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【内容一部公開】ロケット関連技術者、研究者、学生必読!――近刊『ロケットシステム』

2024年1月下旬発行予定の新刊書籍、『ロケットシステム』のご紹介です。
同書の一部を、発行に先駆けて公開します。

※本書は、2019年に風虎通信から発行したものを、森北出版から継続して発行することになったものです。なお、再発行にあたり一部の図の変更を行っています。



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まえがき

ロケットの機能向上は、要素技術の進歩に合わせて、今後も進められて行くであろう。しかし、ロケットの開発・運用に係わる基幹技術は、すでに確立されたと言ってよい。したがって、いま、ロケットに関する技術を先端技術と呼ぶことは適当ではない。

しかしながら、ロケットの開発・運用には、非常に広い分野の技術、それも高度な技術が利用されていること、また、ロケットの飛行が非常にダイナミックであること、さらに、ロケットは魅惑にみちた宇宙への輸送手段であることから、今後も、ロケットは多くの若者達を魅了していくことと思われる。

ところが、残念なことに、ロケットについて、若者達の知識欲や好奇心を満足させるような本は、あまり見あたらない。

たとえば、

  • ロケットはどのように飛行して、人工衛星を目指す軌道に投入するのか?

  • ロケットの構造や推進システムの仕組みはどのようになっているのか?

  • ロケットの姿勢の制御や飛行経路の修正はどのように行われているのか?

といった疑問に対して、難しい理論は抜きにして、基本的に大切なことや本質に係わることをわかりやすく紹介した書物はほとんどない

ロケットに関する本と言えば、全体について浅く紹介した解説書か技術分野別の専門書があるにすぎない。

このことは、ロケットのことを基本から学びたいと思っている若者達や新たにロケットの仕事に従事しようとしている人々にとって、大変不幸なことである。もし、よい書物に恵まれるならば、若者のロケットへの関心は一層高まるし、また、現実にロケットの開発に携わる人たちの大きな助けになるに違いない。

(中略)

本書の記述にあたっては、専門的な基礎知識がなくても理解してもらえるように、極力やさしく丁寧に説明することを心がけた。一部の記述については、その理解に専門知識を要するが、本書の大半は、高等学校の数学と物理の初歩を身につけていれば、理解出来るものと考える。

なお、「やさしく説明する」と述べたが、このことはいい加減に扱ったということではない。ロケットに関する本質的なこと、基本的に大切なことは全て網羅した積もりである。

このようなわけで、本書は、これから航空宇宙工学科でロケットを基礎から学ぼうとする人々にも、趣味としてロケットのことを深く知りたいと願っている人々にも、また、企業等でロケットの開発に従事している人々にも、大いに役立つものと確信している。

(後略)


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元 三菱重工業 田辺 英二(著)

元ロケットエンジニアによる、ロケットシステムの全体をカバーした本格的な入門書。
 
・飛行経路と軌道への投入
・ロケットの構造と推進システムの仕組み
・姿勢の制御と飛行経路の修正
 
…など、ロケットに関する本質的な内容、重要な内容を網羅しつつ、丁寧に説明。

【目次】
まえがき

1章 全般

 1.1 ロケットとは
 1.2 多段式ロケット
 1.3 ロケットの実例
 1.4 人工衛星の種類と軌道

2章 飛行モードと飛行経路

 2.1 ロケットの打ち上げ方式(飛行モード)
 2.2 ロケットの飛行経路の構成
 2.3 飛行経路の求め方(飛行経路解析)の概要
 2.4 飛行経路解析の成果の概要
 2.5 ロケットの飛行経路の求め方

3章 構造・機構
 3.1 構造の構成要素と機能
 3.2 荷重条件
 3.3 構造様式
 3.4 主要構造要素の具体例
 3.5 構造材料
 3.6 火工品

4章 推進システム(液体ロケット)
 4.1 推進の原理(推力発生のメカニズム)
 4.2 推進システムの構成
 4.3 推進薬の供給方式
 4.4 推進薬
 4.5 タンク・システム
 4.6 エンジン

5章 姿勢制御システム
 5.1 姿勢制御システムの目的
 5.2 制御対象
 5.3 制御手段
 5.4 ジンバル制御の基本的考え方(制御則)
 5.5 ガスジェット制御の基本的考え方(制御則)
 5.6 姿勢制御システムの構成
 5.7 ジャイロ
 5.8 加速度計
 5.9 慣性装置
 5.10 計算機
 5.11 データ伝送方式
 5.12 制御電子機器
 5.13 ジンバルシステム(油圧式)
 5.14 ガスジェットシステム

6章 誘導システム
 6.1 誘導システムの目的
 6.2 慣性誘導システム
 6.3 電波誘導システム
 6.4 慣性誘導と電波誘導の比較
 6.5 誘導方程式:全般
 6.6 誘導方程式の具体例
 6.7 誘導と軌道投入精度

7章 電子・電気システム
 7.1 計測システム
 7.2 追尾システム
 7.3 指令破壊システム
 7.4 地上局(電波局)
 7.5 電力システム

8章 結び
 8.1 ロケットのシステム構成
 8.2 ロケットの開発の流れ
 8.3 打ち上げシステム

付録A ロケットのサイジング
 A1 サイジングとは
 A2 ミッション要求の明確化
 A3 理想速度
 A4 既存ロケットのデータの活用
 A5 所要理想速度
 A6 初期モデルの重量特性設定法
 A7 初期モデルの形状寸度およびエンジン推力の設定法

付録B 飛行経路の計算式
 B1 序論および仮定
 B2 座標系
 B3 運動方程式
 B4 外力とモーメント
 B5 関連データ
 B6 飛行経路の計算式
 B7 補遺:その他の運動解析の計算式

付録C 空気力
 C1 空気力の表し方
 C2 抵抗係数 
 C3 揚力係数 
 C4 機体軸に垂直な流れによる空気力

付録D 荷重、構造、強度についての考察

 D1 応力と挫屈
 D2 タンク構造の板厚について
 D3 モノコック構造の挫屈強度
 D4 ストリンガーの役割と強度
 D5 剪断力について

付録E 推力についての考察
 E1 推力係数を用いた推力の式
 E2 ノズル膨張比と推力との関係(その1)
     (圧力項を考慮に入れない場合)
 E3 ノズル膨張比と推力との関係(その2)
     (圧力項を考慮に入れた場合)
 E4 燃焼室圧力と推力との関係
 E5 混合比と推力との関係
 E6 燃焼ガスの噴出速度について
 E7 比推力について

付録F エンジンの概略形状の設計
 F1 燃焼室およびノズルの概略形状決定のパラメタ
 F2 検討のモデル
 F3 燃焼室の形状パラメタの設定
 F4 ノズルの形状パラメタの設定
 F5 検討のモデルの燃焼室およびノズルの概略形状

付録G 推進システム(固体ロケット)
 G1 固体ロケットのシステム構成
 G2 固体ロケットの特徴
 G3 ブースタ用固体ロケットの実例
 G4 上段用固体ロケットの実例

あとがき


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