見出し画像

お猪口と巡り巡ったもの

 実家でお猪口を貰った。父方の祖父母の家で「処分してしまうなら」と貰ってきたという、小さな陶器のお猪口だ。
 お猪口の他にも小鉢や小皿などもあったらしい。色合いや模様が素敵だった。素朴だけれど味のあるお椀もあった。

小鉢はクリップ入れにされてた。左の小皿は親戚の集まりで出されてた記憶がある。

 商売をしていた祖父の貰い物が、巡り巡って私の下にやってきた。
 思えば私が好む古本やリサイクル着物も、誰から巡り巡ったものだと思うと感慨深い。やっぱりそういうものに惹かれるのだろう。新しいものも好きだけどね。

 お猪口といえば、晩酌をする男の話を書いた。
 実はあれは元々、別の話として考えていた。酒癖の悪さから飲み屋のお猪口を持って帰ってしまい、籠いっぱいに色とりどりのお猪口が集まる。しかしどこの店だったかとんと覚えていない。そんな男が、例によって持って帰ったお猪口が曰く付きで——もっと耽美で、怪談のような構想を練っていた。
 読み切りだった話はむくむくと広がり、関連する話をあと二本残している。
 そして二次創作で本を作ろうとしているせいか、一次創作でも同じことをやりたい気持ちが湧いている。
 この物語を一冊にまとめたい。そうして自分が書いたものが、誰かの下に巡り巡ったらいいな、と。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?