一見ナンジャコリャ?な『Loot NFT』の天才っぷり!【発想の拡張】
おつかれさまです。モリプトタツヤです。
普段はWebサービスの開発や運営の支援、Web・アプリ・SNSのマーケティング活用などでプロデュース的に携わっています。
ここではWeb3やブロックチェーン、NFT、DeFi、DAO、DAppsなどCrypto関連について日々学んだことをアウトプットしていきます。
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■8行の文字だけのNFT『Loot NFT』の衝撃
Loot NFTというものをご存じでしょうか?
正式名称は『Loot(for Adventures)』。
今年8月28日にスタートして今日で半年経ったプロジェクトだそうですが、私は不勉強で昨夜知りました。
そしてその面白すぎる発想に大きな衝撃を受けました。
を読んでいただくとLootが何なのか、何がすごいのかがバッチリわかります。ぜひ読んでみてください。
が、ここでも軽くLootをご紹介しつつ「NFT」というものが持つ自由さや可能性をお伝えしたいと思います。
■『Loot(for Adventures)』の見た目がヤバい。
まずこれをご覧ください。
黒い画面に白文字でテキストが8行書かれています。
これだけです。
この8行のテキストがNFTとしてOpenSeaで販売されています。最安値で2.4ETH(100万円強)、高いものは5000ETH(約22億5000万円)を超える価格で売られているものもあります。値付けは自由ですからこの金額で売れているとは限りませんが以前は300万円くらいで実際に取引されていたようです。300万円でも「8行のテキスト」に払うには超高額です。
わけがわからないですよね。
NFTといえばNFTアート、ドット絵でも数千万円で売買される、というだけでも理解不能だったところに、8行のテキストが数百万円。と混乱に拍車がかかった人も多いかもしれません。
でもこれはNFTの革命的な発明だと非常に注目を集めています。
■Loot(for Adventures)の8行の意味
8行書かれている内容は、ドラクエみたいなファンタジー系RPGのキャラクターの装備一式です。武器、胸、足、腰、手、頭、首、指輪が書かれています。ファンタジーRPGなので(for Adventures)という副題がついているわけですね。
「Loot」というのはカバンという意味で、カバンの中に装備一式が入っているイメージです。
それぞれの装備は10種類の中からランダムでひとつが選ばれています。
装備8ポジション各10種類のランダム組み合わせのカバンが8000個作られ、OpenSeaで販売されました。
各10種類の候補にはレアなものが混じっています。
しかし「"Pandemonium Bender" Long Sword of Titans +1」みたいな名称でレアっぽさは感じるもの、その装備のステータスや特殊能力など詳細は書かれていません。見た目も想像にお任せです。(レア度自体は確認できます。)
販売された8000個の中にはレアなものが多く含まれるものもあります。そういうものは非常に高額の値が付いています。
Bag #2025というLootが桁違いの最高値で売られており、41,111ETH(170億円超え!)という超強気の値段です。
■Loot NFTの無限の使い道
単なるファンタジーRPGの装備リストならこんな莫大な金額にはならないはずです。
Lootの使い道は、公式には
とあり、自由だと謳われています。
そこでLoot NFTを使った周辺サービスがどんどん作られていきました。
それぞれの装備に見た目デザインを持たせる「Loot Character」
もっとリッチな見た目がいいなと思ったら別のデザインを作るのも自由です。こんなふうに。
これはもっと作りこんだ見た目を用意して実際にLootキャラクターで遊べる「Loot:Explorers」。メタバースを作ってLootキャラクターで遊べる計画のようです。
さらに、オンラインではなく実際にスペインのバルセロナにある城に集まってLootの装備を身に着けて遊ぼうというプロジェクト「LootLARP」
単にLootの装備リストを物理的な装備にきちんと紐づけるためにSiLo(Silicon-Locked smart contract)というチップを使うなど、よりリッチな作り込みがなされています。詳しくはイーサリアムnaviのでりおてんちょーさんの記事にまとめられています。
