30代半ばだった幕末、遊郭の遊女たちが性病や結核などの病気のためさらに短命だったということを知って悔しい思いをしたことが、執筆のきっかけになったと述べている。(Wikipedia)
 確かに文久の頃には、まだペニシリンなどなかっただろうし、感染症で亡くなっていく人も多かっただろう。そんな時代に現代の医者が行けば、たちどころに名医として名を馳せるだろう。このドラマに出てくる病気は「梅毒」「結核」「コレラ」「脚気」「乳癌」などがあるが、当時としては、かなり難病だったのかとも思う。
 原作とテレビドラマでは違う部分も多いようだが、大沢たかおが演じる南方仁は誠実で、綾瀬はるかが演じる橘咲も素晴らしいと思う。歴史的に江戸の末期が舞台だが、この時代には遊郭があり、教祖中山みきの高弟とされる人々も、やはり通っていたのかと思われる。この時代から明治の頃にも遊郭はあったであろうし、男の遊びと言えば博打か遊郭だったのかとも想像される。
「文久」は1861年から1863年までの3年しかないが、その次の「元治」は1864年はすぐに終わり、「慶応」1865年に入る。ドラマのようにペニシリンが発明されていたら、新興宗教など見向きもされなかっただろうとも思う。
 

文久期の大きな出来事

 ドラマの舞台である文久期だが、大きな出来事としては、「皇女和宮と将軍家茂の婚礼」、「生麦事件」などがあるが、やはり大きなものとして「薩英戦争」が挙げられる。ドラマでも薩摩藩や長州藩など、後の明治の時代に活躍する人物が出ていたが、新選組など本当にいたんだと思う。人によって見方も変わるのだろうが、歴史上の人物がいっぱい出てくるのも、このドラマの魅力かもしれない。武田鉄矢が演じる緒方洪庵もよかったが、実際に文久3年に緒方洪庵は亡くなっているようである。
 文久3年の段階で天理教の信者と言えるのは、水屋敷事件の飯田岩次郎(6歳)や仲田儀三郎(33歳)、辻忠作(28歳)、西田伊三郎(38歳)、桝井伊三郎(14歳)が挙げられる。「仁―JIN」のドラマで薩摩や長州が争い、坂本龍馬が奔走している頃、天理教では上記の人物たちが入信し、教祖みきのもとへ通い始めていたと言える。そう考えると、ドラマで見る江戸時代の風景や町の様子などから、天理教の始まりの頃が想像しやすいのではないだろうか。
 

人としての生きる道を説いている

 単なるドラマとして楽しむのもいいのだが、このドラマには宗教を越えたようなヒューマニズムが溢れているようにも感じる。それぞれの俳優さんが演じる役に、それぞれ感動させるシーンが盛り込まれているが、学ぶべきことや、考えるべきところが多いようにも思う。タイムスリップなどあり得ないのだろうが、そう設定することでドラマとして面白くなるのだろう。歴史上の人物も混在して架空の話だとも思うのだが、時代的背景など割と忠実に考えられているようにも思う。医学史や幕末史に関しても、できるだけ忠実に監修されて作られているようだ。

私だったら…

 恐らく読者の皆様もドラマの登場人物にそれぞれ自分を重ねて、「こんな場合、私だったら…」と考えながら見ていたのではないだろうか。恭太郎さんがペニシリンを守るために歌舞伎役者の太之助に頭を下げるシーンなどあるが、後で坂本龍馬や南方仁にお礼を言われるシーンなど、涙なしには見られない。本当に勇気のある行動というものを考えさせられる。
 咲さんに仁がプロポーズする場面でも、なんで咲さんはOKしないんだ!と突っ込みたくなるが、どうも原作は違うようだ。私だったら、「お慕い申しておりました…」で、速攻なのに…。まあ、そこはドラマを見た人、それぞれの思いがあるでしょうね…。


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