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『オンチェーン・分散型だから流行るわけじゃない。web3を今取り組む時の発想の課題』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.4.24

■ウェブ3.0のチャットアプリの時代が始まるーテレグラムやDiscordもいずれ陳腐化

ユーザーは今後、より分散型のチャットアプリで安全に友人や知人とコミュニケーションをとることが可能になる。
(中略)
従来のチャットアプリであるテレグラムやディスコードが中央サーバーに依存しているのに対し、ウェブ3.0のチャットプロトコルは分散型ネットワークを利用し、ウォレットを介して仲介者なしでユーザーが通信できる信頼性のある環境を作り出す。
ウェブ3.0のチャットプロトコルの利点の一つは、分散型であることによるメッセージの安全性の確保だ。

問題はそこなのか?と感じたニュースです。

タイトルにあるように「テレグラムやDiscordはいずれ陳腐化」するでしょう。自然淘汰的な時間の流れによって。

ただ、テレグラムやDiscordが「中央集権的だから分散型チャットアプリに淘汰される」という仮説はちょっと飛躍気味だなと感じます。

個人的には「テレグラムやDiscordの現状はUXが悪く、中央集権的な運営体制の現状ではその悪いUXを改善しきれなさそうだから他に淘汰される可能性がある」じゃないかなと思っています。

凌駕してくる新サービスもまた中央集権的なサービスである可能性はありますし、テレグラムやDiscordがUXを改善して地位を盤石にする可能性もありますし、自ら分散型に移行する可能性もあると思います。


ノードやデータが分散型になったら流行る?

ここに一番のギャップを感じるのです。

流行るかどうか、人々に必要とされるかどうかは課題解決とUXとマーケティングに依るだろうと考えています。

中央集権的な何かに課題があり、分散型にすることでその課題が解決されるなら、分散型がきっかけで流行ることもあるでしょう。

例えば中央集権的なAmazon KindleにはAmazonアカウントをBANされると購入済みのKindle本がすべて読めなくなるという中央集権的課題がありますが、電子書籍がNFT化されてユーザーが購入した本を事実上所有し自由に売り買いできアカBANの影響を受けないような分散型Kindleサービスが実現したら流行るでしょうか?

利用料金と書籍ラインナップが全く同じなら可能性はありますが、新規サービスの分散型サービスに対して書籍を提供する出版社や著者を集めるのは至難の業です。Amazonの法人としての信用度は十分高く、不当なアカBANも起きづらい現状、中央集権であることが弊害だと感じている人も多くありません。マーケティング予算も莫大にかけていますのでライバルが現れても駆逐してしまうでしょう。

買ったつもりのものが読めなくなることが深刻な問題だと騒ぎになったら、Amazon自身が一部書籍からNFT化するなどしてアカBANと無関係に「所有」するサービスを開始するでしょう。


UXは現状は悪化する

ブロックチェーンを無用に使うと現状では遅くなったり無駄な費用(ガス代)がかかるようになったりします。

無料でサクサク使い放題な中央集権的クラウドサービスを使い慣れている今のユーザーたちはその使い心地の悪さに耐えられないでしょう。


挙げている不都合は本当に不都合なのか?

この記事の中では分散型になったらよくなることをいくつか挙げているので取り出してみます。

ウェブ3.0のチャットプロトコルは分散型ネットワークを利用し、ウォレットを介して仲介者なしでユーザーが通信できる信頼性のある環境を作り出す。

信頼性は、中央を信じられる人にとっては不都合ではありません。
むしろ新興の分散型サービスの方を信頼できないでしょう。

ウォレットを介して、という部分も、現状のウォレットでは多くの人は対応できないでしょう。

ウェブ3.0のチャットアプリを利用するとメッセージの送信者の本人確認が容易になり、詐欺師の被害を大幅に減らすことができる

確認がしやすくなるだけで、自己責任で自ら詐欺師かどうかをチェックする必要があるのが現状です。それをシステマチックにチェックし警告する機能は開発されるでしょうが、詐欺師は迂回策を講じてくるはずです。

また「詐欺師の被害が課題で、それを解決するのが分散型」とするなら、多くの人がDiscordから引っ越ししてしまうほど詐欺師の被害問題が大きくなっている必要があります。

Discordが淘汰されるほどの詐欺問題はどれほどかと思いますし、ヤフオクがメルカリに個人間売買のシェアを抜かれたのはヤフオクの詐欺被害が問題だったからではなく「オークションよりフリマ型の方が好まれた」というUXの進化によるものです。またメルカリも中央集権的サービスです。


R&Dなのか、今ユーザー数を取りに行くのかを明確に

ウェブ3.0のチャットアプリは、プライバシー、セキュリティ、透明性を向上させる新しいコミュニケーション手段を提供する可能性がある。ディスコードやツイッターはデータがオンチェーンに移行することで時代遅れになるだろう。

未来にはブロックチェーン自体のスケーラビリティやガス代などUX的課題が技術的に改善されるとは思います。そこは楽観的です。

しかし今Web3.0的なサービス企画の多くはギークが分散型にすることありきで立案したものが多いように感じます。なぜオンチェーン化したのかの必然性がなく、得られるサービス価値は全く同じなのにオンチェーン化したおかげでモッサリ遅くなってしまうなどUXを下げてしまうものも多くあります。

将来のブロックチェーンの技術進化を待たずに今トライすることは必要な行為ですが、今のブロックチェーンのUXの悪さそのままに今流行らせるのは難しい。

技術的なR&Dという位置づけで開発するのか、今ユーザー数やシェアを取りに行くのかは明確にしておいた方がいいですし、シェアを取りに行くならブロックチェーンの必然性をきちんと追求したうえでUX悪化する部分を最小にする使い方が必要だと思います。

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