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『SocialFiなWeb3サービス?「アウターバース」』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.7.27

■アウトドア×Web3「アウターバース」

人々をゲレンデや山へと連れ出すために、アウトサイド・マガジン(Outside Magazine)の親会社のCEOロビン・サーストン(Robin Thurston)氏は奇抜なアイディアを採用した。

その名も「アウターバース(Outerverse)」。ハイカー、バイカー、ランナー、スキーヤー、世界中のアウトドア好きたちが、実生活での活動をブロックチェーンでトラッキングすることで、報酬を獲得できるプラットフォームだ。

アウトドアな趣味を実行するとEarnできるという「アウターバース」が登場です。

アウトドア趣味も幅広く、例示されているハイカー、バイカー、ランナー、スキーヤーのほかにも、キャンプ、釣り、サーフィン、ヨット、カヌーなど主に屋外で行うアクティビティが広く含まれそうな内容です。

STEPN以降のX to Earnに似ているところもあれば違うところもありとても興味深く、また参考になるので今回ご紹介します。


■「アウターバース」のサービス概要

数カ月すると、アウトバースはフィットネストラッキング・アプリからのデータを収集し始める。一定のパフォーマンス基準を超えたユーザーは、様々な体験や、写真家および映像作家といったクリエーターからのNFTを受け取れる。さらにクリエーターたちは、自分のNFT作品をアウトバースのマーケットプレースを通じて販売することもできるようになるのだ。

この記事内ではあまり詳しい仕組みは語られていませんが、

・初期に参加権となるNFTを5 SOL(約2万円)で購入する
・アプリを使う
・行動ログを収集する
・写真や映像をアップする(おそらくここが最も重要なアクション)
・投稿する写真や映像はNFTとして販売することができる
・行動評価ポイントによって報酬を得る
・報酬はトークンではなくNFTや映画のチケットなど
・趣味性の高いコミュニティに現物メーカーのスポンサードを組み合わせるマーケティングモデル
・有料コンテンツが読み放題(雑誌社なのでたぶんここから企画した)

という感じのようです。

ディジュリアン氏は、アウトバースのマーケットプレース・クリエータービジネスモデルは、いまだに「少しはっきりとしない」と語った。

と、やっぱり不明なところがまだ多いみたいです。


■アウトドア趣味の入り口、継続するきっかけ

暗号資産に関心を持ったアウトドアメディアも、アウトバースの取り組みに懐疑的だ。(中略)アウトドアを「ゲーム化」するようなあらゆる取り組みには否定的だ。

「トークンをもらうために外に出て行くとなったら、アウトドアの肝心の点とずれてしまうことになると思う」

もともとのアウトドアファンから見たら動機が不純に感じるのも理解はできます。

しかしSTEPNがきっかけで毎日欠かさずウォーキングするようになり、そこからより本格的なランニングに目覚めた人、トレーニングウェアやランニングシューズに興味を持ちだした人、フィットネスやダイエットのコミュニティに参加し始めた人など、「肝心の点」を掴む入り口になった人は多くいます。

さらに、始めるキッカケだけでなく続けるための強力な動機にもなります。STEPNをやっていなければ大雨でも毎日歩くなんてことはないでしょう。

自称キャンプが趣味な私も、実際にキャンプにでかけるのは年に数回です。それが「アウターバース」でもう少し頻度高く行くようになれば、買ったけれど一度も使っていないキャンプギアが日の目を見るかもしれません(笑)


■従来の「X to Earn」よりコミュニティモデルに近いSocialFiか

単一行動を淡々と毎日こなすことで望外のトークンをEarnできる、という従来のSTEPN型to Earnモデルとはどうやら異なるようです。

まずあまりEarnを中心に謳っていないように感じます。

・同じアウトドア趣味の人をEarnきっかけで集めて、
・参加費用として2万円も出させることで覚悟を決めさせて、
・「アウトドア専門版インスタグラム」として写真や映像を投稿するSNSでオンラインのつながりを作り、
・アウトドアアクションの中で撮られる写真や映像はきっと素敵なので作品として売買できるようにマーケットプレイスを用意して、
・大勢の趣味ファンに向けてメーカーがターゲティングセールスアプローチをできるようにする。

ざっくりこんな感じのサービス体裁になると思います。一番近いのはインスタグラム、写真コミュニティじゃないかと思います。

初期に2万円払わせますが、きっと原資回収や投資収益とは少し距離があるサービスなのでしょう。2万円は有料記事読み放題に当てたことにすれば、雑誌社からすると1冊1000円の雑誌が20か月分先食いで買ってもらえたのと同じですし、読者にとっても雑誌を年間購読したつもりで加入できます。

話を戻すと、今のインスタグラムは、インフルエンサーになりたい人や自社商品を売り込みたい人以外はマネタイズできない、代わりに無料で使えるサービスです。

「アウターバース」は入会費2万円かかりますが、参加者全員がスポンサーのタイアップ企画に参加できる可能性があり、「奇跡の1枚」を同じ趣味の理解者に買ってもらえるチャンスがある場になります。

2万円が回収できなくても、また逆にスポンサーの商品を買うという追加課金が発生したとしても納得できる、「アウトドア趣味を仲間と楽しむ」ことが中心のコミュニティサービス、SocialFiのモデルになるんじゃないかと思います。


■運営も堅実な従来型ビジネスモデルか

運営も、初期に高額なNFTを大量に販売して短期収益を上げたり、本来無価値なトークンを販売したりするモデルではなく、もう少し地に足のついたやり方になりそうです。

アウトドア趣味人の間で売買されるNFTの手数料、アウトドアメーカーの広告費用、タイアップマーケティング費用、ターゲティング絞り込み料金、アウトドア商品の販売手数料、旅行商品の紹介手数料など、これまでのWeb2サービスに近いサービスモデルになる気がします。

確かにNFTの方が写真や映像などデジタル作品の売買には向いていますし、ソラナ建ての方がグローバル決済には向いています。ちょっとずつWeb3なアウトドアコミュニティサービス。


■マイルドなWeb3サービス

Web3サービスというとDeFiやトークノミクスが中心で「金くさい」とよく言われますし、Why Blockchain?と哲学的にブロックチェーンでなければならない部分をピュアに突き詰めたり、思想的に非中央集権を求められる風潮があります。

でも必要なところ、適しているところに部分的にブロックチェーンを使っていく、従来のままでよいところはそのまま使う。何が何でもWeb3にしない。というより緩やかでマイルドなWeb3サービスがあってもいいんじゃないかと思います。

ピュアなWeb3は投資マネーを集めやすいのが良い点ですが、ユーザーがどうしても限られてしまいます。そしてX to Earnも「X」ではなく「Earn」に主軸が置かれがちで、Earnできなくなったら離反してしまいます。

最近ずっとサスティナブルなto Earnについてばかり考えているのですが、雑誌社の矜持として「X」=アウトドアの趣味性やファンを大切にする姿勢、結果的にSocialFiのモデルになりそうな予感、など「アウターバース」の在り方と今後にとても惹かれました。
(妄想も多く含まれるので実際にインスタっぽくならないかもしれませんけどね。私ならそう作る、って感じです。)

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