『音楽利用の著作権ルールは改正でどう変わった?ネット配信側に注目した』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.9.9
■音楽利用の著作権ルールは改正でどう変わった?放送と配信の違い
2年前の令和3年と、今年である令和5年に「もっと音楽をネット配信しやすくしよう」と法改正されたという記事をご紹介します。
上記では放送番組をインターネット配信することを念頭に、放送とインターネット配信との比較をしていますが、「インターネットサービスで独自に音楽配信する場合の手続き手順がどうかわったのか、残る課題は何なのか」に注目してみます。
ThreadsはJASRACと包括権利料契約を事前に結び、音楽を流したりユーザーが音楽入りのコンテンツをアップすることを可能にしています。
Threadsは巨大企業であるmetaの運営なのでJASRACと交渉できたのかもしれませんが、令和5年の著作権法改正でもっと広く門戸が開けたのでしょうか?
令和5年改正版 音楽をネットで使う手続き手順
令和3年の著作権法改正は、放送とインターネットの同時配信での権利処理を円滑化することが目的の改正です。つまり放送事業者と放送コンテンツをネット配信する事業者にしか関係ありません。
令和5年改正では、ネット配信のみの場合の権利処理円滑化が図られています。
以下長いですが、該当部分の引用です。
連絡先不明か拒否された場合の裁定手続きが定められたにすぎない
ネット配信の場合は、令和5年改正より以前から、個別に権利者と交渉して許諾を得るか、権利者がJASRACなど窓口団体に管理を委託している場合は窓口団体との交渉で料金や料率を決めれば配信できるという手続き手順でした。
令和5年改正では、著作権者が不明で連絡が取れない場合の「時限的な利用」の方法を定めたにすぎません。
ネット配信は放送事業者と違って、音楽権利者をひとりひとりに当たって許諾を得る必要がある点は令和5年改正でも変わっていません。
そのため、まずは自力で権利者を探し、自力で個別交渉をすることが必要になります。ここが一番シンドかったのですが、令和5年改正でも変わっていません。
「テレビ局は放送の場合には各指定団体に対して放送二次使用料を支払っている限り権利侵害リスクを回避できる」が、ネット事業者にも広がればよかったのですが、令和5年改正でも放送事業者のみの特権状態が続きます。
問題はあるが「セーフハーバー条項」的な簡易さが欲しい
アメリカのデジタルミレニアム著作権法(DMCA)の「セーフハーバー条項」のように、権利者からの削除依頼に対応することを前提に、まずは載せてよいとすればシンプルです。
しかし先行している欧米でも「セーフハーバー条項」はミュージシャンなどから強い改正要望が出るくらい、緩すぎて生じる問題も顕在化しています。
個別交渉不要の料金表もほしい
もう1点、料金や料率が不明確という問題も解消されていません。
JASRACは一定の料率を定めていますが、個別交渉となった場合は「相手と合意する金額」は無制限です。
配信事業者ごとにユーザー数と分配金のズレが生じて「SpotifyよりYouTubeのほうが利用料金が圧倒的に少ない」=バリューギャップ問題も海外では顕在化しています。料率や1回配信ごとの金額に見直しが入るかもしれませんが、いくらかかるのかの基準が明確なら、事業として成立するかも判断しやすく、個別に料金交渉も不要になります。
今や音楽のブームはTikTokから生まれていますが、バイトダンスのような巨大企業だけでなく、小さなスタートアップベンチャー企業から音楽配信を伴うネットサービスが生まれやすくするための料金設定もぜひ望みたいところです。
音楽のビジネスモデルをweb3で変えられるか
web3×音楽は世界中で模索されています。
それぞれ工夫されていますが、ある程度共通しているのはファンとの関係の中で収益を生もうとしていること。
公衆配信などでファンではない人に聴かれた場合の配信金額を決めるような従来型の音楽ビジネスアプローチは、web3×音楽のプロジェクトでは念頭に置かれていないか、旧来の徴収方法を併用するかのどちらかです。
つまり「新しい音楽エコシステム」が必要になっているとみな認識しています。
著作権法改正は旧システムをいかに変えるか・温存するかのせめぎあいが繰り返されているようにも見えます。web3×音楽は全く別のアプローチを模索しています。
最終的には同じところに着地するかもしれませんが、ネットと放送の区別がもはやつかなくなっている現代では、ネットで音楽が流しやすく聴かれやすいルールやモデルは必須です。
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