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屋久島の深い静かな森で考えたこと

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屋久島の深い静かな森の中で、日常のできごとをじっくり見つめて独自の視点で考えたことを呟いていきます。
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屋久島の深い静かなBar で語られたこと  10人目の旅人

出港の前夜 少年が、森の奥にあるBarを訪れるのはいつぶりだろうか? 数年前は、何度も足を運び、 闊達に意見を交わした記憶がある。 最後に訪れたときは、バーテンダーの優しい笑顔に見送られたように思う。 それも、遠い昔のように感じる。 しばらく森から離れ、 小さな村に住んでいた少年は、 三人の仲間を集め、 粛々と出港の計画を立てていた。 どうやら、海をわたって大都会に出向き、 新しく事業立ち上げるらしい。 航海の前日、少年は、ふと、 森の奥のBarを思い出した。 「ちょっと

不祥事に思う

新聞やテレビを見ていると不正や不祥事の記事を目にして心が痛む。 大体、この不正体質は、20世紀のもっと言えば昭和からの遺物なのであろう。 思えば、売上や利益の貸し借りは、普通に行われた時代があった。 期末になると、利益を出している会社から、利益や売上を借りて、翌期に返すとか、多少の擬装は目を瞑るということは、日本中どこにもあったように思える。 その文化が企業の中で、21世紀になった今でも深く生き延びて、上司は知っていてものらりくらりと次の人に送り、ある日表に出てきて大騒ぎ

第48話「がんばれ、オレ」         第49話「ごきげんさん」

がんばれ俺一年を通して平穏無事ということはない。 嬉しい時、悲しい時、苦しくて辛い時も当然ある。 そして、街を歩いていても下を向きがちになる。 街には、冷たい風が吹いている。 ビルの合間の目の前は、暗く沈んだ灰色の世界が広がる。 心が沈んで、心が折れ、涙が出そうになる。 そんな時に、顔を上げて空を見上げると雲一つない真っ青な空が広がっている。 胸を張り、背筋を伸ばし顔をあげ、冷たい風に立ち向かい「がんばれ、俺」と心を張ってみる。 がんばれ、俺、負けるな、俺、挑戦しろ、戦い続

第43話「クラウドファンディング」

とても良い時代になったものだと思う。 お金集めが、簡単にできる時代である。 昨夜、LINEを使った投資勧誘の詐欺事件が 続発しているとのニュースをやっていた。 知らぬ間にLINEのグループに入れられていて、 周りの成功体験がアップされているのをみて、 「投資をしてしまった」と 被害者らしき人がインタビューで話をしていた。 どこかの大学教授が、 「これはネットを使った典型的な詐欺ですね」 と言っていた。 騙す方が悪いのか? 騙される方が悪いのか? 先ず、甘い話に罠があ

第42話「街おこし」

地域創生や街おこしの話が後を絶たない。 多くの人が、 「社会課題解決のために」 「社会のために」 「地域のために」 と声をあげて、何かを模索している。 僕は、天邪鬼だから、安易な言葉に、 「先ず自分が何より本当にやりたいこと、 やりたい事業を考えてください。 それは、必ず、社会や地域のためになりますよ。」 と話をする。 何人かの人は、 「先ず自分がやりたいことを見つけることが大切だ」 と言うことに、改めて気付かされましたとか お礼のメールを頂いたりするのであるが、 当た

第41話「健康寿命」

2025年問題、2040年問題を考えていて、 改めて健康寿命が目についた。 何となく健康で生きていることができるのは、 周りを見ると元気な人も多く、 80歳ぐらいかなと思っていたが、 厚生労働省のデータ(2016年)からは、 男性は72.14歳、女性は74.79歳とのことにて、 あと12年かと思うと、 改めてどう生きるかを考えるのである。 72歳というのは、生まれた干支の歳であり、 還暦から一回り。 還暦まで一生懸命働いて、 あと一回りの12年は、 「自分の好きに生きなさ

第40話「出羽三山の旅」

いつか行ってみたい場所の一つが 出羽三山であった。 月山神社本宮は、 7月1日から8月末までの 夏の時期にしか開いていないので、 屋久島の宿を休んで行くことも憚られ 行けなかったのであるが、 とうとう出羽三山の旅に出た。 月山の神の遣いは「うさぎ」であり、 今年は卯年の御縁歳のため 12年ぶりのご利益があると言う。 果たして、12年後に三山を 踏破する体力が残っているか分からず、 お参りする覚悟を決めたのである。 羽田からおいしい庄内空港まで1時間弱、 バスに乗って鶴

