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『賭博視点でSTEPNアプリはなぜApple/GoogleからBANされないのか?』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】・Web3ニュース2022.7.16

■前回のSTEPN記事の反響

7月12日に公開した記事『STEPNアプリはなぜApple/GoogleからBANされないのか?』に大変多くの反響を頂きありがとうございます。

Apple税/Google税を回避しているように見えるSTEPNアプリがなぜアプリストアからBANされないのか?をSTEPNの巧妙な設計を紐解くかたちで考察してみた記事になります。

一般によく言われる説は他にたくさんあります。
・Apple/Googleにまだバレてないだけ説
・ヘルスケアというジャンルの審査が甘い説
・初期審査時は舐めてて今更BANできなくなった説
・ブロックチェーンゲームの代表格を泳がせて観察している説
・AppleとGoogleがお互いどちらが先に動くかを様子見している説
などなど。

どれが真相かはわかりませんが、都市伝説的な理由より信憑性がありそうだと感じてもらえた方が多かったようです。

さて今回は別の視点から「STEPNはなぜBANされないのか?」を考察してみたいと思います。

ブロックチェーンゲームやNFTプロジェクトなどに関わっている人にはおなじみ、「賭博法」の問題です。


■NFTガチャが賭博にあたる可能性

ゲームにおいてガチャ要素は運営の主たる収益源でありプレイヤーにとっても大きな楽しみのひとつです。

従来のスマホゲームであれば、ゲーム内に閉じた話でありガチャで入手できるアイテムも金銭売買できず無価値なので、賭博罪の成立要件のひとつである「得喪」が発生せず賭博には当たらないとされてきました。

つまり、課金でお金を使って「何が出るかな?」のランダム性によるドキドキワクワクはあるけれど、財物としての得(増えた)も喪(減った)もないので賭博じゃないよ、ということになります。

しかしNFTを扱うブロックチェーンゲームやNFTアートの場合、NFT自体が金銭的価値を持つことから「賭博」にあたる可能性が出てきます。

熊谷直弥弁護士の記事によると

ガチャを回すために金銭の支払いが必要となる有償ガチャは、ガチャによって獲得できるNFTのキャラクター等に市場価値が生じ、いわば値段が付くことによって、ガチャを回すのに必要となるゲーム内トークンの価値以上のキャラクター等が獲得できたり、反対にゲーム内トークンの価値を下回るキャラクターしか獲得できない場合が生じたりすることによって、一種のギャンブルが成立することから、刑法上の「賭博」行為(第185条など)への該当性が問題となります。
 また、この問題は、有償ガチャに限らず、ランダム型販売、Reveal型販売等といわれるような購入するまで取得できるNFTの内容が分からないような販売形態についても同様です。

と、NFTが売買され財として扱われるために、そこにランダム性を入れて投じた額より高い(得した)・安い(損した)が発生すると賭博にあたる場合があるよ、としています。

でもNFTのリビール(開けるまで中身が分からない販売形式)やNFT福袋的なもの、ブロックチェーンゲームでもMintのランダム性やガチャなど結構見かけます。

STEPNでもさまざまなランダム要素が入っていますが、賭博には当たらないのでしょうか?


■STEPNのガチャ要素は賭博にあたらないのか?

前提としてSTEPNの運営側がユーザーに賭博をやらせることと、ユーザー自身が賭博行為を行うことは別の話なので、今回はSTEPN運営側の考察をしてみたいと思います。

STEPN内でのランダム要素

・シューズNFTのMint
2足のシューズを掛け合わせると新たな1足のシューズBOXが排出される。
その際、GST/GMTトークンとMintスクロールという売買されているアイテムを同時に投じる。

稀にレアリティが1段階上のシューズBOXが排出されることがある。
稀にシューズBOXが2個されることがある。

シューズBOXを開けると、Runner/Walker/Jogger/Trainerの組み合わせで種別が確率で決まる。
シューズのステータスもランダムで決まる。

・Gemのパリチャレ
同種同レアリティの3つのGemを組み合わせGSTトークンを投じると、確率で1段階上のレアリティのGemにアップグレードされる可能性がある。
(失敗するとパリンと割れることから「パリチャレ」と呼ばれる)

・シューズエンハンス
同レアリティのシューズ5足をGST/GMTトークンを投じると1段階上のシューズが排出される。
稀にレアリティが2段階上のシューズが排出される。

・ミステリーボックス
歩き終わると確率でミステリーボックス(MB)というアイテムが入った箱を入手することがある。
GSTを投じて開封するとGST、Gem、Mintスクロールがランダムで入手できる。
一時期、開封しても中身がカラなことがあったが、今は最低でもGSTが入手できる。

・歩いて入手できるGSTの量のブレ
同じシューズで同じように歩いていてもEarnできるGSTの量が多少ブレる。


ここから個々に考察していきますが、正直「これは賭博にあたるだろうな」が結構あります。でも無理やり賭博じゃない理由を探してみます(笑)
でも法律の専門家じゃないので実際にプロジェクトで設計する時は弁護士に相談してくださいね!


