島日記 長い夜
目が覚めて時計をみると、まだ明日になっていないことがある。
たとえば23時時半だとか。
若い頃は「もっと眠れる、うれしい」だったが、今はうんざりしてしまう。
あとどれだけ眠らねばならないのか。
目覚まし時計が必要だった頃が懐かしい。
他のことは覚えてないが、鮮明に記憶している本の一場面がある。
古い記憶だが、挿し絵があったような気もする。
長いこと病棟のベッドにいるひとの独白である。
守衛が朝と夜に廊下の雨戸(?)を開閉にやってくる。
うつらうつらしていると、遠くにかすかな足音が。
足音が近づく。
ああ、やっと夜が明ける。
雨戸が開き、光がさせば長い長い夜から抜け出せると期待を膨らませた……
守衛は雨戸を閉めに来たのだった。
遠ざかる足音を聞きながら絶望するシーン。
数時間後には必ず陽はのぼるのに、その数時間に耐えられない気持ちが伝わってくる。
夜中に目覚めて眠れない時などに思い出す。
少しは慰められる。
眠りを誘う録音された自然の音を聴かなくても、ここでは聞こえてくる風や波の音がある。
だが、どうやっても眠れない時は眠れない。
支障はないから、睡眠不足とはいえなんとか足りているのだろう。
そのうち赤子のように日がな眠る時がやって来る。
それまでは、眠れぬ長い夜は起きて月や星を眺めよう。
お茶も淹れよう。
これからは秋の夜長だ。
それに雨戸を閉めるのは台風の時だけだから。
今日もお付き合いくださってありがとうございます。
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