第39話「言霊と妖し」

言葉というものは、怖いものだ。 人を励まして活かすこともできるし、呪うこともできる。 呪詛というのは、藁人形に釘ではなくて、 言葉の方が力があるのではないか? 「あなたは、晩年、とても大切な人を失い  悲しみの日々を送ることになる」 とそれが何気無い一語であっても 呪いの言葉となり普段忘れていても、 何かの拍子にその言葉が心に浮かび、 歳をとるに従い不安に駆られるのかもしれない。 逆に、 「今から暫く大変な時期を迎えるかもしれないが、  必ず成功して、晩年は素晴らし

第38話「最後の言葉 『立花隆 最後の旅』」

最後にありがとうと言いたい。 要は、命は1人のものでなく、 一つの孤立したものでなく、 連環して存在しているということなのだ。 50年後の未来は今あるんです。 今に萌芽しているのです。 その通り行くかわからないけど、 進んでいくしかないんです。 夢を見る力、 単にそうなって欲しいではなくて、 それを実現しようとする努力する力。 日本の知の巨人である立場隆が 亡くなるまでの17年を追った特集番組を観た。 彼は、科学的には死後の世界は存在せず、 単なるゴミと一緒であると

第37話「ChatGPTの矛盾」

ChatGPTとか生成AIが入ってくると、 多くの仕事はChatGPTにやってもらい、 本当に考える仕事を人がやるというが、 これは矛盾が含まれる。 将来、人がやる仕事とは、 「考える仕事」になるというが、 考えるということは自分の視点で仮説を作り 論理的に展開することである。 一方で、調べるということもまた、 仮説を作ることである。 何を調べたら良いかの仮説を論理的に築き、 実証していくことである。 であるならば、 調べるという仮説作りを放棄してしまった人が 独自の仮

第36話「民度と幸せ」

屋久島の新港の公園にある、 公衆トイレの予備のトイレットペーパーに 鎖と鍵がついた。 明るいトイレなのに、 少し暗くて寂しい気がした。 僕は横浜出身であるが、 一時、神戸西宮の苦楽園というところに 住んでいたことがあった。 その時、夙川という川沿いの ところどころにあるトイレの中に トイレットペーパーが積んであり、 それが盗まれたりしないことに、 東京とは違った その土地の人の民度の高さを 感じたものであった。 屋久島に住むようになり、 まずゴミが落ちてないこと、 そ

第35話「弘法大師の道」

今、大和八木から洞川温泉に向かっています。 これから、弘法大師の道を年に一回走ることのできる 弘法トレイルに参加するためです。 1200年以上前に、 弘法大師が、奈良の吉野山にある 金峰山寺で修行をされており、 そこから南に一日、西に二日、 山の中を彷徨って見つけた 比較的に平らなところを 「たかの」と名付け、金剛峯寺を建立し、 今の信仰の街の高野山に繋がって行きます。 弘法大師の道は、 千日回峰行や山伏修行の世界でもあり、 女人禁制の聖地でもあるのですが、 年に一度、こ

第34話「何もみてない、何も考えてない」

5月を迎えると、躑躅が終わり、 皐月の花が庭中を彩る。 様々なところに皐月の木があり、 陽の当たり方によって、 そして種類によって、咲く時期や色も異なり 暫く楽しむことができる嬉しい季節。 ただ、緑色の5ミリから1センチ程度の 小さな芋虫🐛が付き、 皐月を丸坊主にしてしまう。 調べてみると「瑠璃鐫花娘子」 ルリチュウレンジという 黒い蜂の一種の幼虫らしい。 今までは、放って置いたのだが、 今年は摘んで取り除くことにした。 食べられている葉の近辺を よくよく見ていると

第33話「不思議なネットショップ」

僕らは、Amazonで何を買っているのか? そして、何故、Amazonや楽天で買うのか? Amazon以外の無名なショップの方が 安いこともあるのに。 僕らは、Amazonで商品を買っているのではなく、 コンテンツと信用を買っているのであるが、 それを実感として感じさせられた出来事があった。 星野道夫の本、特に「旅をする木」は、 宮城谷昌光の「楽毅」と共に 仕事で辛かったり、安らぎが欲しかった時に 何度も読み返した本であるが、 星野道夫の絶版の写真集である 「星野道夫の