・シューズNFTのMint

GST/GMT/Mintスクロールという賭け金を投じてランダムで価値の異なるものが入手できるので一見賭博っぽいですが、
- 手に入れられるものはシューズBOXであってシューズではない。
 シューズBOXの段階では市場価格はフロア価格で一定。
- 稀に2BOX(双子)が出たり1段階上のレアリティのBOXが出ても「得」だけで「喪(損)」はしない
- シューズBOXを開封するのは無償
- BOX開封結果で安いRunnerが出てもシューズBOXは「Runner以上が出る」ことが約束されており「何も出ない」という「喪(損)」はしない

→シューズNFTは「シューズBOXを出す」という仕組みで賭博回避!


・Gemのパリチャレ

- 設定上の成功確率以内で1段階上のGemを入手できれば「得」ではありますが、確率以下で失敗し続けることもあります。
- そもそも確率に収束するなら賭博じゃない、という定義はありません。確率で財物の得喪が発生するものは賭博です。

→パリチャレは言い訳ができない賭博じゃないかと・・・無理やり理屈を作るなら、Spending側でやってる行為のすべては財物を投じるアクションじゃないから賭博じゃない!


・シューズエンハンス

- 1段階上のレアリティのシューズが排出される、は100%成功する
- 2段階上のレアリティのシューズが排出されても「得」にしかならない
- 5足の組み合わせでRunner/Walker/Jogger/Trainerが割合で出るがRunnerのフロア価格にはなるので「喪(損)」ではない。
- 今のシューズ相場でエンハンスをトライすると金銭的には100%損する(5足+GST/GMTのコストの方が1段階上のレアリティのシューズより高い)。

→エンハンスも微妙です。
シューズの価格相場がよくて「やれば得しかしない」なら得喪には当たらないかもしれませんが、今は「相当な確率で損するけれど極稀に大当たりする」という博打そのものになっちゃってます。


・ミステリーボックス

- 入手できるかどうかに関しては財物を投じていないので賭博には当たらない。
- 開封に際してGSTを投じ、投じたGSTの価値以下のものが出ることもある。投じたGSTの価値以上のものが出ることもある。ヤバイ。
- 特にLv1のMBは5GSTを使って2.5GSTしか出ないが稀にMintスクロールが出ることがある、という博打。
- MBが10段階になった初期は「空っぽ」があった。おそらく「空っぽ」でなければ賭博が成立しないという国があり、急いで「少量のGST」を入れることに変更した。

→いずれにしても日本だとたぶん言い訳できない賭博仕様。
これもSpending側でやってる行為のすべては財物を投じるアクションじゃないから賭博じゃない!としか。


・歩いて入手できるGSTの量のブレ

- これは都度歩くタイミングで賭け金を投じているわけではないので賭博には当たらない。
- 多少の乱数もあるのでしょうが、歩くスピードのブレによる稼ぎ額の差もあると思われ、一概に乱数だけではなさそう。

→これはシロ。


■一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)「NFT関連ビジネスに関するガイドライン」

日本においてはNFTビジネスを展開する際のガイドラインが業界団体によって作られています。

「NFTのユースケース、NFTの法的性質、賭博、景表法、匿名性とプライバシー、セキュリティ、ユーザー保護、新規NFTの取扱い、NFTを発行・取り扱う事業者が留意すべき点」

と、賭博以外にも幅広くガイドライン化されています。

しかしこれはあくまでも業界団体が法解釈を一定程度示したものであって、法律で禁止されていることはできません。

また日本国内におけるガイドラインであって、グローバルに展開されるブロックチェーンゲームやNFTプロジェクトでは日本だけでなく海外でも適法であることが必要です。

STEPNのようにスマホアプリで展開されるものについてはApple/Googleのアプリの公開申請を国別に行うため、各国それぞれで違法なものはApple/Googleが止めるのではないかという期待はあります。

ただすべての法務審査をしているわけではなさそうで、Apple/Googleに適法保証を求めるのも難しいのではないかと思います。

Web3プロジェクトはグローバルなものが多いので、何らかの世界基準が欲しいところです。


■賭博にあたりそうだけれど、もうハードルを下げてもいいのでは

STEPNのガチャ要素を見ていくと言い訳不能なものが結構あります(笑)
そもそも投機マネーがたくさん入っている時点で「賭博的」かもしれませんが・・・

しかしながら、STEPNを楽しむには必要な要素だろうとも感じます。ゲームにガチャは欠かせないと思っていますし、フィジカルで市販されているトレーディングカードやプロ野球チップスの付録カードがOKでNFTだとダメというのも変な話です。

もう少し賭博の線引きや景表法の線引きを下げてもいいのではないかと思っています。参院選も終わったことですしトークン税制の改正と合わせて法制全体の見直しが図られることに期待しています。

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