このように周辺サービスが次々に企画されてLoot経済圏が拡大しています。
■Loot NFTの革命性
単なる8行のテキストがファンたちの想像力によって周辺サービスのスターターキットとして機能し、よいLoot NFTを持っていると周辺サービスでも有利になるように周辺サービスが設計されるというのがNFTの活用方法としての革命性です。
これまでのNFT(特にNFTアート)は、それ自体が完成されたものとして売買されていました。
BAYC(Bored Ape Yacht Clob)の有名なサルの絵も、購入者コミュニティへの参加権という側面はあるもののNFTアートとしては完成された1枚の絵でした。
遊戯王カードのスターターデッキようにゲームを始めるためのアイテムというものはありますが、あくまでも遊戯王にしか使えません。
Loot NFTの発明は、
想像力を掻き立てるために情報を意図的に絞ったこと
ライセンス制など中央集権的なことをせず、Web3らしくオープンに周辺サービスに自由度を広げたこと(遊戯王シバリのようなことがない)
Lootの中身や書式を規格化しつつNFT化で唯一性を担保することでLoot(for Adventures)のNFTを周辺サービスが技術的に「鍵」として使える状態にしたこと(本物のLoot NFTを持っていれば周辺サービスでその中身の情報がきちんと使える)
ということだと思います。
特定のNFTを持っていればDiscordコミュニティに参加できるなど「鍵」の発想は増えてきましたが、ここまで周辺サービスに拡張させる意思を持ったシンプルなNFTは衝撃的でした。
ここまで高額かつ8000個だと周辺サービス自体の広がりが心配ですが、Loot NFTをきっかけとして類似のシンプルな鍵NFTが多数登場するはずです。
「The n project」という1~14までの数字だけのNFTからグラフィックを自動生成させる「Art for N」というプロジェクトも登場しています。
■周りを巻き込む仕組みづくりがNFTのカギに
Lootやnのように完全に周辺サービスの鍵の位置づけのNFTというのは、見た目がテキストや数字だけというインパクトもあり驚きが大きかったのですが、より一般的なNFTアートも今後はより周りを巻き込む仕組みを持ったものが流行ると思います。
初期のNFTアートブームでは、CryptoPunksがイーサリアム最古のNFTプロジェクトとして注目を浴びたりTwitter創業者ジャック・ドーシーの最初のツイートが高値を付けたりと「最古・最初」というナラティブが価値だったように思います。
他にもWebの創始者であるティム・バーナーズ=リーにより生み出されたソースコードが約6億円の値を付けたり、仮想通貨Dogeコインのモデルとなっている柴犬「Kabosuちゃん」の写真データが約4億円の値を付けたのも「始祖」的なナラティブの例です。
権威性の高い「最古・最初・元祖・元ネタ」はそれほど多くありません。NFTアートにこれから挑戦する個人ではこのナラティブはなかなか持ちえないものです。
そこでこれからはファンコミュニティを巻き込む仕組みづくり+NFTというものが増えていくのではないかと思います。
イケハヤさんが展開するCrypto Ninjaも、50体のNFTアートそのものだけでなく、クリエイターの二次創作を積極的に進めています。
こちらではCrypto Ninjaのキャラが漫画になっています。
NFTアートの「絵」だけしかない世界観より、ゲームや漫画になったりメタバース内でコスプレ衣装になったりTwitterアイコンになったりと周囲を巻き込みながら様々な展開がされていけばファンコミュニティ化し、NFTアート自体も注目を集めて売り切れ値上がりします。
日本企業のNFT活用方法も、2022年はNFTを鍵として中心に置いて戦略的に周囲を巻き込むような使い方がぐっと増えると予想しています。
グッズ的にNFTを作って売るだけでなく、NFTをファンが買ってオーナーになり、ファンコミュニティの中でNFTを持っていることで承認欲求が満たされることに加え、NFTの価値向上という金銭的なインセンティブによって周囲への布教活動が加速する、という、Fun-to-Earnの入口にNFTが機能していくはずです。(本気のFun-to-EarnはトークンとDeFiを絡める必要がありますが日本では法律的に難しいようです。)
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